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1/30・31決勝一夜明け&帰国後のA代表選手コメント

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 2大会ぶり4度目のアジア杯優勝を果たした日本代表は31日、成田空港着と関西空港着の2便に分かれて帰国した。決勝から一夜明けた30日はドーハ市内の宿舎で、帰国後には成田市内のホテルで選手が取材に対応した。
以下、30、31日の選手コメント

[30日のコメント]
●FW李忠成(広島)
―決勝から一夜明けて今の心境は?
「昨日はうれしすぎて実感がなくて、自分のゴール、アジア杯の優勝をかみ締めることができなかった。時間がたって、ゆっくりして、ほんとにすごいことをしたんだなと思った」
―これからが大事?
「まずはJリーグでコンスタントに試合に出ないといけない。広島でスタメンを張るのは簡単じゃない。まずスタメンを取って、Jリーグにコンスタントに出て、点を取らないとアピールできない。去年みたいに1試合1点取ることを開幕からやっていきたい」
―課題も見えた?
「課題は山積み。代表に初めて来て、遠藤さんがあそこまで上手いとは思ってなかった。(本田)圭佑も岡崎もオリンピックのころより上手くなっていたり、刺激をもらったし、もっともっとやらないとと思った」
―どこが上手いと思った?
「ボールを取られないことがベースになっている。落ち着きもあるし」
―ゴールシーンは得意な形だった?
「左利きだし、昔から得意なタイミングだった。ほんと決められてよかった。完全にフリーだったし、もし外していたら今頃……。いろいろ考えるとゾッとする」
―動き出しのフェイントが良かった。
「ほんのちょっとであんな食いつくとは思わなかった。あの動きでマークを外せたし、あの動きで0.5点ぐらい取れた。相手も疲れていたんだと思う。ピッチに入ってファーストタッチも遠藤さんから裏にもらって抜け出したけど、相手の足が止まっているから抜けられたと思う」
―昨日は眠れた?
「睡眠時間は2時間ぐらい。(午前)7時ぐらいまで起きていた。YouTubeで自分のプレーをずっと見てました。すげーなって。何度見ても飽きないなって。人生は怖いなって思った。本当に紙一重。もし、あと1cm、甲の下にいってたらダフッていたかもしれない。よく打ったなと。第3者的にほめたいです」
―トラップしようと思わなかった?
「ボールが弧を描く頂点のとき、自分の中で時間が止まった。どっちにしようと思って、トラップしようとも考えたけど、変な感じがした。でも、ダイレクトで打って、外したらまずいなって。あの短時間でそれだけ考えた」
―思い切ったプレーが功を奏した。
「途中から出て、遠慮するのはよくないと思った。大会の初日に自分がスタメンじゃないことが分かったときから、ラッキーボーイにならないといけないと思っていた。優勝にラッキーボーイは不可欠。『俺はヒーローになる、ヒーローになる』と毎日、心の中で思っていた」
―左足ボレーは昔から練習していた?
「小学1年生ぐらいのころからおばあちゃんにボールを手で投げてもらって、1時間ぐらいずっとボレーシュートの練習をしていた。小学3年生のときに一度、おばあちゃんに当てちゃったこともあったんだけど、本当に感謝している。おばあちゃんのおかげです」
―いろんな経験を乗り越えてここまで来た。
「俺はエリートでもないし、自分で道を切り開いていかないといけない立場にずっといた。結果を出さないといけないし、結果は覆せない。FWとして、そこを追求しないといけないし、これからも結果で道を切り開いていきたい」

●FW前田遼一(磐田)
―大会を振り返ると?
「個人的には悔しさの方が大きい。決勝もですけど、他の試合も」
―一番悔いの残る場面は?
「決勝が一番悔しい思いをしたけど、それ以外の試合も悔しい思いをした。これを財産にできるように頑張りたい」
―7月にはコパ・アメリカもあるが?
「今はそのメンバーに入るためにJリーグで頑張って、今回のアジア杯以上のプレーができるようにしたい」
―スタメン定着への足がかりの大会になった?
「全然。Jリーグで結果を出さないと、次も呼ばれないと思っている」
―監督の信頼を得られたのでは?
「まだそんな信頼を完全に得たとは思わない」
―手応えは?
「3点取れたことはよかった。サウジ戦で取れて、相手は相手だったけど、それはよかった」
―課題は?
「最後のところで抜けなかったり、シュートを打てなかったり。そこができる選手になりたい」
―監督にアピールはできた?
「逆にダメなところをいっぱい見せたような感じ。それが今の実力です」
―監督は決勝で前田選手を交代させるとき、守備で貢献してくれていた前田選手を下げるのはリスクがあったと言っていたが?
「FWで守備のことをほめられるのは好きじゃない。いくら守備をしても、ゴールを決めなかったら信頼されない」

●MF本田圭佑(CSKAモスクワ)
―トップ下でプレーして、ここがやっぱり自分のポジションだなと思った?
「思いましたね。やっぱりあそこで自分を磨きたいなと。個人的に楽しいし、ボランチが2人後ろにいる居心地の良さは全然違う。これが1人だと違う。トップだとスピードが足りないし、俺がもっと足が速ければトップでありたいと思うけど、その間のところというか」
―自分のプレーを出し切れなかった思いは?
「自分が目指すべき姿に一歩でも近づくトライを全試合でしたかった。強引にいく場面をどこで増やすかをテーマにしていた。どこでファーストタッチでスピードを上げるか。取られるかもしれないけど、フェイントを入れて持っていってシュートで終わる。そういうリスクを負ったプレーがすごい少なかった。それが不本意だった」
―できなかった理由は?
「それを出したらチームのマイナスになると感じたんでしょうね。あの位置からゴールを目指すようになりたい。スタートの位置は低めでいい。あそこでスピードアップして、ボランチからスルーパスをもらって。そのイメージは自分の中でできてきた。でも、明日からチームに合流すると全然違う。そのギャップをどこで妥協して、どう成長していくか。自分の中で整理して、コントロールしないといけない」
―クラブでボランチをやったことで、パス出しや守備など幅も広がったのでは?
「それは今まで俺をちゃんと見てなかったから。俺は昔からディフェンスもしていたし、パスも出していた。あえていろんなことをやっていた。そういう意味で自分を貫けなかったことが不本意。器用な自分が嫌なんですよ。それだと成長するスピードが日本人のまま。日本人のままではダメで、それを感じているから悔しかった。優勝できたことだけが救い」
―メリハリを付けたプレーがしたかった?
「それが足りなかった。ギアチェンジの幅が足りなかった。(大会が)上に行けば行くほど、後半になると出せなくなったり、もう1歩、2歩でも俺も周りもレベルを上げないと、きれいなゴールは生まれない」
―アジア杯の難しさも感じた?
「それさえ分からない。アジア杯が初めてだったから。それでもアジア杯に入る前にアジア杯のイメージを自分の中でつくるわけで。当たり前だけど、そこには誤差がある。決勝もイメージしていたけど、前日の過ごし方、当日の過ごし方で、想定していたものと幅が広くて。緊張しているなというのも感じた。入れ込んでるなとか、自然な無口ではなく、緊張している無口だったり。でも、こんなもんなのかなと。優勝したこともないし、いろんな意味で自分に言い聞かせていた」
―代表の中心選手としての自覚も出てきた?
「代表で攻撃を仕切ることが夢でも何でもないし、自分を貫くこと、自分の周りを幸せにすることというのは変わらない。上手くなりたいし、強いやつに勝ちたい。世界中に認められたい。それを考えると、日本代表の本田圭佑のレベルは低い。アジア杯に優勝しても、まだ何も成し遂げていない。ステップアップの場に過ぎない。そうでないと、本当の意味での夢、目標は果たせない」
―周囲の期待がどんどん高まる中でプレッシャーや戸惑いは?
「いろんなことを聞かれるんですね(笑)。それは人間だから、いろいろありますよ」
―満足感はない?
「俺の中で、プレーでの満足感と優勝での満足感は完全に分かれている。優勝して良かった。その一言に尽きる大会。だから、プレーのことはあんま聞かないでほしいんですよ(笑)。自分で何回も問いかけていることなので」
―ザックはやりやすい監督?
「イタリア人だし、最初は守備的になるのかなと思ったし、練習でも守備のことを言うことが多いけど、実際はそうじゃなくて。みんなの独創性を頼りにしているというか。『こうしろ』って言われたことは一度もない。もちろん守備の規律はあるけど、そういうやりやすさはある。試合に向かうメンタル的な支えになっている」

●MF遠藤保仁(G大阪)
―一夜明けて優勝を実感してきた?
「昨日の時点で優勝は実感できていた。それより疲れたなと。シーズンが終わってすぐで、きつい中でやった大会。大会中もサウジ戦以外は常に緊迫した展開で、そういうのも影響していると思う」
―チームを積極的に引っ張ってきたが?
「最年長だし、アジア杯を経験している選手も少ない中で、自分自身がプレーはもちろん、試合前に一声かけたり、積極的にコミュニケーションを取ろうと思っていた。充実した大会だった」
―プレー面で気をつけたことは?
「急がないように。相手は勢いで来る。それをそのまま勢いで返すより、自分たちのペースでやろうと、イケイケにならないことを心がけた」
―最年長で自覚も変わった?
「大きくは変わってないけど、代表のキャップ数も一番多いし、今までは(中澤)佑二や(楢崎)正剛、シュン(中村俊輔)がいて、その一歩後ろからという感じだった。自分がやらないとなというのは、この大会で思っていたし、若い選手を伸び伸びプレーさせたいなと思っていた」
―7月にはコパ・アメリカもあるが?
「特に守備の部分はオーストラリア戦、サウジ戦以外は失点しているし、セットプレー絡みも多い。相手には高い選手が多かったし、そのへんが課題。コンパクトにやるというのも前半は上手くいっても、後半はできなくなる試合もあった。チームが集まるのは先だけど、そのときしっかり修正したい」
―W杯のときより攻撃にスピード感が出た。
「前にキープできる選手が多いし、ピッチを広く使って相手との距離を遠ざけて、プレスをかけづらい状況にするというのが今大会はできた。しっかりパスをつないで、連動しながら攻める攻撃というのは相手にとっても怖い」
―監督就任から5ヵ月で優勝したが、南アフリカW杯での経験も生きた?
「南アを経験している選手もいるし、それも要因の1つだけど、今回は途中から入った選手が全員結果を出してくれた。それが一番だと思う。いい練習もできていたし、こうやって優勝できたことに価値がある」
―チームのベースとなる部分のレベルが高いから、さらに伸びしろもありそう?
「それは南アが大きい。監督が代わると、戦術がガラリと変わることもあるけど、ザックさんはそんな変えなかった。だから選手も入りやすかった」
―いろんな外国人監督の下でプレーしてきたが、ザックの特徴は?
「トルシエさんは独特で、だれが見ても分かりやすい。オシムさんもそうかな。ジーコに少し似ているところがあるかな。特別、驚きとかは自分の中でない」
―控えの選手を思い切りよく起用する。
「それは欧州の監督に多い。全員を信頼している証拠だと思う」

[31日のコメント]
●FW李忠成(広島)
「この素晴らしいチームでプレーできて本当に良かったし、伸びしろのあるチームだと思う。アジア杯優勝はゴールじゃないし、通過点。僕たちの目指している目標はもっと上。W杯を見据えている。これからコパ・アメリカとかで強いチームともやるし、選手は前を前を見ている」
―W杯に行きたい気持ちも強くなった?
「人間は欲が出るものだし、そういう思いが最初より強くなっているのは間違いない。4ヵ月前はベンチ外で大学生と練習試合をしていたんですから」

●MF柏木陽介(浦和)
―出番をうかがっているときの心境は?
「特に監督から何かを言われているということもなかったし、いつも自分らしい準備をしようと思っていた。練習もレギュラーとサブを混ぜてのものが多かったので、モチベーションもうまく保てた」
―帰国して、今の心境は?
「試合にあまり出られなかったことは悔しいけど、上手い選手の中でやることで自分がレベルアップするということを感じられた。次にピッチに立ったとき、力を出せるように、これからはレッズで頑張っていきたい」
―課題は?
「個人的に足りないものはいっぱいあった。向上心が欠けていたのかなと感じた」
―決勝では広島の李選手がヒーローになったが?
「チュンくん、意識が飛んでいるような目をしていたからね、あれ(矢を射るパフォーマンス)をやるなと思って見ていた。自分も出られるように準備していたけど、おいしいところを持っていかれた。でもいい刺激になる。次、ああいう大舞台で自分がヒーローになれるようにしたい」

●DF今野泰幸(F東京)
―決勝では久しぶりに左SBでもプレーしたが?
「ごまかしながらやってましたけど。自分が仕掛けてセンタリングで得点に絡むというのは全然考えてなかった。(長友)佑都をサポートしながら、まず守備からと考えていた」
―高さに課題も残った?
「それはJリーグでも感じることだし、俺は俺のやり方がある。前半は高さからシュートを打たれていたけど、後半は相手に触らせず、ゴールラインを割らせたりもできていた。他の試合もセンタリングからドカンと合わせられたというのはない。ヘディングを強くすることも1つだけど、俺は違う道を進む。ケーヒルと競って、ゴールラインを割らせた場面もあった。それは俺の勝ちだと思っている」
―今後、闘莉王や中澤というCBと競争することになるかもしれないが?
「それぞれ特徴が違うし、俺は俺の特徴を生かしたい。自分の特徴を出していきたいと思っている」
―今季はJ2での戦いとなるが?
「練習でもできるし、考えてやればサッカーは絶対上手くなるし、年齢が上がっても上手くなると思っている」

●DF岩政大樹(鹿島)
―帰国したが、疲れは?
「疲れはあるけど、これから休めるので。終わったら急に痛みが出てきたり、体は正直だなと」
―しばらくはオフだが?
「ゼロックスが近いし、ACLもある。ただ、スタートにベストに持っていくことも大事だけど、自分の中では1シーズン通してやれることが大事。休むところと動くところのバランスを上手くやりたい。ただ、W杯から休みないし、多少は思い切り休もうかなと思っている」
―優勝の要因は?
「ピッチ外のことを分析するつもりはないし、分からない。W杯のときもミーティングのこととかを周りはいろいろ言うけど、1つの勝利というのが大きい。W杯の初戦もそうだし、今回もカタール戦の勝利で結束力だったり、チーム内の信頼感が出たりする。トーナメントの1試合目や2試合目で厳しい試合をしたチームが優勝に近づくという法則が自分の中にある。今回もそれに当たったと思う」

●DF永田充(浦和)
―追加招集で出番も限られていたが、収穫は?
「いい経験ができた。呼んでもらってよかった。自分のチームが優勝したのは初めてのことだったのでうれしい」
―日本がこの先、成長するためには?
「もっと強豪国を倒す力を付けていけば、もっとよくなると思う」
―大会でどういうところが成長した?
「選手が意見を出したり、10人になったときに追いついたりという力が付いていた。すごくまとまっていると感じながらやっていた」
―優勝した要因は?
「団結力。1試合目が終わって、監督から『試合に入る集中力がないのでは』と言われた。2試合目から集中力を持ってやれた。監督が厳しく言ってくれたことでそうなったと思う」
―今後の目標は?
「僕はチームが(新潟から浦和へ)変わるので、新しいチームでアピールして、また呼ばれるようにしたい」
―帰国して、疲れは?
「試合にあまり出ていないし、体力的には疲れはない。一致団結して戦うことができたし、個人としては球際のところがまだ足りないと思った反面、自信を持ってやれるプレーもあると感じた」
―この後は?
「(1月)28日に1人目の子供が生まれたので、今から病院に行く。3040グラムの女の子。ヤットさん(遠藤)と同じ誕生日です。名前はまだ決めていないです」

(取材・文 西山紘平、矢内由美子)

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