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連続シュートミスの野沢、岩政の決勝弾に救われ「申し訳ない」

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[11.29 J1第33節 鹿島1-0磐田 カシマ]

 攻め続けた事で、鹿島アントラーズが勝利の女神を味方につけた。29日に行われたJ1第33節。リーグ戦連覇を目指す鹿島は、ジュビロ磐田との試合を終始押し気味に進めたものの、堅い守備の前に苦戦を強いられた。放ったシュートは磐田の約2倍の13本。前半から決定的な場面で決め切れなかったものの、後半ロスタイム4分、DF岩政大樹のヘディングシュートで磐田を一蹴。最後の最後でディフェンディングチャンピオンらしい勝負強さを見せた。
 前半のハイライトは、決定機での右MF野沢拓也の2本のシュートミス。前半29分、野沢は左サイド本山雅志からの絶妙のスルーパスに走り込みシュート。シュートはポスト左スレスレをすり抜け、ファンは天を仰いだ。次は前半42分。後方からのフィードをFW興梠慎三がヘッドで落とすと、そのスペースにスピードに乗った野沢が再び走り込み、鋭い右足シュートを放った。その瞬間スタジアムはどよめいた、がしかし、またしてもボールがポスト左スレスレを抜けると、その声は大きな溜息に変わった。「"ヤバい"。そう思いました。正直言って、あれで決めていれば、もっと楽な展開になっていたと思う。だから、本当に申し訳ないです」。鹿島はこの日、前半からプレスも早くキープ率も高く、危なげない試合展開でゲームを牛耳り、前後半通して殆ど相手陣内でゲームを進めた。しかし得点に結び付けられず、フラストレーションの溜まる時間を長く強いられた。
 攻めあぐねていた後半15分、野沢は途中交代しベンチに下がった。しかし、野沢は自身のプレーに納得がいかず、強い責任を感じていたという。「交代するまでに、点を取りたかった。ベンチに戻ってからも、もう一度ピッチに戻りたかったんです」。会場に諦めムードが漂い出した後半ロスタイム、岩政が劇的なゴールを決めると、ピッチの中の選手たちは歓喜にあふれ組み立て体操のピラミッドのように重なりあった。「今日は引き分けることが最低条件だったのですが、このチームは本当に奇跡的な力を出しますね。前の(攻撃の)人間が決めるところで決められず、守備の人間に決めてもらってしまって…、岩政に謝りたい」。その模様をベンチで見ることとなった野沢は、悔し紛れの笑顔でそう語った。一方、チームを救った岩政は、野沢のプレーに対し「今日は野沢のおかげで勝った」と皮肉りながらも、「終わってみれば、こういう劇的な結果の方が、波に乗れるかもしれない。こういう結果で良かったと思います」とコメント。チーム全員の気持ちで掴みとった勝点3。「One for All。All for One」の精神で、鹿島は次節のコンサドーレ札幌戦でリーグ戦連覇を狙う。

<写真>この試合、決定機を外したMF野沢
(取材・文 山口雄人)

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