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[選手権]流通経済大柏が逆転で“新旧王者対決”を制す

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[1.5 全国高校選手権準々決勝 山梨学院1-2流通経済大柏 フクアリ]

 第89回全国高校サッカー選手権は5日、準々決勝を行い、フクダ電子アリーナでは流通経済大柏(千葉)が前回王者・山梨学院(山梨)に2-1で逆転勝ちし、初優勝した07年度大会以来、3大会ぶりのベスト4進出を決めた。8日の準決勝では久御山(京都)と対戦する。

 「用心過ぎたのか、入り方が良くなかった」。流通経済大柏の本田裕一郎監督が試合後に振り返った通り、立ち上がりは前回王者がペースを握った。司令塔のMF白崎凌兵(2年)に対しマンツーマンマークを付けられた山梨学院だが、「うちは何をやられても11人でサッカーをする。そこを逆手に取ってやろうと思った」(吉永一明監督)と、マンツーマンマークを敷くことで生まれるギャップを上手く突き、攻撃を仕掛けた。

 前半4分には左サイドを突破したMF長谷川紫貴(3年)の折り返しをフリーになった白崎が受け、右足でシュート。これはDFのブロックに阻まれたが、同17分にも白崎の左CKのこぼれ球を長谷川がつなぎ、DF大黒貴哉(3年)が左足で狙った。さらに同24分、高い位置でボールを奪ったFW加部未蘭が右サイドのスペースにスルーパス。走り込んだMF堤建太(3年)がゴール前に折り返し、ファーサイドに流れてきたボールを白崎が拾って右足で狙ったが、またもDFが体を張って防いだ。

 立て続けに訪れたチャンスを生かせなかったが、前半27分、相手陣内で白崎がボールを奪い、左サイドに開いた長谷川に預ける。長谷川からパスを受けた加部は力強いドリブル突破でスライディングタックルに来たDF増田繁人(3年)もかわし、豪快な右足シュートでゴールを破った。待望の先制点。ところが、この2分後に予期せぬ事態が起きた。

 前半29分、流通経済大柏はFKからゴール前に放り込むと、混戦の中、山梨学院の大黒がこぼれ球を大きくクリアしようとした。すると、これが目の前にいたFW宮本拓弥(2年)の顔面を直撃。跳ね返ったボールはそのままゴール右隅に吸い込まれた。

 本田監督は「あのスーパーゴールで楽になったんじゃないかな」と冗談交じりに言ったが、それまでチャンスらしいチャンスのなかった流通経済大柏にとって、これ以上ない“ラッキーパンチ”。逆に山梨学院にとっては、あまりにも不運な痛すぎる失点だった。

 前半21分に早くもFW田宮諒(3年)を投入していた流通経済大柏は同点から2分後の31分、左足小指を骨折しているMF吉田眞紀人(3年)もピッチに送り込んだ。「追い付いてもあまり流れが良くなかった。彼(吉田)が入ると、流れが変わりますから。吉田と田宮の相性もいいので」と本田監督。意気消沈する相手の隙を逃さず、ここぞとばかりにたたみかける。ここから試合は流通経済大柏の一方的な展開となった。

 前半32分にはMF富田湧也(3年)のミドルシュートがわずかにゴール上に外れ、同36分には吉田の右足シュートがクロスバーを直撃した。山梨学院も前半40分にカウンターからチャンスをつくり、白崎のスルーパスに右サイドを抜け出した加部がゴールライン際でDF2人をかわして左足を振り抜く。決定的な場面だったが、ゴール左へ。結局、これが山梨学院にとって最後のシュートとなった。

 後半の40分間は流通経済大柏が完全に中盤を支配した。抜群のキープ力で攻撃の起点となる吉田を中心に攻勢を強め、相手を押し込む。山梨学院も粘り強く守っていたが、失点は時間の問題だった。後半26分、富田とのワンツーから吉田が骨折している左足を振り抜く強烈なミドルシュート。これはゴール右に外れたが、同33分、ついに勝ち越しゴールが生まれた。

 セットプレーのこぼれ球を拾った宮本が左サイドを縦に仕掛け、ゴールラインぎりぎりからクロス。ファーサイドの増田が頭で折り返すと、ゴール正面で胸トラップした田宮が右足で豪快なジャンピングボレーを放ち、ゴール左隅に突き刺した。

 結局、これが決勝点に。“新旧王者対決”を逆転で制した流通経済大柏が国立への切符を手にした。後半の被シュートは0本。山梨学院の連覇を阻む文句なしの完勝で、その力を見せ付けた。「勝てば国立というベスト8はひとつのヤマだった。これから先は選手の力も抜けて、もっと良くなると思う」と本田監督は言う。尻上がりに調子を上げてきた優勝候補筆頭。3大会ぶり2度目の頂点が見えてきた。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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