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王者に死角なし、21歳の新星がプロ初アシスト

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[3.6 J1第1節 鹿島2-0浦和 カシマ]

 試合を決定付けるダメ押しゴールは21歳の新星の左足から生まれた。鹿島アントラーズのMF遠藤康は1-0の後半34分からピッチに入ると、左サイドで起点となり、何度もチャンスメイク。そして後半41分、DF新井場徹のスローインを受けると、左サイドを深くえぐり、正確なクロスでFWマルキーニョスのヘディングシュートをアシストした。

 ゴール裏のサポーターに向かって思わず右腕を突き上げた。「覚えてない」と苦笑いした興奮のガッツポーズ。チームメイトからも手荒な祝福を受け、「蹴られましたね」と白い歯をこぼした。

 オズワルド・オリヴェイラ監督の“秘蔵っ子”だ。2月23日のACL長春亜泰戦、27日の富士ゼロックススーパー杯も途中出場でピッチに立った。オリヴェイラ監督がまず切るカードが遠藤。もはや恒例となった交代策を見せる指揮官の期待に「プロ初アシスト」で応えた。

 「監督には“いつも通りやれ”と言われた。チームの勝利に貢献できてよかった。まさかアシストできるとは思ってなかった。ビックリしてます」と初々しく喜んだ。

 チームにとっても遠藤の成長は大きい。オフにFW田代有三、MF増田誓志らが他チームに去り、貴重なバックアップ選手を失っていた。戦力を低下させないためにも、徐々に世代交代を進めていくためにも、プロ4年目を迎えた遠藤の台頭が待たれていた。

 「ヤス(遠藤)が正確なボールを上げてくれたから、得点を決められた。目が合った瞬間、彼も気づいて上げてくれたと思う」と感謝したマルキーニョスは「鹿島に来てから彼の成長を見ている。試合の中で自信も付けて、しっかりと自分のプレーを見せられていると思う。しっかりとした技術を持っているし、あとは自信を持って落ち着いてやること」と称賛した。

 DF岩政大樹も「最近は自分が点を取ってもあまり喜ばないけど、今日はヤス(遠藤)に飛び付きに行った」と自分のことのように喜んでいた。その一方で「途中出場で出る選手としては当然やらないといけない結果。これをベースとなる結果にして、満足せずやってほしい。今日は1つめの仕事ということでほめに行ったけど、これが普通になってほしい」とも。マルキーニョスも「今の姿勢を続けてピッチに入ることが重要。謙虚さを失ってはいけない」と指摘した。

 ほめるところはほめる。締めるところは締める。こうした先輩がいるからこそ、鹿島の若手は次々と伸びてくる。3連覇の次は4連覇、そしてアジア制覇。現状に満足することなく前進を続ける王者に、新たなニューヒーローが誕生した。

<写真>鹿島MF遠藤
(取材・文 西山紘平)

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