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[選手権]大会記録更新も笑顔なし、大迫勇「力不足です」(鹿児島城西vs広島皆実)

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[高校サッカー注目選手クローズアップ]

[1.12 第87回全国高校サッカー選手権決勝 鹿児島城西(鹿児島) 2-3 広島皆実(広島) 国立]

 シュート6本で1得点。鹿島入りが内定している鹿児島城西FW大迫勇也(3年)は、1大会最多得点記録を更新する今大会10得点目のゴールを決めたが、チームを勝たせることはできずに準優勝。目標の日本一には手が届かなかった。

 「自分が取っていれば。力不足です」。俯いたまま記者の質問に答えた大迫勇。先制ゴールを決めた直後に見せていた満面の笑みは試合後には完全に消え去っていた。大会タイ記録の1大会9得点をマークして迎えた決勝。2トップの一角として先発した大迫勇は、相手の厳しいマークをものともせずにゴールへと襲い掛かる。前半17分に野村章悟(3年)の左クロスをダイビングヘッド。GKの指先を抜けたこのシュートはゴール右ポストのわずかに外側へ外れていったが、直後の20分、1学年上の世代のU-19日本代表にも名を連ねてきたエースは、40,102人が集まった観衆の度肝を抜く。

 右サイドでボールを受けるとDFに前を遮られながらも体を巧く使った、そして強引な突破で広島皆実の守備網を打開。そのまま左足シュートをゴールへとねじ込んだ。どよめきに近い歓声が起こる中、両手を広げて応援団目掛けて走り出した背番号9は歓喜のダイブ。その表情には笑顔が溢れていた。

 だが、次の1点が取れない。大迫勇が右サイドから切れ込んで放った右足シュートがGKに止められた1分後にチームは失点。さらに33分にもゴールを破られて勝ち越されてしまった。ハーフタイムに「悔いの残らないように、精一杯やろう」とチームメイトに声をかけて臨んだ後半の17分には、DF裏のスペースを突いたMF平原慎也(3年)へ絶妙なパスを出し、野村の同点ゴールをもたらした。
 それでもチームは再び直後に失点。大迫勇はDFに囲まれながらもポストプレー、そして鋭い反転からのドリブル突破でチャンスメイクはしたが得点にはつながらず、自らのシュートがゴールを破ることもなかった。

 「どんな試合、どんな相手でも点の取れる選手になることにこだわってきた」大迫勇は、目標どおりに今大会全試合でゴールを決めた。だが、それだけでは足りなかった。「(もう1点)自分が決めていれば勝った。チームに申し訳ない」と大迫勇。「とにかく点を取ることを考えたけど。シュートが入らなかったことは悔しい。(進路である鹿島では)もっと精度を上げたい」。
 今大会を通じて数々の衝撃をサッカーファンに与えた大迫勇。6戦10発というゴールラッシュで高校サッカーの歴史に名を刻んだ。ただ、期待の大きいFWにとっての問題はこれから。次のステージあるJリーグ、そしてジャパンのユニフォームを着て活躍できるか。高校チームではどこも止めることのできなかった「怪物」の今後に誰もが注目している。

<写真>鹿児島城西FW大迫勇
(取材・文 吉田太郎)

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