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米本が史上3人目のニューヒーロー&MVPのW受賞!「“持ってるキャラ”じゃなかったのに」

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[11.3 ナビスコ杯決勝 F東京2-0川崎F 国立]

 この男、やはり何かを持っていた。FC東京の高卒ルーキー、MF米本拓司が大一番でも輝いた。前半22分、ペナルティーエリア左で思い切り右足を振り抜いた。無回転のボールは、日本代表GK川島永嗣の手を弾きゴールネット左に突き刺さった。チームを勝利に導く大きな先制点を奪い、ニューヒーロー賞に続いてMVPも獲得した。

 「本当にうれしいです。まさかMVPを取れるとは思っていなかった。みんなに頭を叩かれました。大舞台は経験がなくて、試合前から緊張していました。W受賞? こういう“持ってるキャラ”じゃなかったんですけどね、高校時代は(笑)」

 満面の笑みを浮かべて、MVPの余韻を味わった。03年の田中達也(浦和)、07年の安田理大(G大阪)に続いて史上3人目となるニューヒーロー賞&MVPのW受賞。何より18歳でのMVPは史上最年少だ。県立伊丹高校から入団1年目での受賞と前代未聞の快挙達成だ。

 1年目でレギュラーをつかみ、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いにあったが、やはりまだ18歳。初めての大舞台に、試合中はガチガチに緊張していた。中盤でパスミスを連発し、いつもの思い切りのよい動きが出せなかったという。そんな中、前半22分、豪快なミドルシュートを放つ。「緊張して、パスミスばかりしていた。体が動いていなかった。シュートは流れが悪かったんで、思い切り打つことだけを考えた。無回転? 狙っていなかった。たまたまです。コースも狙っていないし、あれ、入っちゃったという感じでした」。吹っ切れた。若さゆえか、ここから一気に変わった。プレーにダイナミックさが戻り、攻守で奮闘した。特に相手のキーマン、日本代表MF中村憲剛にハードマーク。得点だけではなく、守備でも貢献してみせた。

 城福監督も新星の活躍に喜んだ。「若い選手はシビアな局面を経験すると、吸収力が高いと実感した」と急速な成長に目を細める。そして、ミドルシュートについても「あれくらいのシュート力はあった。まったく驚かない。チームの中でも3本の(中に入る)シュート力を持っているんです」と評価した。

 米本にとっては、一つの恩返しができたという思いもある。指揮官とは高校生だったころからの縁。U-17日本代表の指揮を執っていた城福監督に見出され、米本は同代表入りした。するとメキメキと頭角を現し、“城福チルドレン”の一人と言われた。地元のヴィッセル神戸から特別指定選手に選ばれながらFC東京入団を決意したのも、「ぜんぶ、監督(がいたから)です。U-17のときに代表にいなかったら、僕はこういう場にいなかったと思います」。常々「リーグやナビスコとかタイトルを取って、恩返しをしたい」と話していたが、有言実行して見せた。

 「まだまだ満足はできない。もっと成長しないといけないと思う。(今季は)まだ、リーグ戦の優勝の可能性が残っている。それに向けて頑張りたい」と米本。快挙にも浮かれた様子はまったくなかった。そして、新星のまま終わるつもりはない。ナビスコ杯で活躍した若手選手はその後、みんなチームの主軸となり、日本代表へとステップアップしている。米本の“サクセス・ストリー”はまだ始まったばかりだ。

<写真>MVPを獲得したF東京MF米本
(取材・文 近藤安弘)

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