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【特集】[リレー総括]08年Jリーグを振り返る(第5回)

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08Jリーグ総括(第5回)
(武智幸徳)

 今シーズンはまさに“戦国”と言っていい大混戦のJリーグだった。まさか浦和レッズが3位にも入らないとはだれも思わなかっただろうし、名古屋グランパスのACL出場権獲得を予想することも難しかった。連覇を遂げた鹿島アントラーズにしても、昨季の72から63に勝ち点を減らしたように、決して磐石の強さだったわけではない。

 混戦になった理由のひとつに、Jリーグ全体の傾向としてスーパーな外国人選手で他チームと差を付けるのが難しくなったことが挙げられよう。確かに、FWマルキーニョス(鹿島)やFWジュニーニョ(川崎F)のように上位に入ったチームには点の取れる外国人選手がいるが、かつてのレオナルド(元鹿島)やドゥンガ(元磐田)、ストイコビッチ(元名古屋)のようなビッグネームを欧州、南米から獲得することは難しくなった。その結果、外国人選手同士でも日本人選手同士でも決定的な差はつかず、1試合1試合は実力差の小さい、非常に拮抗したゲームが多くなったように思う。

 オールマイティーな外国人選手がいない以上、では、どこで差がつくかというとそれは日本人選手の質か。その差異は微妙なものだが、チリも積もれば山で、長いシーズンを通すと明確に順位として反映される。粒ぞろいの日本人選手がいて、監督が志向する戦術に合理性があり、スペシャリティーを発揮する外国人選手がゴール前にいれば、鹿島のように覇権を握ることができる。鹿島の風下に甘んじたチームはそのうちのどれかが微妙に、あるいは決定的に欠けていたのではなかろうか。

 ACLと天皇杯の2冠を達成したガンバ大阪もリーグ戦は8位と低迷した。リーグ、ACLの両方のタイトルを獲るために欧州では当たり前になっているターンオーバー制を採用しようにも、それだけの戦力をそろえるのは日本では難しい。だから、監督にもターンオーバーを操る度胸と能力が育たない。先発がほぼ固定されるとシーズン終盤に無理が来るのは当然で、どこかの時点でJリーグかACLかに狙いを絞らざるを得なくなる。来季は鹿島、川崎F、名古屋、G大阪がACLに参戦するが、この4クラブもシーズンのどこかで疲弊し、リーグか、ACLかの“踏み絵”を突き付けられることになろう。結果として、それはリーグを再び混戦に導くのではないだろうか。

 最後に、モンテディオ山形の昇格を祝したいと思う。クラブW杯での“ミラン体験”や“マンU体験”を通じて浦和やG大阪にもたらされたものがあるように、高いステージに立って初めて得られるものがある。それはクラブにとって大きな財産になる。来季、山形にも、新しい種がまかれると思いたい。


▼関連リンク
第1回(吉田誠一/日本経済新聞運動部・編集委員)
第2回(セルジオ越後/サッカー解説者)
第3回(田村修一/フットボールアナリスト)
第4回(潮智史/朝日新聞編集委員)

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