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野沢がV弾!日替わりスターを生んだ鹿島の勝負強さ

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[12.6 J1第34節 札幌0-1鹿島 札幌ド]

 これが王者の貫録だ!小雪交じりの北の大地で鹿島アントラーズが2年連続6回目のリーグ連覇を達成した。ナビスコ杯、天皇杯を含め12個目のタイトルを獲得。試合後の優勝セレモニーでは、総タイトル数であり、サポーターナンバーでもある「12」がプリントされたTシャツを着て、札幌まで駆けつけたサポーターとともに喜びを分かち合った。

 MF野沢拓也のひと振りが連覇を引き寄せた。前半35分、マルキーニョスが落としたボールをそのままドリブルで持ち込み、約25mの距離から右足の弾丸ミドルをゴール左隅に突き刺した。「立ち上がりから相手が前に前に来ていてやばいなと感じていた。とりあえずシュートを打っていこう、相手を下げようと思っていた」。野沢の思い切りの良さが、チームに落ち着きを取り戻させた。

 「立ち上がりからみんなパッとしなくて。緊張だったのか、僕も前半は全然ダメだった」とFW興梠慎三が言うように序盤は攻めあぐねた。優勝への目に見えないプレッシャー。怒涛の9連勝で大逆転Vを成し遂げた昨シーズンとは正反対の状況だった。DF岩政大樹も「去年とは全然苦しみが違った。追いかけていく立場とは全然違うし、プレッシャーを感じながらやっていた」と認める。前回王者として、追われる首位の立場として、その重圧は昨季の比ではなかった。だからこそ、野沢のゴールに価値があった。だれもが「あのゴールで楽になった」と口をそろえたのも当然だった。

 奇跡の逆転優勝を果たした昨季。第33節の浦和との大一番で1-0の決勝点を決めたのも野沢だった。大舞台での決定力は特筆に値するが、チーム内の立場はまるで違った。昨季は不動のレギュラーとして優勝に貢献したが、今季はケガもあり、ベンチを温める時期が長かった。MFダニーロが負傷離脱したあとの最近3試合は先発したが、後半戦の17試合はその終盤3試合を含めてもわずか4試合しか先発していない。途中出場7試合、6試合は出番さえもなかった。「出られなくてもコンディションだけは維持しようと。チャンスが来たときにどれだけ力を出せるか。そのことだけを考えていた」と胸を張った。27歳のMFにはチームを引っ張る自覚が芽生えていた。興梠やDF内田篤人、DF伊野波雅彦ら北京五輪世代も多く、MF小笠原満男の抜けた中盤では29歳のMF本山雅志に次ぐ年長者。「こういうところで(本山と)2人がやらないと、というのはあった。それが結果につながった」。スタンドから観戦していた小笠原は「ずっと苦労してきたタク(野沢)がここで結果を出したというのが、このチームの象徴だと思う。ずっと我慢してきて、最後に結果を出した」と最大限の賛辞を贈った。

 シーズン中盤までは21得点で得点王に輝いたFWマルキーニョスに引っ張られ、勝ち点を積み上げた。そのエースが終盤5試合はノーゴール。それでも、大事なラスト3ゲームで内田、岩政、野沢がそれぞれ決勝点を決め、すべて1-0で競り勝った。日替わりにスターを生む勝負強さ。混戦の優勝争いを勝ち抜いた最大の理由がそこにある。

<写真>決勝点を挙げた鹿島MF野沢
(取材・文 西山紘平)

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