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[高校選手権]再び鹿児島から脅威のチーム現る!神村学園が“新記録”の1試合10発!!

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[1.2 全国高校選手権2回戦 中京大中京 2-10 神村学園 駒沢]

 第88回全国高校サッカー選手権は2日、2回戦15試合を行い、16強が決まった。駒沢陸上競技場(東京)の第2試合では神村学園(鹿児島)が中京大中京(愛知)に10-2で大勝。大会が首都圏開催へ移行した1976年度以降の1試合最多得点となる歴史的勝利で3回戦進出を決めた。神村学園は3日の3回戦で境(鳥取)と対戦する。

 後半37分に途中出場のFW村尾将平(3年)が右足ループでゴールを決めて9-2。すると神村学園スタンドからは「あと1点、あと1点」のコールが響きだした。そして39分。村尾のラストパスをFW大山直哉主将(3年)が右足で豪快にゴールへ叩き込み10得点を達成。スタンドからのエールは「新記録!、新記録!」へと変わっていた。

 1試合10得点は第60回大会1回戦・高松南(香川)戦で帝京(東京)が記録した9-0のスコアを上回る“1試合最多得点新記録”。それも1選手が爆発したわけではなく、実に9人の選手が得点を記録し、2得点を決めたのは大山主将1人だけだった。強力で多彩な攻撃を全国舞台で披露。それも11回目出場でU-17W杯日本代表FW宮市亮(2年)らタレント擁する強豪、中京大中京から奪ったのだから驚きだ。唯一2得点の大山は「これだけ取れたのはよかった。勢いに乗ったら(きょうのようなサッカーができる)自信があった」と満足げ。竹元直樹監督は「神村学園らしいサッカーは攻撃的にボールを回しながら全員で攻撃して点に絡むサッカー。それが、(強豪の)相手に引き出されたところが多いと思う」と大爆発について説明していた。

 硬さのあった前半。10分にセットプレーのこぼれ球を中京大中京MF下尾直矢(3年)に先制ゴールを決められた。反撃するもシュートは相手GK柿野太志(3年)の好守に阻まれていた。それでも指揮官が「鹿実(鹿児島実=全国優勝2回の名門)の後を追っかけても、城西(鹿児島城西=昨年度全国準V)を追っかけても勝てない。鹿児島にはないスタイルのサッカーをしたい」と神村が激戦区・鹿児島を飛び出し、全国で勝つために磨いてきたスタイルがここから歴史的なゴールダッシュを導き出した。

 神村のスタイル、それは徹底したドリブルによる仕掛けだった。24分、左サイドでボールを持ったMF小谷健悟(2年)が小刻みなタッチのドリブルで相手守備網を打開。PAへ侵入すると、3人がかりで止めに来た相手DFに一度は阻まれたが、こぼれ球を右足ダイレクトボレーで同点ゴール。この“らしい”得点が神村の攻撃陣に火をつけた。

 U-20韓国代表候補のFW黄順旻(3年)らが積極的にドリブルで仕掛けて、相手を引きつけるとマークがルーズになった選手たちへ面白いようにボールが回りだす。また神村は守備面でも出足が素晴らしく、怒涛のプレッシングで相手に全くボールを持たせない。すると27分には別格の攻撃センスを見せる黄のラストパスをMF永江拓弥(2年)が右足コントロールショットでゴール右隅へ決めて勝ち越し。さらに33分には左ショートコーナーからのクロスをCB田中祐太郎(3年)が頭で叩き込み3-1で前半を折り返した。

 何度かあったカウンターのチャンスを生かせなかった中京に対し、エンジン全開となった神村の攻撃はもう止まらない。後半7分、左サイドでキープした黄の折り返しを小谷がシュート。それを前方の大山がコースを変えて4点目を決めると、9分には敵陣中央でボールを拾った大楠恭平(3年)が前進しながらくさびに入った黄へパス。黄がゴール前へ流すと猛スピードで走り込んだ大楠がそのまま左足で流し込んだ。

 そして12分にも左サイドからドリブルで突っ込んできたSB松山周平(3年)が黄とのワンツーから左足でゴール。15分には黄が圧巻の左足シュートで、1点を返された後の35分には途中出場のMF竹元秀忠(3年)もゴールを決めた。

 ボールを持てばまずドリブル、ドリブル……。前線だけでなく、機があればSB、そしてCBの大久保正千栄(3年)までもが長い距離のドリブルで敵陣PAへと侵入した。竹元監督は「パスサッカー(がいい)というけれどサッカーの面白さはドリブル。ドリブルで突破していくことがみている人も面白いと思います。次もらしいサッカーをすることができれば」。そのドリブルからのゴールで流れを変えた小谷は「ずっとドリブルで決めてやろうと思っていた。次もどんどん走って得意のドリブルで点を取りたい」と次戦でもその技を披露することを明言した。

 相手が戦意を失っていたとはいえ圧巻のゴールショーを披露した神村。優勝候補の評価にふさわしい強さ、そして超攻撃的なサッカーだった。夏の全国総体では優勝した前橋育英(群馬)の前に良さを発揮することができず敗戦。だが冬へ向けて進化した実感がチームにはある。そして初戦で歴史的な大勝。昨年、同じく“異次元”の攻撃力を武器に1大会の得点記録を29へ塗り替えた鹿児島城西に続き、再び鹿児島から脅威のチームが現れた。

<写真>試合後、スタンドに挨拶する神村学園イレブンと「10-2」を示電光掲示板
(取材・文 吉田太郎)

特設:高校サッカー選手権2009

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