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[プレミアリーグイースト]被災地・福島から参加の尚志「チャレンジしていこう」

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高円宮杯U-18サッカーリーグ2011 プレミアリーグ イースト
[5.15 高円宮杯プレミアリーグイースト第5節 浦和レッズユース5-0尚志高 NACK]

 NACKスタジアム5大宮のゴール裏スタンドには、尚志カラーのエンジに彩られた「がんばろう福島!がんばろう尚志!」の横断幕が掲げられていた。3月11日に発生した東日本大震災。福島第一原発の事故の深刻な被害を受ける福島県の尚志高は多くの苦難を抱えている状況下にあるが、Jリーグのクラブユース5チームも名を連ねる全国リーグ、高円宮杯プレミアリーグイーストに参戦して奮闘している。

 震災の影響により地元で練習を再開することができず、震災発生から約半月後の3月27日に仲村浩二監督の母校、習志野高(千葉)でようやく全国リーグへ向けて再始動することができた。「支えられていることを選手一人ひとりが知ることができた。ふつうにサッカーできることがどれほど幸せなことか分かった時期」と指揮官。それでも3月11日を境に「サッカーできて当たり前」だった環境は失われた。毎日2時間の練習時間は確保されているが、学校の位置する郡山市内は放射線量がやや高い値で推移していることもあり、常に警戒しながらの日々。放射性物質の混じった雨を懸念して屋外での練習を控える日もある。不安の声が上がるのは当然で、関東圏から入学した新1年生3人が安全面などを考慮して転校したという。

 それでも選手の安全面を最優先事項に置きながら尚志は走りはじめた。延期されていた全国リーグの試合も5月からスタート。「(練習試合で)高体連相手には勝てていた」(仲村監督)実力を持つチームはハイレベルなリーグの中で一戦一戦大きな経験を積んでいる。絶好調だったMF木村篤弥を肉離れの負傷で欠いているものの、8日に行われたアウェーの青森山田高(青森)戦はMF山岸祐也の同点ヘッドで勝ち点1を獲得。この日も浦和レッズユース(埼玉)に0-5で敗れたものの、MF後藤拓也が突破力の高さを示してゴールへ迫るなど食い下がった。

 全国リーグで上位を勝ち取ることは難易度の高いノルマかもしれないが、「チャレンジしていこう」を合言葉に強豪相手に戦い、大目標の全国高校選手権へ向けて成長を遂げている。また攻守にタレント擁して1月の全国高校選手権で16強へ進出した昨年ほどの個の力はないが、U-16日本代表の1年生DF佐藤翔太郎のほか、MF金田一樹や後藤ら複数のU-17東北選抜メンバーら楽しみな選手もいる。周囲の支援に少しでも応える戦いをしていくつもりだ。

 仲村監督が「(震災による選手たちの)心のケアをやりながらやらないといけない」と語ったように、気持ちを切り替えてサッカーだけに集中することは簡単なことではない。それでも「PRIDE OF FUKUSHIMA」を掲げて被災地「福島県代表」として戦う尚志は、声援を支えに全国舞台で走り続ける。

(取材・文 吉田太郎)

特設:プレミアリーグ

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