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[総理杯予選]山村決勝PK!「負けない」流通経済大が全国へあと1勝

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[5.26 総理大臣杯全日本大学サッカートーナメント関東代表決定戦Bブロック2回戦 東洋大0-1流通経済大 RKUフットボールフィールドA]

 26日、第35回総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントの関東代表決定戦が各地で開催され、Bブロック2回戦では関東1部リーグで首位の流通経済大と同2部の東洋大が激突。流経大がU-22日本代表の注目CB山村和也(4年=国見高)の決勝PKにより、1-0で勝ち、日本体育大と対戦する8日の決勝へ駒を進めた。

 今年の流経大には「負けない強さ」がある。U-21日本代表として出場した昨年の第16回アジア競技大会でアジアナンバー1に輝いているCB山村、左SB比嘉祐介(4年=流通経済大柏高)、そしてGK増田卓也(4年=広島皆実高)の3選手がゴール前に強固な砦を構築。それでもこの日、ゲームメーカーのMF中里崇宏(4年=流通経済大柏高)とFW椎名伸志(2年=青森山田高)をいずれも前半途中の負傷で失った流経大は、3-6-1システムの堅守から局面で人数をかけて崩しに来る東洋大に苦戦した。

 東洋大は前半11分、MF年森勝哉(2年=F東京U-18)のインターセプトからショートカウンター。最後はPAでのポストプレーからMF勝野洸平(4年=大宮ユース)が決定的なシュートを放つ。シュートの正確性を欠き、ビッグチャンスをものにできななかった東洋大だったが、18分にも左サイドを打開した10番MF岡田将知(4年=武南高)のクロスにファーサイドでフリーだった年森が右足を振りぬく。東洋大はその後も、くさびに入った選手のスルーやタッチライン際から斜めにスペースへと走りこんでくる選手へのスルーパスなど、多彩なパターンの崩しで局面を打開して見せた。 

 流経大は2年前の総理大臣杯予選で東洋大に2-3で敗退。関東1部リーグ前半戦を9勝2分の無敗の進撃を見せながら、トーナメントの一発勝負で敗れて全国切符を逃した苦い記憶がある。そして今回も0-0で前半を終える展開。2年前の敗戦を知る山村は「(東洋大戦の敗戦は)嫌な思い出。2年前と同じゲーム展開だった」。だが中野雄二監督が「(きょうのような)こういうゲームを1-0で勝てるのがこの(今年の)チームの特長」と胸を張るチームは、後半に挙げた1点で東洋大を振り切った。

 右サイドからの圧巻のドリブルで4人、5人と抜き去った山村の突破や交代出場のMF関戸健二(4年=旭高)やMF保戸田春彦(4年=流通経済大柏高)の仕掛けが東洋大の守備網に穴を開けた。なかなか最終局面を破るまでは至らなかったものの後半28分、FW中美慶哉(2年=前橋育英高)の出したスルーパスに飛び込んだMF大貫彰悟(3年=F東京U-18)が、PAで背後から相手DFに倒されてPKを獲得。これを山村が「コースを決めて振りぬきました」と右足でゴールへと突き刺し、決勝ゴールを決めた。

 失点直前から4-4-2システムへ移行していた東洋大は相手DFへのプレッシャーを強め、セカンドボールを支配するなど立て直した。そして「アンカーの横を狙ってスペースを突こう」という西脇徹也監督の指示の下、果敢に同点ゴールを目指す。36分には交代出場のMF黒須大輔(2年=習志野高)のスルーパスで抜け出したMF高橋大輔(4年=八千代高)が決定的な右足シュートを放ち、試合終了間際の44分には岡田とのワンツーでPAへ侵入したMF藤井悠太(2年=武南高)が左足を振りぬく。だが相手守護神、増田のビッグセーブの前に追いつくことができず。「後半、後手を踏んでしまった」と残念がった東洋大・西脇監督は「点を取られてからボールを動かせるようになった。スペースを突く作業も少しずつできたのは成長。ただ0-1という結果をふまえて、また練習しなければいけない」。

 1-0で2年前の雪辱に成功した流経大。比嘉や中里、右SB天野健太、MF村瀬勇太ら07年度に流通経済大柏高が全国2冠を達成したときのメンバーに加え、山村、増田といった年代別日本代表も名を連ねる現4年生は、毎年のように多数のJリーガーを送り出している流経大・中野監督をしても「流経の歴史の中で一番(メンバーが)揃っている」という世代だ。

 ただ昨年はリーグ戦ではまさかの9位。唯一の全国大会出場だった総理大臣杯本戦も1回戦で福岡大に2-3で競り負けた。目標の全国制覇どころか全日本大学選手権への連続出場が7でストップする低迷。ただ「最後にやられたりしていた昨年の経験を無駄にしたくない。その部分は自分の中でも、チームの中でもできている」と増田主将が語る今年は、苦しい試合展開でも全て先制点を奪って優位に試合を進めるなど、公式戦無敗を続けている。
 
 総理大臣杯の目標はもちろん07年度以来となる日本一。山村は「まず予選をしっかり勝って本大会でも勝ち続けたい」。「負けない」“黄金世代”流経大が全国の頂点まで突き進む。

(取材・文 吉田太郎)

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