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アルシンド親子がともにピッチへ、父は「いつか監督として日本に」

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[6.4 震災復興チャリティーイベント ANTLERS LEGENDS 3-0WITH HOPE UNITED]

 鹿島アントラーズのFWとして2シーズンで71試合50得点を挙げているレジェンド、アルシンド氏と今年3月に鹿島入りしたFWイゴールのアルシンド親子の競演が日本で実現した。「ANTLERS LEGENDS」の2トップの一角として先発したアルシンド氏に続き、イゴールも前半16分からピッチへ。史上初めて親子2代で鹿島でプレーする2人が前線に並び、ゴールを狙い続けた。

「(東日本大震災の被害について)不安があった。でも(スタジアムに来て)素晴らしいと思った。あれだけ甚大な被害と受けていながらこれだけのスピードでここまで復興している」と振り返ったアルシンドは立ち上がりから全力プレーをサポーターたちに披露する。前半4分、右SB名良橋晃のグラウンダーの右クロスを受けると右前方への動きでDFをかわして右足を一閃。GK小島伸幸のビッグセーブにあい、ゴールを奪うことができなかったが、サポーターたちを沸かせると、9分には左足ミドルを放つなど積極的にゴールを目指し続けた。

 16分にイゴールが投入されると43歳のアルシンドはパサーとしても躍動。18分、父親からのパスを受けたイゴールが中央へ切れ込み右足シュートを放つ。そして24分、アルシンド親子が先制ゴールをもたらした。右アーリークロスから中央のアルシンドがダイレクトで息子の前方へラストパス。イゴールは一度ボールを奪われたが、再び奪い返すと、「『こっちだ!』と怒鳴った」というMFジーコへラストパス。これを背番号10が右足でゴールへと押し込み、「ANTLERS LEGENDS」の先制ゴールとなった。

 イゴールは試合後「もちろん声も聞こえていたし、(ジーコの)ポジションも見えていた。あそこでジーコがいるのにパスを出さないなんてありえない。殺されてしまいますよ」と話し、周囲を笑わせた。ブラジルの英雄、ジーコとプレーすることはブラジル人にとって名誉なこと。アルシンドは言う。「ジーコの隣でプレーできるということは言い表すことができないほどうれしい。ブラジル人はみんなジーコの隣でプレーできればと願っている。限られた人しかできないことなのに、(自分は鹿島時代、そしてこの日)憧れの人とできたのは本当にうれしい。息子にもそのことは伝えていたし、感じてくれたのではないかと思う」。憧れのジーコ、そして息子とともにプレーできた最高の一日をアルシンドは喜んでいた。

 イゴールは加入後J1で4試合にベンチ入り。Jデビューを待ちわびている状況だが「チャンスは必ずくる。しっかりやる」と話し、父同様に鹿島で活躍することを願っている。一方、現在農場経営をしているアルシンドは今後の夢について「いつか日本に戻ってきたい。日本のクラブで監督がしたい」と明かした。「鹿島はこれまで有名な監督ばかり。私には入るスペースがない(笑)。自分を必要としてくれるところで監督としてやりたい。まだタイトルを取っていないクラブへいって挑戦をしてタイトルを取りたい」と夢を語った。

 アルシンドは「(日本は)強い絆を持って取り組んできた。日本人は(世界への)見本になったと思う」。震災を乗り越えようとしている日本、茨城の姿に逆に勇気付けられたアルシンド親子がこれからそれぞれの夢をかなえる。

(取材・文 吉田太郎)

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