beacon

『テセ通信-次なる夢に向かって-』(vol.4=12月8日)

このエントリーをはてなブックマークに追加

『テセ通信-次なる夢に向かって-』
(vol.4=12月8日)
川崎Fからドイツ2部のボーフムに移籍した北朝鮮代表FW鄭大世選手のコラム『テセ通信-次なる夢に向かって-』がスタートしました。リーグ戦の奮戦記を中心に、鄭大世選手の“今”をお伝えします。お楽しみください。

●12月6日
ウニオン・ベルリン戦(アウェー)

 ドイツ2部リーグのボーフムに所属する北朝鮮代表FW鄭大世は6日、アウェーのウニオン・ベルリン戦に先発出場し、1-0勝利に貢献した。

 2トップの一角としてフル出場し、シュート5本を放つなど気を吐いた。無得点だったが、エースとして牽引し2連勝に貢献した。チームは7勝1分7敗で現在9位につけている。

以下、鄭大世コメント

―チームは1-0で2連勝。どんな気分でしょうか? また、どんな試合内容だった教えてください。
 試合は前半からアウェーにも関わらず、こっちのペースで進めることができました。相手にシュートをほぼ打たせなかったし、僕もポストプレーを正確にこなせて、前を向いてスピードで勝負したり、いい流れをもたらすことができてました。そんな中でのポストプレーからの速いカウンターで、キャプテン・ダブロフスキの先制点を呼び込む事ができました。

 でも、ハーフタイムで選手同士のいざこざで雰囲気が悪くなり、後半は終止、決定機を作られ続けました。危なかったですが、相手の決定力のなさに助けられ、無失点で試合を終えることができました。

 今年からこのチームに加入して感じてるのは、チーム全体の安定感の無さです。僕自身も日本でも良し悪しの差が大きく、自分を顧みることも多いですが、ボーフムも良い試合をしても、次の試合では信じられないぐらい、決定的な場面を一度も作れないまま終わったりする事が続いてました。

 どんなチームでも気持ちが入ってる時は良い試合を出来るのが当たり前ですが、精神的に100%になりきれない時はシーズンを戦う中で何度もあると思います。でも、その時にどれだけ安定したパフォーマンスをできるかが、そのチームが上に行くか行かないかの決定的な差だと思います。

 そんな不満と不安を抱く中、今回の2連勝は若い力が大きくチームの雰囲気を変え、みんなが新鮮な気持ちで試合に挑めたために結果に繋がってると思います。そしてシーズン前半は残り2試合ですが、昇格に向かって少しでも上に近づけるようにしたいです。


―テセ選手は5本のシュート放ったそうですが、状態はどうですか? どんなことを意識してプレーしましたか?
 今週も膝の痛みで、8日間ある試合までの間の期間で、5日を休んでいてコンディションはかなり悪かったです。アップでも信じられないぐらい息切れしていたので、試合の心配が募るばかりした。

 ただ、ここで体力をセーブして90分を考えて戦ったら、また低調なパフォーマンスのまま終わってしまうという不安があったので、とにかく前半45分間ですべてを出し切ろうと思いました。

 ですが、そんな心配もどこ吹く風で、立ち上がりから体のキレが良く、相手をスピードで抜きさる場面も多々ありました。前半で唯一のチャンスは、相手を3人ほど抜きゴール前まで行ったシーンです。上手く交わせたんですけど、シュート時に、取り替えスパイクのかかとの部分が地面をとらえず、滑ってチャンスを逃してました。取り替えを吐いたのにすべるなんて皮肉な話です……。

 後半は攻め入られるも、効果的なカウンターで相手ゴールを脅かせました。でも、最後のところで踏ん張りが利かずに強いシュートが打てず、枠をとらえながらゴールを決められませんでした。最後のところでコンディション不足が露呈したかなと思います。距離は遠かったものの、決定機にはかわりないので本当に悔しいです。試合後もトレーナーに「お前が決めてれば試合は終わってた」って愚痴られる始末でした。


―チームは上り調子にあります。自軍の課題や相手を分析しつつ、次の試合の意気込みを教えてください。
 次の相手はオスナブリュックというチーム(12日)です。現在14位のチームですが、これまでの戦いを見て分かっているのは下位のチームは何かと隙が多いのでチャンスも増えるかなと思っています。それに次節はホーム戦なのでサポーターの後押しも受けながら攻撃的に、前線からプレッシャーをかけながらショートカウンターを繰り返せそうです。

 ただボーフムは奇妙な事に、ホームに弱いという状況にあります。非常に滑稽なんですが、信じられないほどブーイングの多いサポーターに起因してるのは間違いありません。でも、ブーイングされるような試合内容なのも事実。2連勝と波に乗っているのでサポーターに歓喜をプレゼントすべく勝ち点3をゲットします!


P・S
 最近このコラムを始めるようになって日記を付けるようにしてます。目的は将来ヨーロッパで言葉が通じない中でプレーしていたことを振り返って、思い出を懐かしもうというものです。
 前文でも書きましたが、選手同士のいざこざというのは、実はぼくなんです。日本でも代表でもこっちでもやはり、我を出しすぎると、敵を作る事になります。
 フロンターレの初期のころはチームのため、チームのためという一心でプレーしてたので、得点王という欲はさほどありませんでした。でも、レギュラーが安定してくると、どうしても自分の得点欲に走ってしまう悪い癖があります。
 だからジュニーニョとのPKでの揉め事だったり、代表での選手との揉め事だったり、今回の選手同士の揉め事(今回は欲とは関係ありません)……FWはそれぐらいの性格でいいんだと言ってしまえばそれでおしまいですが、今までそう自分に言い聞かせていた部分もあります。でも最近はごまかせなくなって、あまりにも同じミスを繰り返すので、自分と向き合わなければいけないと思います。
 そんな中で読んだのが三浦知良さんのあるコラムでした。何歳になっても、ランニングの時もダッシュの時も先頭を走り、練習は手を抜く事なく、試合でもチームのために前線からチェイシングをする-、というものでした。
 今の自分の悩みにはピッタリで、このまま続けようものならきっとチームでも孤立し、長く現役を続けられなくなるかなと思っています。でも、良さは良さで消してはいけないとも思ってます。とはいえチームの一体感は大事なこと。ゴールに対して貪欲なのは片隅に置いといて、チームに対する犠牲精神を軸にして、これからやっていきたいと思います。


[写真]ウニオン・ベルリン戦で体を張ってポストプレーをする鄭大世

☆鄭大世ブログアドレス
http://ameblo.jp/jongtaese9/

(構成 近藤安弘)

TOP