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[高校選手権]“超攻撃”神村学園が連続無失点の“カベナチオ”打ち砕く

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[1.3 全国高校選手権3回戦 境 0-2 神村学園 駒沢]

 第88回全国高校サッカー選手権は3日、3回戦8試合を行った。駒沢陸上競技場(東京)の第1試合、境(鳥取)対神村学園(鹿児島)は神村学園が途中出場のFW村尾将平(3年)の先制ゴールなど2-0で勝利。青森山田(青森)と対戦する準々決勝(1月5日)へ駒を進めた。

 前日の2回戦で中京大中京(愛知)にシュート33本を浴びせ、大会が首都圏開催へ移行した1976年度以降の最多得点記録となる10ゴールをマークしていた神村学園。だがこの日の前半は今大会無失点で通称“カベナチオ”と命名されている境の守備陣にシュートゼロに封じ込まれた。
 境は神村のU-20韓国代表・黄順旻と大山直哉主将(ともに3年)の強力2トップにMF山西理輝努(2年)とCB岡崎克也(3年)をそれぞれマンマークさせる戦術を実行。「こっちがしっかりアプローチにいけば、しっかり守れるのではないかと思っていた」と廣川雄一監督が振り返ったとおり、境は神村にボールこそ持たれていたが、素早いアプローチでボールを奪うと前線へ大きく蹴りだすプレーを繰り返し、神村にリズムを与えなかった。

 そして攻撃面では1年生ながら1トップを任されている松川智哉、10番のMF田中福彦(3年)がカウンターからドリブルで突進。前半23分にはDF裏へ飛び出した松川が相手GKをかわす。シュートを放つ寸前に神村のCB田中祐太郎(3年)の好守に阻まれたが、有効だった彼らの突破を武器に、少ない攻撃機会の中からでも得点の予感を十分にさせていた。

 神村は今大会ブレイク中のドリブラー、MF小谷健悟(2年)が驚異的な突破力を発揮し、再三相手DFを切り裂いていたが、ラストパスは境の岡崎や景山慎太郎主将(3年)が難なくクリア。神村はシュート16本だった前日と打って変わってシュートゼロで前半の40分間を終えた。
 だが、後半にゴール前での積極性が高めると境ゴールをこじ開けにかかる。2分に左サイドからSB松山周平(3年)がワンツーからゴール前まで切れ込みシュートを放つと、4分には小谷が強烈な左足シュート、そして7分には大山がマークを外し、決定的なシュートへと持ち込んだ。

 だが境は2年生守護神・倉凌太がビッグセーブでゴールを許さない。神村は両SBが積極的に攻め上がり、局面では果敢にドリブルで仕掛けるが、攻めても攻めても堅い門を砕くことのできない展開。そして得意のドリブルもシャットアウトされていった。このまま後半は半ばを迎え、神村の竹元真樹監督も「(自分たちが)守りきられるとは思ってなかったけど、きょうは守りきられるかな」と思ったという苦しい試合。それでも「リスクは覚悟している。自分達の(超攻撃的)サッカーが間違っていないんだということを証明したかった」と松山が語ったように神村は自分達の攻撃サッカーが境の“カベナチオ”を上回っていることを証明する。

 大仕事をしてのけたのは後半15分から「スペースをつくりだすために」(竹元監督)投入されたFW村尾だった。20分だ。左サイドでボールを受けた村尾は中央へ切れ込みながら黄へパス。PAの黄が足裏でボールをスペースへと送ると走りこんだ村尾がマークを外し右足で先制ゴールを叩き込んだ。ついにシュートが“カベナチオ”を貫通。神村は村尾の投入により、マンマークの担当をチェンジした境守備陣のズレも見逃さなかった。
 
 攻めるしかなくなった境は中盤の選手が積極的に前線へと飛び出し、決定機に絡むが、39分に神村・永江拓弥(2年)の左CKを田中に頭で押し込まれ万事休す。「(この展開でもしっかりと)ダメ押せるところが彼らの強さだと思う」と指揮官も讃えた神村学園が堅守の難敵に攻め勝ち、8強切符を獲得した。

<写真>後半39分、神村学園・田中(左)がダメ押しヘッドを叩き込んだ
(取材・文 吉田太郎)

特設:高校サッカー選手権2009

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