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今季初先発の本山が絶妙ヒールで2アシスト、逆転Vの切り札に

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[10.24 J1第27節 鹿島2-0横浜FM カシマ]

 “ケガの巧妙”だった。FWマルキーニョスを累積警告で欠いた鹿島アントラーズはこれまでの2トップから4-2-3-1に変更。今季初先発となるMF本山雅志をトップ下に配置する新布陣を採用した。

 これが面白いようにはまった。バイタルエリアから相手最終ラインに近い位置に進入し、パスを呼び込む本山の動きに横浜FMの守備陣は対応し切れなかった。ボランチが下がるのか、CBが詰めるのか。一瞬のズレを逃さなかった。

 「CBがあんまり付いてこなくて、ボールをもらった瞬間に寄せてくるので、そこのギャップをどう使うかを考えていた。今週の紅白戦でもかなりやっていたし、イメージはつかめていた。寄せてくると予測してスペースを使う。(興梠)慎三が間を取ってくれるからどっちつかずになるところがあった。向こうは一瞬の判断で迷うだろうと思っていた。サッカーの原理ですね」

 本山の“読み勝ち”。それに加えて、イメージをピッチ上で具現化するテクニックも持ち合わせていた。2アシストはいずれもヒールキック。前半36分、左サイドのDFジウトンから中央でパスを受けると、右足ヒールでPA内左サイドにラストパスを通し、FW興梠慎三が角度のない位置から左足で流し込んだ。その3分後にはPA手前でMF小笠原満男からの縦パスをダイレクトのヒールキックで流し、興梠が右足で2点目。抜群のコンビネーションで電光石火の2ゴールを奪った。

 興梠にとっては、8月14日のF東京戦(1-1)以来、実に9試合ぶりのゴールだった。最近8試合はチームとしてもなかなか2点目を決め切ることができず、5試合が1-1ドロー。優勝争いの真っ只中で勝ち点を取りこぼし、名古屋から徐々に引き離されていくチーム状況の中、責任を痛感していた。

 「モトさん(本山)にパスが入った瞬間に動き出そうと思っていた。パスが出てくるイメージはずっと持っていたし、上手く点が入って良かった。2点目はシュートを打ってくれというようなボールを出してくれたので、思い切り打った。1トップにもそんなに違和感はなかったし、トップ下にモトさんが入ることでボールがすごく出てくるのは練習から分かっていたので、やりやすかった」

 本山のパス出しに感謝しきりだった興梠に対し本山は「(興梠)慎三の得点だよ。慎三の動きとゴール奪取能力が高いから。慎三の決定力の高さだと思う」と手放しで称えた。「みんなシュートを決められない、決められないと言うから。決めてくれてよかった」。8試合連続無得点と苦しんでいた後輩を思っての言葉。殊勲の2アシストにも、2得点の興梠を持ち上げ続けたのは本山らしい心遣いだった。

 連続ドローを3試合で止める4試合ぶりの勝利。首位名古屋との勝ち点差8を保った。次節の新潟戦を終えれば、11月7日には名古屋との直接対決を控える。追撃ムードは高まった。

 新潟戦ではマルキーニョスが出場停止から復帰する。1トップを継続するのか、4-4-2に戻して本山をサイドに置くのか、それとも本山は従来通りスーパーサブとして起用していくのか。

 オリヴェイラ監督は「対戦相手の狙いや弱点を分析しないといけない。選手のコンディションもある。(興梠、本山、マルキーニョスの)3人がいい状態なら、3人が出る可能性もある。チームに最良な選択をしたい」と話すにとどまったが、チームとしてオプションが増えたのは心強い。「どんな使われ方になっても、効果的なプレーをしたい」と本山。背番号10が逆転Vへの切り札となるのは間違いない。

<写真>鹿島MF本山
(取材・文 西山紘平)

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