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[MOM3965]前橋育英MF山田皓生(3年)_指揮官も認める「今日は皓生の日」。圧巻の2ゴールがチームを逆転勝利に導く!

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圧巻の2ゴールで勝利を手繰り寄せた前橋育英高MF山田皓生(17番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.28 インターハイ準々決勝 前橋育英高 2-1 矢板中央高 鳴門・大塚スポーツパーク球技場]

「今日は皓生の日だったんですね」。

 チームを率いる名将、山田耕介監督が笑顔で口にしたフレーズに異論はない。苦しみながらも全国4強へと勝ち上がった前橋育英高(群馬)にとって、準々決勝のこの日は2ゴールを挙げて主役をかっさらったMF山田皓生(3年=名古屋グランパスU-15出身)の日だったのだ。

 いきなり前半4分でビハインドを負う。矢板中央高(栃木)とのクォーターファイナル。相手の必殺技・ロングスローで先制点を許し、以降はゲームリズムこそ掴んでいたものの、なかなかゴールは奪えない。ただ、「序盤に先制されて少し焦ったところはあったんですけど、自分たちのやれることをやれば逆転できるとみんなで言っていました」と山田が話したように、チームはいたって冷静だった。

 後半2分。前橋育英は左サイドの高い位置へ張り出したDF山内恭輔(3年)が起点となり、MF青柳龍次郎(3年)は中央へ。受けた山田は相手のプレスを受け、いったんはロストしかけたが、「足を伸ばして何とかもう1回奪い返すことができたので」前を向き直すと、思い切り良くシュートを選択。少しDFをかすめたボールは、右スミのゴールネットへ飛び込んでいく。

「皓生は球際のところが弱かったり、気持ちの面でちょっとふんわりしているところがあるので(笑)、自分が強く言ったりすることが普段から多いんですけど、その分点を獲ってくれた時にメチャクチャ嬉しかったですね」と徳永が話せば、本人も「自分は普段から『切り替えが遅い』とか、そういうことを言われがちなので(笑)、そういうところが課題だなと思っているんですけど、あそこで自分で奪い返せたというのは、これからの成長にも繋がりますし、それで得点に繋がったのが凄く良かったと思います」と笑顔。苦手の“切り替え”から、同点弾を叩き出す。

 後半16分。前橋育英は左サイドでFKのチャンスを得る。青柳が蹴ったキックはDFにクリアされたものの、FW小池直矢(3年)が巧みなコントロールで残し、DF井上駿也真(3年)、DF齋藤駿(3年)と繋いだボールが、右サイドに開いていた山田の足元に届く。

「自分が一番外にいて、中に味方がいっぱいいたので、クロスとシュートの間ぐらいの感じで、誰かが触ってくれればというふうに蹴りました」という軌道は、再びDFに当たってコースを変えながら、ゴールネットへ吸い込まれていく。

「どっちも当たらなかったら入らなかったかもしれないので、そこはちょっとラッキーだったと思います」とは本人だが、「シュートを打たないと入らないので、皓生は今日はよくチャレンジしてくれたと思います」と指揮官も評価した積極性が生み出した2ゴール。山田が逆転勝利の主役を鮮やかにさらっていった。

 このゲームは、スタメン復帰戦だった。「1試合目の長崎総附戦で自分はあまり良いプレーができなくて、その次の聖和戦でベンチスタートだったので、凄く悔しい想いはあったんですけど、普段からベンチのメンバーが凄くサポートしてくれていて、自分も『しっかりやろう』と思ってサポートに回りました」。自分にできることを、全力でやる。チームのために。仲間のために。

 そして、準々決勝のスタメンリストには、再び山田の名前が書き込まれる。「ヒョロッとしているんですけど、ヘディングも強いんです。矢板中央さんはヘディングの強い選手が多いので、ホリ(堀川直人)よりも皓生で行こうと。そこはヘディングに期待しました」とその起用理由を明かした指揮官。結果的には“足”で2ゴールを決めたわけだが、それも含めて采配ズバリと言っていいだろう。

 大事な試合で“2点”決める男でもある。ホームで青森山田高と対峙したプレミアリーグの試合では、2点を記録して三冠王者撃破の立役者に。インターハイ予選の決勝でも桐生一高からやはり2ゴールを挙げて、群馬制覇を達成。その数字のことを問われると、「たまたまですね」と笑いながらも「もっと普段からコンスタントに点が獲れないと、時々ではダメなので、毎試合点を獲れるように、もっと貪欲にゴールを狙っていきたいと思います」とニコリ。不思議な魅力を湛えた17歳であることは間違いない。

 掲げた目標は日本一。その頂が見えてきたからこそ、ここからはすべてが難しいゲーム。山田もそんなことは十分に理解している。「疲労もあるんですけど、死に物狂いで、全員で優勝に向かって、頑張っていきたいですし、今日みたいに得点を獲るところと、守備の切り替えと、球際のところもサボらずしっかりやっていきたいなと思います」。

 ゴール前での一仕事。さらに、苦手だったにもかかわらず、得点に繋げてみせた攻守の切り替え。舞台が大きければ大きいほど躍動するピッチ上の山田から、目が離せない。

(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2022

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