beacon

[選手権]鹿児島城西、得点記録更新し決勝進出(前橋育英vs鹿児島城西)

このエントリーをはてなブックマークに追加

[1.10 第87回全国高校サッカー選手権準決勝 前橋育英(群馬) 3-5 鹿児島城西(鹿児島) 埼玉]

 第87回全国高校サッカー選手権は10日、準決勝が行われた。第1試合では、鹿児島城西(鹿児島)がU-19日本代表FW大迫勇也(3年)とFW野村章悟(3年)のともに5戦連発となるゴールなど5-3で逆転勝ち。この試合の5得点で今大会通算27得点とした鹿児島城西は、1大会の最多得点記録だった帝京(東京、81年度)の1大会24得点を塗り替え、初の決勝進出を果たした。鹿児島城西は12日、鹿児島県勢としては04年度の鹿児島実以来となる優勝をかけて広島皆実(広島)と決勝(国立)を戦う。

 2点のビハインドなど関係ない。青いユニフォームを身にまとった鹿児島城西のビッグウェーブが、前橋育英を飲み込んだ。
 試合開始直後の前半1分に野村のヘディングシュートで先制した鹿児島城西だったが、同3分からの11分間で3連続失点。1-3とリードされた。相手の個人技とパスワークにディフェンス陣が完全に崩された。それでも準決勝までの4試合で1試合平均5.5得点をマークしている鹿児島城西はDF成元将平(3年)が「前が絶対取ってくれる、という気持ちがあった」と信頼を口にするように全く慌てない。

 22分にDF河野圭亮(3年)が出した左クロスを相手GKとDFが一瞬お見合い。2人の間に体をねじ込ませた野村が右足で合わせ1点差、81年度の帝京が持つ大会通算得点記録(1大会通算24得点)に並ぶと43分だ。河野から左サイドのスペースへ出されたスルーパスをオーバーラップしていたDF松井駿佑(3年)が中央へ折り返す。するとニアサイドへスライディングで飛び込んだエース大迫勇が右足で同点ゴールを決めた。大迫勇にとって1大会個人最多タイ記録となる9得点目の記念ゴールは、大会新記録となるチームの1大会25得点目のゴールとなった。

 これで同点。だが追いついただけでは青い波はおさまらない。前半ロスタイムには大迫希(3年)の左CKが相手GKのオウンゴールを誘い、逆転。今季の全国高校総体、全日本ユース選手権でいずれも1試合平均2.5点以上を叩きだしている攻撃陣は2点のビハインドを前半だけでひっくり返した。
 決して内容がよかったわけではない。相手の素早いディフェンスの前に中盤の選手がなかなか前を向いた状態でボールを持てず。ロングボール中心の攻撃で、小久保悟監督も「得点だけが入ってしまって、相手のほうが全然いいサッカーをやっていた。内容は何もなかった」と不満の表情だった。1得点を挙げた注目の大迫勇の評価も「今日は悪かったな」。だが「ミスで崩れてしまった」と前橋育英・山田耕介監督が残念がった相手の混乱を鹿児島城西は見逃さなかった。内容はよくなくても、「ここぞ」の場面を見逃さずに相手の傷口を広げ、大量得点に変えてしまった。これまで常に攻め勝って来た自信は準決勝でも揺るがなかった。

 シュート数24対23という撃ち合いを制して決勝進出。決勝の相手は堅守の広島皆実に決まったが、ここでも攻めて相手を上回るだけだ。大迫勇は「自分のいいところを出していきたい」。鹿児島城西は決勝も「攻めて」全国の頂点に立つ。

(取材・文 吉田太郎)

TOP