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[選手権]初Vへ!滝川二が最難関・青森山田を突破!

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[1.3 全国高校選手権3回戦 滝川二2-0青森山田 西が丘]

 第89回全国高校サッカー選手権は3日に3回戦を行い、東京・西が丘サッカー場の第1試合では今夏の全国高校総体準優勝の滝川二と昨年度全国選手権準優勝の青森山田(青森)が対戦。FW樋口寛規(3年)の先制ゴールなどにより2-0で勝った滝川二が2年ぶりとなる準々決勝へ進出した。滝川二は5日の準々決勝で日章学園(宮崎)と戦う。

 勝者・滝川二のFW浜口孝太主将(3年)は「(柴崎)岳と試合できるねんゾ!、と。みんな胸借りるつもりで気合を込めていた」と5分間の後半ロスタイムを経て勝ちきった試合を満面の笑みで振り返った。対戦相手の青森山田は鹿島アントラーズ加入内定のMF柴崎岳主将(3年)や清水エスパルス加入内定のGK櫛引政敏(3年)を擁する注目チーム。全国高校総体準優勝チームの滝川二だが、この試合に関しては高校ナンバー1MFと評価される柴崎主将擁する青森山田を格上としてとらえ、普段とは違うやや守備的なスタイルでチャレンジャーとして全力で相手に挑みかかった。

 ここまでの2試合、出場校中トップの10得点を挙げている滝川二だったが、試合前に栫裕保監督から強調された指示は「攻めたければまず守れ。11人で守ればチャンスは出てくる」ということだった。立ち上がりからボールを持っていたのは柴崎主将と2年生MF差波優人中心にボールをつないでくる青森山田。簡単にボールを失うことは決してしない青森山田は相手の寄せが少しでも緩ければボールを確実にコントロールし、柴崎主将を経由したボールはサイドやDFの背後へと送られ、滝川二の最終ラインにプレッシャーをかけた。

 ただ先に試合を動かしたのは滝川二だった。前半10分、負傷を抱えながら強行先発した樋口が中央から右サイドへ展開。これを受けたMF本城信晴(3年)がPAへ向けて走りこんだ樋口へパスを通すとトラップでDF2人の間を抜けようとした樋口が強引にGKと1対1となり、そのまま右足シュートをゴール左隅へ流し込んだ。

 青森山田はDFに跳ね返ったボールが「夢中で体でいった」樋口の手に当たったように見えたことについて抗議。試合後、マッチコミッショナーの山田正氏も「手に当たっていたことは確認できた。それが故意であるかどうかはレフリーの判断」と認めたが、窪田陽輔主審ら審判団は「(当たったことについて)見極められなかった」とハンドはなかったと判断し、そのまま先制ゴールとして試合を続行した。

 不運な失点を取り返すため、攻撃姿勢を強めた青森山田。22分にはPA左角付近から柴崎主将が右足で狙った弾道の低い直接FKがゴール右ポストをかすめ、その後もFW橘一輝(3年)がPAから放ったシュートなどによってゴールを襲い続ける。だが、常に相手のキーマン・柴崎主将を射程圏内に置き続けたMF谷口智紀とMF香川勇気(3年)のダブルボランチら滝川二はCB土師直大(3年)を中心とした最終ラインも粘り、得点を許さない。

 高い守備意識を持ち、攻撃はカウンターに徹した滝川二に対して青森山田は後半4分、右クロスがファーサイドのゴール手前に位置したMF三田尚希(3年)へ通る。だが、左足シュートはポストを直撃。7分、滝川二のサイド攻撃から香川に放たれた決定的なシュートがポストに救われると、その後は何とか同点に追いつこうとしたが、柴崎主将からのスルーパスを警戒する滝川二DFから決定的なチャンスを作り出すことができない。31分には意を決した柴崎主将が自らドリブルシュートへ持ち込むなど敵陣PA近くでのプレーを続けたものの、滝川二の集中力は最後まで高く、その壁は崩れなかった。

 5分が提示された後半ロスタイム、最後の望みをかけて攻める青森山田はDFの人数を削って攻撃に出るが、逆にカウンターから右サイドを抜け出した滝川二SB濱田量也(3年)のラストパスが青森山田DFのオウンゴールを誘い、2-0。そして終了のホイッスルが鳴り響くと「(青森県民の方々の)期待に応えられなくて申し訳ない」と座り込んだ柴崎主将ら青森山田イレブンのとなりで、滝川二は喜びを爆発させた。

 優勝候補を撃破。香川と二人がかりで高校ナンバー1MFを完封した谷口は「80分通して集中力を崩さず前から我慢強く守備できたのでゼロに抑えられた。全国トップレベルの相手を抑えられたのは自信になった」。3戦12発の破壊力だけでなく、2試合連続で失点するなどやや不安視されていた守りでも成果を示した滝川二が初の決勝進出、初優勝へ向けて最難関を突破した。

[写真]喜びを爆発させる滝川二イレブンの隣で座り込む青森山田・柴崎主将(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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