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世界最下位・グアムが“奇跡”の優勝!!

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[3.15 東アジアサッカー選手権2010予選大会最終戦 グアム 2-2 マカオ グアム・レオパレススタジアム]
 
 「世界最下位」グアムが、“奇跡”の優勝を果たした。東アジアサッカー選手権2010予選大会最終日第2試合は、首位・グアム(2戦終了時点で勝ち点6)と2位・マカオ(同3)が優勝をかけて直接対決。引き分け以上で優勝が決まるグアム優位でスタートした試合はマカオがエース・CHAN Kin Sengの2得点でリードを奪ったが、後半ロスタイムにグアムFW Jason Ryan CUNLIFFEが同点ゴールを奪い、2-2。劇的な一撃で引き分けに持ち込んだグアムが、地元Vを果たした。グアムは今年8月に行われる東アジアサッカー選手権2010準決勝大会へ進出。決勝大会(10年2月、日本)出場をかけ、開催地の台湾、北朝鮮、香港と戦う。

 マカオが2-1とリードして突入した後半ロスタイム、“奇跡”が起きた。優勝するためにはどうしても1点が必要なグアムは、数分前からポジションを前線へと上げていたDF Scott Dominic Leon GURREROがドリブルで思い切った中央突破。相手の中盤を破ると、右サイドからゴール前へと走りこんだCUNLIFFEに絶妙なスルーパスを通す。これを受けたCUNLIFFEが冷静に左足シュートをゴールへ流し込み同点。敗色濃厚だった地元・グアムのサポーター1500人の悲痛な叫びはその瞬間、大歓声へと変わっていた。ベンチでは築館範男(TSUKITATE Norio)監督が両手を突き上げ、ピッチ上では選手たちの歓喜の輪が広がった。そしてロスタイム表示の3分が過ぎるよりもわずかに早く試合終了のホイッスル。FIFAランキング最下位・201位タイのグアムにとって、4日前に挙げたFIFA加盟国・地域からの初勝利(対モンゴル、1-0)に続く歴史的快挙。かつて清水ユースの監督を努めた経歴などを持つ築館監督は「(リードされていても)我慢して最後まで来れば何とかなると思っていた。こぼれ球でも何でも押し込めと。でもゴールは本当、奇跡ですよ」と興奮した面持ちでタイトル奪取を喜んだ。

 グアムにとっては今回が初めて経験する優勝のチャンス。試合開始前から選手たちのテンションは最高潮に達していた。キックオフからアグレッシブな動きでゴールを目指していたが、先制点を奪ったのは、勝てば逆転優勝となるマカオだった。前半10分にCHANが最終ラインの裏のスペースを突いてそのまま右足で先制ゴール。グアムは36分にMF Joshua Andrew BORJAのゴールで追いついたが後半6分、マカオのCHAN(4得点で今大会得点王)に再びゴールを許し、勝ち越された。その後はミドルシュートがゴールを捉えながらもGKの好守に阻まれ、絶妙なクロスもあと一歩のところでクリアされた。ただ、刻一刻と迫る試合終了へのプレッシャーに押し潰されそうになりながらも選手たちの心は折れず。そして後半ロスタイム突入から20秒後に奇跡が起きた。

 築館監督はグアム代表監督就任5年目。就任当時は選手は試合で100%の力を出すことができず、「パーティーがあるから」などの理由で平気で練習を欠席したりしていた。サッカー協会からの支援もほとんどなかったという。指揮官がまず選手に説いたことは「身を正せ。ゲームで100%を出せば、その姿を見て、いずれ助けてくれる」。『心』の部分から変化していった代表チームは徐々に世間からも認められるようになり、今回は選手の職場などの理解や協会などからの金銭的な援助も受け大会1週間前から、強化合宿を行うことができた。

 戦いぶりも変わった。これまではいい試合をしても後半に逆転されたりで勝ちきることができなかった。勝つことを知らなかった。それが今大会初戦のモンゴル戦では、圧倒的に攻められながらも1点を守り抜いた。北マリアナ諸島との第2戦も内容は良くなかったが勝ち切った。「いくらいい試合をしても勝たなければ、経験にはならない。あいつら(グアム代表)はこれまで勝てなかった。でも今回は勝った。そして今日も(苦しい試合を)追いついてドローにできたことは、チームがステップアップしている証拠だと思う」と築館監督。モンゴル戦の勝利によって自信を得たチームは、これまでなぜ未勝利だったのかと思わせるような戦いぶりでタイトルまで獲得した。
 神戸清雄(KAMBE Sugao)前監督(現北マリアナ代表監督)が礎を築き、築館監督が勝利への道しるべとなったグアム代表。5日間の大会で大きな成長を遂げた。FIFA加盟国・地域から勝利したことのなかったチームは、予選大会勝者として準決勝大会に挑戦する。

<写真>優勝を喜ぶグアム代表イレブン。中列左から2人目で左手ガッツポーツを取っているのが築館監督
(取材・文 吉田太郎)

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