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[MOM243]F東京U-18MF武藤嘉紀(3年)_無敗のチーム救う一撃

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[高校サッカー マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.16 JFAプリンスリーグ関東1部第8節 F東京U-18 2-1 桐光学園高 東京ガス武蔵野苑多目的G]

 FC東京おなじみの試合後のパフォーマンス。サポーターからの指名されたMF武藤嘉紀が「シャー」と左手を突き上げると、観客席からは背番号7が決めた劇的な同点弾時以上の大きな拍手が沸き起こった。
 
 トップ昇格候補のMFが決めた渾身の一撃だった。後半27分に先制されたF東京U-18はビハインドを挽回することができないまま試合終盤へ突入。すでに後半40分が過ぎていた。プリンスリーグ関東では、08年5月以来28戦ぶりとなる敗戦が目前に迫る状況。だが、左MFからFWへポジションを移していた武藤がキセキを起こす。

 後半41分、F東京は途中出場のMF湯浅寿紀が右クロスを放り込む。本来ならば武藤は中央へ飛び込むところだったが、よりゴールの確率の高いこぼれ球を冷静に狙っていた。読み通りにこぼれ球を拾うと、「ダイレクトで打とうと思ったけど、(DFとの)間があったので止めて、空いているニアへ思い切り蹴った」と右足を振りぬく。すると、鋭いシュートはゴール左隅へと吸い込まれた。

 前節の流通経済大柏高戦で右足首を負傷し、13日に行われた練習試合は欠場していた。調整が十分ではなく「点入るまでは全然ダメだった」と振り返る。ただ、絶体絶命の状況でもあきらめず、そして冷静さを失わずに大仕事。今季5点目のゴールでチームを蘇らせ、MF岩木慎也の決勝ゴールを呼んだ。武藤について「彼には右から来る相手に対しても、左サイドから来る相手に対しても両方でブロックできる身体の強さがある」と分析する倉又寿雄監督もこのゴールを評価し、「自分でやろうという気持ちが出ていた。相手は彼に対して3、4人で止めに来ていたから、あそこで上手く周りを使えるとまたいいのだろうけど」と加えていた。

 中学時代は攻撃的なポジションを務めていた武藤だが、高校では昨年まで主にSBとしてプレーしていた。攻撃的MFに定着したのは今季から。そして、チームトップのゴール数をたたき出すなどエース格として活躍している。ただ、「やっぱり前の方が好き」とはにかんだMFの憧れの存在は、意外にもDF。W杯日本代表メンバーに選出されたトップチームのDF長友佑都だった。
 理由がある。それはトップチームに昇格するため、DFとしても中盤としても認められる選手になりたいから。「長友さんのように、前にもいけるし、後ろにも強い選手を目指していきたい」と笑顔で語っていた。

(取材・文 吉田太郎)

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