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[MOM3954]昌平MF佐々木小太朗(3年)_「流れを変えてこい」の檄に応える切り札の2発

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途中出場で2得点を決めた佐々木

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.26 インターハイ3回戦 日章学園高 2-6 昌平高 鳴門・大塚スポーツパーク球技場]

 昌平高(埼玉)らしいドリブルとパスを織り交ぜたテクニカルなサッカーで試合の主導権を握って先制したものの、前半29分と後半15分に与えた失点により、後半のクーリングブレイク時点でのスコアは1-2。苦しい試合展開を強いられてしまう。

 しかし流れを変えたのは、クーリングブレイク明けの23分からピッチへと送り出されたMF佐々木小太朗(3年)だった。

 試合再開直後はMF篠田翼(3年)のゴールで同点に追い付き、チームに追い風は吹いていた。「監督から流れを変えてこい、点を獲ってこいと言われ、強い気持ちを持って入りました」と振り返る佐々木が魅せたのは、同点ゴールが生まれた直後の24分。GK上林真斗(3年)が前線にロングフィードを展開。FW小田晄平(2年)が競ったこぼれ球を胸でコントロールすると、反転から思い切りよく右足を振りぬき、勝ち越しゴールを叩き込んだ。

 また2点目が生まれたのは、その2分後の26分だった。篠田がドリブルで中央を仕掛けたのに合わせて、小田が動き出すと、空いたスペースに侵入。佐々木はパスが入ったと同時に豪快に蹴り込んで、ゴールネットを揺らした。苦しい状況を打開する2ゴールを奪った彼の存在は、チームとして間違いなく大きかった。

「凄く推進力があるし、上手さもある。みんなから信用される選手。彼が途中から控えているのはチームとして大きい」。藤島監督の言葉からも分かる通り、信頼はとても厚い。後半の苦しい時間帯に見せるゴールに向かって行く姿勢、素早い切り替えからのボール奪取を期待され、ベンチに置かれている選手だ。

「元々スタートでも行ける選手」と藤島監督が続ける通り、プリンスリーグの開幕戦ではスタメンで起用されたが、MF土谷飛雅(3年)が調子を上げてきたため、ポジションを譲った。そこからは本職は慣れないボランチも経験したが、これまでの縦突破に加え、カットインの意識を高めたことでインターハイ前から調子を上げて、今大会に突入した。

 他チームでは、不動の座を掴んでもおかしくない実力者だが、FC東京内定のMF荒井悠汰(3年)、世代別代表の候補にも選ばれたことのあるMF篠田翼(3年)ら中盤にタレントが揃うのが昌平の強さであり、選手としての難しさでもある。彼らとの競争は下部組織であるFC LAVIDA時代から続いており、中3の夏に挑んだクラブユース選手権ではスタメンでの出場機会を掴んだが、冬の高円宮杯では出場機会を減らしていた。

 高校に入ってからも、チームメイトが華々しい活躍を見せる一方で、佐々木は線が細く思い通りの活躍はできなかった。本人も「1年、2年は全くダメだった」と振り返る。だが、課題を克服するため体幹トレーニングに励んだ結果、肉体派に身体をぶつけられてもプレーがブレなくなった。同時に強いシュートを打てるようになったのも成長だ。

「中学の時、一緒にやっていた人が高校サッカーの大きな舞台でやっていて、悔しいのもあったし、頑張って欲しい気持ちもあった」。佐々木はこれまでについてそう振り返るが、この日は大きな舞台でチームメイトと同様、それ以上の活躍を見せた。彼がゴールを決めた瞬間に広がる歓喜の輪は、みんなが彼の活躍を待ちわびていたようにも見えた。「今日の活躍は率直に嬉しいです。祝福されたのは最高でした。今日みたいに点でチームの流れを変えられるように頑張りたいです」。より勝利への難易度が上がる準々決勝以降も、最強の交替の切り札である佐々木の活躍は欠かせない。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2022

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