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[北京への道(8)]DF内田篤人(鹿島)

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 A代表で厳しい戦いを経た男が五輪代表に帰ってきた。DF内田篤人(鹿島)は7日に始まった五輪代表候補合宿に昨年11月以来となる参加。約2時間のフルメニューをこなした内田は「一緒にやったことのない選手もいる。まずは自分の思っていることを練習で出したい」とチーム力、コンビネーションの向上へ意欲を見せた。

 昨年行われた北京五輪アジア最終予選では3試合にフル出場したが、終盤2試合はベンチ。3バック、4バックのシステム上の問題はあったものの、絶対的なレギュラーだった訳ではない。それでも今年1月にA代表デビューを飾るとW杯アジア3次予選にも4試合に出場。6月22日のバーレーン戦では幸運ではあったが代表初ゴールも決めた。デビュー当初から高かった人気はさらに上昇。今や五輪代表で最注目の選手になりつつある。

 ただ注目度だけが上がったわけではない。この日の6対4の練習ではDFふたりの激しいプレッシャーの中、わずかなスペースへ的を射るような正確なパス。これには反町康治監督から「うまい!」という声が飛んだ。PA大のスペースで行われた7対3では、周囲の足が止まった状況でひとり後方からDF裏のスペースを狙う動きを見せ、スタッフ陣から「素晴らしい」との声を得た。落ち着き払ったプレーで存在感も十分。判断、プレーの精度も高い。A代表の厳しい戦いの中で成長した姿を存分に発揮している。

 FW高原直泰(浦和)らの母校でもある名門・清水東高(静岡)出身。だが、高校時代には1度も全国大会を経験したことがない。中学時代は県選抜にも届かないレベルの選手だった。プロ入り後の注目度は高かったが、決してスター街道を歩んできた選手ではない。それでも年代別の代表で世界と戦う度に大きく成長してきた。それだけの努力はしてきた。「自分はヘタ。周りに迷惑をかけたくない」と必死だった。そして結果を得るまでになった。
 「自分は性格上(メンバー入りへの競争で)ガツガツいくタイプではない」とは言うものの五輪という大舞台へのあこがれはある。「オリンピックは陸上とかのイメージ。今は自分が出られるチャンスがある。友達や周り世話にになっている人に見せられたらいい」。今年元日の天皇杯決勝で弾丸ミドルの先制ゴールを決めるなどクラブでは鹿島の2冠獲得に貢献。そしてA代表では期待通りの活躍を見せた。成長曲線を描き続ける“シンデレラ・ボーイ”。自分の想像以上に高まっている周囲の期待の中、1ヵ月後に迫った本番で新たな驚きを与えることができるか。A代表から帰ってきた男のプレーに注目が集まる。

(取材・文 吉田太郎)

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