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【特集】[リレー総括]08年Jリーグを振り返る(第1回)

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08Jリーグ総括(第1回)
(吉田誠一/日本経済新聞運動部・編集委員)

 今シーズンの混戦は最初から予想していた。今年に限らず、ここ2~3年、絶対的力を持ったクラブがなかったからだ。前年世界3位になった浦和レッズがさらに高原直泰エジミウソンといった大型補強をした。選手の名前を見れば優勝候補の筆頭でも、大型補強をしたらチームが出来上がるまで時間がかかるもの。しかし、チームが出来上がる前に監督交代があり、エンゲルスが新監督になって再スタート、となってしまった。これで浦和の苦戦は予想できたし、鹿島アントラーズ、浦和、川崎フロンターレを中心とした混戦になると考えていた。

 結果、最終的に勝ち点が一番上だったのは鹿島だった。過去の優勝経験から、「最終的に勝ち点が1でいいから上回ればいい」ということを習得している、そんな戦いぶりだった。
 優勝した鹿島、2位になった川崎F、3位になった名古屋グランパス、どのチームも勝つべき試合で下位のチームに取りこぼしている。優勝した鹿島でも7敗、川崎Fが10敗、名古屋も9敗しているわけだから。しかし、鹿島は取りこぼしたとしても動じないというか、一喜一憂しない落ち着きがあった。常にゴール地点まで見渡してリーグ戦を戦っていたし、そのメンタリティは90分の試合でも見られた。鹿島の礎を築いたジーコが「試合は90分間トータルで考えろ」と代表監督時代に言っていたが、その教えが本当に分かっているのだろう。川崎Fや名古屋、また清水エスパルスFC東京にはまだ優勝経験がないぶん、頭ではわかっていても、本当に理解するにはまだ至っていない、と言わざるを得ない。浦和もこのメンタリティを持っているはずだが、他の部分で崩れてしまった。

 今シーズン評価したいのはJ2で優勝したサンフレッチェ広島だ。J2の中で高い戦力を持つのは確かだが、J1昇格を決め、優勝を決めた後でもちゃんと勝利を重ねた。しかも大勝を続けて勝ち点を100まで積み上げた。またサッカーの内容が素晴らしい。「つなぐサッカー」が試合を経るにつれ、どんどんよくなっていった。最後まで高いモチベーションを保ったペトロヴィッチ監督は偉いし、来シーズンの広島はかなり活躍するのではないか、と思わせてくれた。優勝を争う勝ち点が低かったJ1クラブとは対照的だ。広島を見ていると、直接対決以外の試合で取りこぼしているJ1の上位がだらしなく映った。

 選手個人で言えば、忘れてはならないのは柳沢敦(京都サンガF.C.)。今シーズンの彼のプレー、特に動き出しの質の高さは見ているだけで楽しかった。「こう動けばDFの死角に入り込めるのか」「そのスピードで動き出すのか」などなど、特に夏場、彼のプレーからは多くを勉強させてもらった。シーズン14ゴールは、日本人得点ランク1位。今すぐ代表に、とは言わずともちゃんと評価されてしかるべき活躍をした。

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