beacon

仙台イレブン、マルキーニョス退団を理解。さっそく新戦術に着手

このエントリーをはてなブックマークに追加
 エースの突然の退団。しかし、ベガルタ仙台イレブンは動揺を見せず、強い気持ちでこの日の対外試合2試合(東洋大1-0○、流通経済大4-1○)を戦った。9日の朝に突然告げられたFWマルキーニョスの離脱に、選手たちは最初はみんな驚き、耳を疑ったそうだが、退団せざるおえない状況や本人の気持ちも理解したという。

 司令塔のMF梁勇基は「自分が逆の立場だと考えたら、当然、不安があると思う。世界的に見ても本当に大きな地震だったので、仕方がないかなと思う。マルキーニョスの気持ちも十分わかる」とかばった。MF関口訓充は「マルキからごめんね、力になれなくてと言われた。マルキの悔しい気持ちも持って、今年は戦いたと思う」と話し、逆にエースの無念も背負って今シーズンを戦うことを決意した。他の多くの選手も思いは同じで、気持ちを切り替えようとしているという。

 マルキーニョスは3月11日の震災後一度はブラジルに戻ったが、しっかりと現地で自主トレを積んで、4日から始まった千葉・市原キャンプから合流した。家族らの心配を振り切って再来日したわけだが、しかし、7日深夜に再び震度6強の地震が仙台を襲い、状況が大きく変わった。ブラジルの家族らは一層不安になり、帰国を強く望んだという。悩んだ末に日本を離れる決断を下した。

 手倉森誠監督は「彼は簡単に帰ったというわけではない。思い悩んだ末での決断だった。彼が仙台でプレーしたかったのは、確かなこと」と思いやった。そして、「選手には、マルキがいたのは短い期間だったかもしれないが、チームに落とし込んだもの(好影響を与えたもの)は確かにある。それをシーズン通して、自分たちが運んで行こうという話をした」という。これに選手たちも同調した。指揮官は「きのう(9日)からマルキニョス不在の練習だったけど、逆にチームがまとまらなければいけないという気持ちが出ていた」と選手たちを称えた。

 マルキーニョスが不在の中で迎える23日のJ再開・川崎F戦(等々力)。そこに向け、この日の練習試合、1試合目の東洋大戦では4-5-1の新システムを試した。「去年の暮れにマルキーニョスの入団が決まる前までに、描いていたものがあった。そのために中盤を厚く補強した部分もある。手応え? もう少し続ける必要があると感じましたね。きょうやったばかりですから。きょうは、選手の中に意識が芽生えればと思った。マルキーニョスが外れたことで、より中盤の選手にチャンスがあるということを分からせたかったし、FW陣には1トップになる可能性もあるんだなと分からせたかった」と手倉森監督は説明した。

 新システムについて関口は「まだまだ、全然だめですね。自分としては、やりやすくはないです。2トップでマルキがいると、ボランチから自分にボールが入って、もう一度、縦に(マルキーニョスに)出せたけど、1トップだと出しにくい」と課題を口にした。とはいえ、「きょうやったことはムダじゃない。チームで良かった点、悪かった点を出していけば、良くなると思う」と前向きな姿勢も示した。

 4-2-3-1は昨年の一時期、取り組んだシステムでもあるし、考えようによっては、まだリーグ戦再開まで2週間弱あるともいえる。大変な作業であることは間違いないが、チームの特徴でもある前向きな姿勢を発揮し、この困難を乗り越えて見せるつもりだ。選手たちはこの苦境が“生みの苦しみ”となることを信じている。

(取材・文 近藤安弘)

TOP