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「また少年たちにサッカーを始めてもらいたい」。小笠原がサッカー復興のためカズや俊輔に協力を要請

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 「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!」で日本代表と対戦するJリーグ選抜は28日、試合会場の長居スタジアムで前日練習を行った。岩手県盛岡市出身で、津波被害が大きかった同県大船渡市にある大船渡高出身のMF小笠原満男(鹿島)は、子供たちがもう一度サッカーをできるように環境整備を支援したいと明かし、カズや俊輔ら日本サッカー界の牽引者たちに協力を呼び掛けた。

「チャリティーマッチとか、オークションをやって得たお金は、赤十字とかを通して国全般に行っているけど、それを(復興支援が)だいぶ落ち着いたら、サッカーの復興に(お金を)かけていきたい。カズさんとか俊輔、中澤佑二も賛同してくれた。また少年たちにサッカーを始めてもらいたいし、それにはグラウンドが必要。そのためにはお金が必要なので」

 この日、Jリーグ選抜は募金活動を行ったが、小笠原も訪れた人たちに丁寧に対応し、感謝の気持ちを表すとともに、支援を呼び掛けた。関西の子供たちの元気な姿を見るたびに、脳裏に浮かんだんのは、被災地の子供たちの姿だったかもしれない。家を失い、当然、ボールやスパイクもない。サッカーをしたくてもできない少年少女たち……。被災地で目の当たりにした現実だった。

 小笠原は震災発生後、大船渡市や同じく津波被害の大きく、夫人の故郷でもある岩手県陸前高田市の避難所などを訪問した。同郷の人たちを激励しながら、どんな支援が必要なのかを聞いて回った。食べ物や水、衣類などの生活必需品をはじめとする物資の重要性を感じ、すでに物質を送っている、少年たちが大好きなサッカーをやれなくなった現状に心を痛めていた。

 津波の被害でグラウンドはなくなり、ボールもスパイクもなくなった。サッカーどころの雰囲気ではない。そんな子供たちに「サッカーを頑張ってください」といわれるたびに、物資の支援だけでなく、自分を育ててくれたサッカーに関して、何か支援をしたくなったという。

 さっそく、行動に移した。27日に大阪市内に集合したが、小笠原は元日本代表FW三浦知良ら仲間たちに協力を呼び掛けた。カズが明かす。「今回、小笠原と一番話をした。彼は向こうに行って現状を見てきて、そういうことを伝えてくれた。特に子供のことを心配していた。サッカーをやりたくてもグラウンドがないし、当然、ボールもスパイクもない。子供のサッカークラブがどんどん潰れて行くんじゃないかと行っていた。サッカー少年たちを助けたいと言っている」。

 小笠原の言葉に、カズも心を動かされた。28日の朝、日本サッカー協会の小倉純二会長がJリーグ選抜の宿舎を訪れ、選手たちを激励したが、そのあとにカズは小倉会長を呼び止め、小笠原の支援計画を伝えて協力をお願いした。「日本サッカー協会、東北のサッカー協会とか、いろんな協会と協力して、いろいろとやっていけたらと話した。今回は大阪でやれることになったけど、時間がたてば、少しずつ(被災地の)近くでできるようになるといいと思う」とカズは、今後、東北地方でチャリティーマッチを行うプランなどを話し合ったことを明かした。

 小倉会長も「小笠原は実際に現地に行って、想像以上だったいっていた。選手たちは、サッカーボールを持っていくとか、サッカー教室を開くとか、カズも含めていろいろと考えていた。協会としてもどう応えられるか。対策本部もある」と小笠原やカズの提案に協力を約束した。

「みんなに楽しくやっている姿を見せられたらと思う。僕らが苦しそうにやっても意味がない。僕らが良い話題を提供できればと思う。やるからには勝ちたいと思います」と今回の試合への意気込みを語った小笠原。被災地支援に時間を割いたため、小笠原は練習をほとんどできておらず、コンディションは万全ではないが、言い訳はしない。あくまでも被災者のために全力でプレーし、少しでも元気づけたい気持ちでいっぱいだ。

 いつもは口数が少ない小笠原だが、テレビメディアの取材に対して、最後に自ら異例のお願いをした。「被災地ではテレビを見えない人がけっこう多い。電気もなくて、テレビもない人がいる。できるだけ多くの人に見てもらえるように、体制を整えてもらえたらと思います。何か考えてもらって、できれば協力してください。避難所に小さなテレビを持ち込むとか……。まだ電気もないし、家もテレビもないひとがいっぱいいます。よろしくお願いします」-。目を赤くし、必死の思いで呼び掛けてた。チャリティーマッチだけに終わらず、小笠原はこれからのサッカー人生を故郷のために捧げる。

[写真]募金活動を行った小笠原。今後は被災地のサッカー少年たちの支援を目指す

(取材・文 近藤安弘)

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