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[高校MOM166]神村学園FW黄順旻(3年)_“新怪物候補”5発に絡む

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 中京大中京 2-10 神村学園 駒沢]

 全国高校サッカー選手権が首都圏開催へと移行された1976年度以降の1試合最多得点記録を更新する10得点をたたき出した神村学園。その前線で最も輝きを放ったのが韓国人留学生のFW黄順旻(3年)だった。
 
 「新怪物候補」の選手権デビュー戦は5得点に絡む別格のプレーだった。序盤はそのおぜん立てにチームメイトが応えられないでいたが、1-1で迎えた27分だ。右サイドで仕掛けた黄が寄せてきたDFの足先を射抜くラストパス。これを走り込んだMF永江拓弥(2年)が右足ダイレクトでゴール右隅へ決めると、後半はエンジン全開となったチームとともに黄の攻撃力も爆発した。

 まずは7分、左サイドでボールを持つと絶妙な折り返しで4点目を演出。すると1分後にはMF大楠恭平(3年)からのくさびのパスをダイレクトでゴール前へ流して大楠のゴールを導きだした。さらに12分には左サイドから駆け上がってきたSB松山周平(3年)とのワンツーで6点目をアシストするとトドメは15分だ。左サイドの松山からのフィードをクロスさせた右足のかかとで絶妙なトラップ。すぐさま左足で豪快なシュートを叩き込んだ。

 相手のプレッシャーを全く意に介さない技術の高さ。前線でボールを受けると、絶妙な間合いから対面する選手のマークを外し、次々と決定機を生み出した。そして相手の寄せが甘いと見るやその強烈なシュートがゴールを襲った。得点機に絡んだのは得点場面だけではない。ボールを持てば“思うがままの”プレーで決定機を演出し続けた。

 黄は現在U-20韓国代表に名を連ねるエリートで神村学園に入る前は韓国屈指の強豪・チャンフン高でプレーしていた。だが、「韓国のプレースタイルは自分には合わなくて日本に来たかった」と神村学園へ。「自由なサッカー。1対1が多くて自分が成長するにはいい。自分がしたいプレーができる」神村学園で攻撃センスを磨いた。今回が初めての全国選手権だったが、さすがにU-20韓国代表は余裕の表情。「プレッシャーは韓国の方が厳しい。きょうはあまり(相手が)来ていなかった。点を取りたかったけど、アシストでいいかなと」。全く違和感のないレベルの日本語で軽快に語った。

 厳しい環境に身を置いていたからこそ、別格のプレーができている。黄は全国選手権を控えた昨年12月に行われたU-20韓国代表合宿に参加。U-20日本代表戦にもベンチ入りした。代表合宿について「すごくプレッシャーが速かった。ボールスピードもめっちゃ速かった」。韓国代表で不動のレギュラーを務めセルティック(スコットランド)へ移籍したMFキ・ソンヨンのほか、昨年U-20W杯でベスト8へ進出したメンバーの中で揉まれてきたのだから、この日のパフォーマンスは「当然」だったのかもしれない。

 同じ鹿児島県代表として昨年、全国高校選手権で1大会の個人得点記録を塗り替えた鹿児島城西FW大迫勇也(現鹿島)の活躍は年代別韓国代表をも意識させるものだった。練習試合で1度直接対決し、0-1で敗戦しているが「常にゴールを決めるところにいる」と大迫のストロングポイントを高く評価する。今回はその大迫のように自身が全国で活躍することを願っている。

 黄が今大会屈指のタレントであることは間違いない。鹿児島代表として全国で怪物ぶりを発揮した大迫に続く、鹿児島からの新たな「怪物候補」。「次も超攻撃的にいってゴールを狙っていきたい」と力を込めた黄は、今後さらなる強豪との対戦同じようなパフォーマンスを発揮していくのか、そしてチームを勝利へ導けるのか、逸材のプレーから目が離せない。

(取材・文 吉田太郎)


特設:高校サッカー選手権2009

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