beacon

新DFラインがメッシを完封。しかし、ザック流守備戦術の“合否”は韓国戦に持ち越しへ

このエントリーをはてなブックマークに追加

[10.8 キリンチャレンジ杯 日本1-0アルゼンチン 埼玉]

 新守備戦術の導入で注目されたDFラインが、世界最高のFWリオネル・メッシ(バルセロナ)を擁し、9月の国際親善試合でスペインを4-1粉砕したアルゼンチンを完封した。

 DF田中マルクス闘莉王(名古屋)とDFF中澤佑二(横浜FM)のベテランが怪我で不在の中、DF今野泰幸(F東京)とDF栗原勇蔵(横浜FM)の新CBコンビ、そして長友佑都(チェゼーナ)、内田篤人(シャルケ04)のSB陣も含めた4バックが、世界屈指の個人技を誇るアルゼンチンにあまり決定機を作らせなかった。

 今野は「相手はうまかったけど、カバーし合いながらやれた。まずは前半の45分間を0で抑えようと勇蔵と話して入った。ハーフタイムに残り45分だから、このまま90分頑張ろうと言いいながらやりました。抑えられたことは自信になる」と組織力が通用したことを喜んだ。栗原からは「やられることはわかっていた。だから思い切って前に出て行こうと思ってやった。怖さはなかった。間違いなく、セルビア(4月対戦、栗原が先発し0-3●)のほうが強かった」と強気のコメントが飛び出した。

 アルベルト・ザッケローニ新監督による初めての合宿が4日からスタートしたが、最初に直接指導が入ったのはDFラインだった。中央を崩されることを嫌がる指揮官は、イタリア流のラインDF“カテナチオ”を導入。サイドバックには、相手のサイドアタッカーに過剰なマンマークを避けるよう指導したほか、ボールがない方のサイドバックには、相手攻撃陣がワイドに開いてフリーになっていても、中へ絞ることを優先させるなど、これまでは少し異なる戦術を導入した。多くの選手が「新しいことが多かった」「新鮮だった」と戸惑っていた。

 まだ完璧ではなかったが、これまで培ってきた“オシム&岡田の財産”を活かして守りきった。GK川島永嗣(リールス)は「監督の言うとおりにやるだけではなく、自分たちで判断することが大事。ラインをどうコンパクトにするかとか、試合の中で話し合いながらできた」と新監督の戦術に加えて、自分たちの“応用力”が活かされたことを明かした。

 ただ今回の完封劇は、ザック流の守備戦術が100パーセント、機能したからではないようだ。内田は「向こうの攻めが中、中だったからはまった」といい、今野は「アルゼンチンが全部、中へ中へ来てくれたので、的を絞りやすかった。(左FWの)テベスとかも中へ入ってきてくれた。ワイドに(サイドから)来られてたら分からなかった」という。つまり、日本が固めていた“中央のワナ”に、アルゼンチンが勝手にはまってくれたというのだ。

 ザック流の新戦術で選手たちが一番戸惑っていたのは、SBが中に絞ることによってできる両サイドのスペースをどうするかだった。今回、アルゼンチンが先に失点し、焦りから中央突破ばかり狙ってきたため、この“サイド問題”にあまり直面しなかった。だからこそ試合後、今野ら全守備陣があまり満足感を示さなかった。

 「きょうの試合で良かったこと、悪かったことを整理して、また(韓国戦で)チャレンジしたい」と今野。最強アルゼンチンを封じ込めたことは自信になるが、“ザック流の新守備戦術”が本当に機能したかの判断は、12日の韓国戦(ソウル)に持ち越された。

<写真>堅い守備を見せたDF陣
(取材・文 近藤安弘)

TOP