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悔しさをバネに…興梠が歓喜の優勝決定弾

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[12.5 J1第34節 浦和0-1鹿島 埼玉]

 無心で飛び込んだ。DF内田篤人のピンポイントクロスに体を投げ出したFW興梠慎三のダイビングヘッドが鹿島アントラーズの3連覇を決めた。GKも反応できないほどの豪快な一発は、2得点を挙げたG大阪戦(5-1)に続く2戦連発弾。背番号13が、3連覇の立役者となった。

 悔しさをバネにした。開幕から2試合は先発したが、第3節からは新人FW大迫勇也にポジションを奪われ、4試合連続の先発落ち。先発を奪い返したあとも、7月11日の大宮戦から10月7日の川崎F戦まで12試合連続ノーゴール。チームもその間に5連敗を喫するなど、興梠の不振はそのままチームの成績にも影響を与えていた。

 前節のG大阪戦前には不眠症に悩まされるほどプレッシャーを感じ、追い込まれてもいた。それでも重圧につぶされることなく、自分を信じ、監督を信じ、一戦一戦を戦ってきた。

 「スタメンを外れたり、12試合ノーゴールという記録をつくってしまったからこそ、最後の最後に大一番で結果を出せたのだと思う。チームに迷惑をかけてばっかりだった。最後こそは、という強い気持ちでやったからこういう結果が出たんだと思う」

 試合後にはチームメイトから胴上げもされた。「よく分からないですね」と苦笑いしながらも、「素直にうれしいです」とはにかんだ。スランプを乗り越え、勝負強さを身に付けるなどひと皮むけた興梠がチームの“エース”として認められた証拠かもしれない。

 今季はこれで12得点。目標だった2ケタもラスト2試合でクリアした。FWマルキーニョスの13得点には及ばなかったものの、2トップでチーム総得点(51点)の約半分(25点)を叩き出したのはチームとして成熟した証しだ。

 「印象に残っているゴールは?」と聞かれた興梠は「今日のゴールもそうだし、ガンバ戦のゴールもそうだけど、自分のゴールより、みんながひとりひとりチームのために頑張ったことの方が大事だと思う」と答えた。すべてはチームのために。互いのミスをカバーし合い、選手間でぶれることのない意思統一が、鹿島の完成された強さであり、3連覇の原動力となったのは間違いない。

<写真>決勝点を決めた鹿島FW興梠(13番)
(取材・文 西山紘平)

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