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鹿島は震災後初の本拠地で零封負け…岩政「点が入る雰囲気なかった」

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[6.15 J1第15節 鹿島0-1甲府 カシマ]

 負けられない試合だった。開幕戦以来、101日ぶりにカシマスタジアムに戻ってきた鹿島アントラーズ。東日本大震災により被災したスタジアムは、応急工事で屋根部分の照明設備などが撤去され、仮設照明がスタンド2階席の各コーナー部分に設置された。震災の爪跡がいまだ残る中、震災後初めて開催された“ホームゲーム”。バックスタンドには「この場所からまた始めよう、新たなる歴史を!」との横断幕も掲げられ、平日にもかかわらず7810人の観衆が集まったが、勝利をプレゼントすることはできなかった。

「ここで勝つのが僕たちの仕事。平日にもかかわらず、たくさんの人が来てくれたのに、勝つことができず残念です」。DF岩政大樹は唇をかむ。後半47分、相手のスローインから一瞬の隙を突かれ、決勝点を献上。「マイク(ハーフナー・マイク)が抜けてきて、フリーの状況だった。どのように(マークが)ズレてしまったのか、ビデオを見ないと分からないけど、スローインからあのようなシーンが生まれるのはよくない」と悔しさを隠さなかった。

 後半ロスタイムの失点で0-1の零封負け。終盤の失点も反省材料だが、それ以上に得点力不足は深刻だ。前半10分、MF小笠原満男のスルーパスにFW興梠慎三が反応したが、シュートは相手GKに阻まれる。後半4分にも興梠がPA内に抜け出したが、シュートは浮き、同13分、DF西大伍の右クロスに合わせたFW田代有三のヘッドも枠を外れた。

 シュート数は10本対9本。ボール支配率を考えると、決して多くない。決定的な場面も上記の3シーンぐらいで、試合が終盤に入るにつれ、徐々にチャンスをつくっていったのはアウェーの甲府の方だった。

 岩政は「チャンスが多かったとは捉えていない。少なくとも相手のペースだったとは思ってないし、全体的に悪くない守備はできていたけど、そこから相手を崩していたかというと、僕の印象としては点が入る雰囲気はなかった」と言う。「ボールを取ってからゴールに至るまでのプロセスをもっともっとやっていかないといけない」。厳しい口調で苦言を呈した。

 後半17分にMF片桐淳至、同39分にFWパウリーニョを投入した甲府は攻撃のリズムを変え、交代で入った選手がアクセントになってチャンスに絡んだ。一方、鹿島は後半25分にMF本山雅志がトップ下に入ったが、決定的なプレーを見せられず、その後はMF柴崎岳、FWイゴールという新人をピッチに送り込むしかなかった。選手交代で攻撃が活性化された甲府に対し、鹿島は攻撃の形さえつくれなくなっていった。

 故障者を抱える台所事情もあるとはいえ、黄金時代を支えた選手たちが年齢を重ねた一方、なかなか若手が台頭してこない。世代交代が遅れたツケが暫定15位という順位に表れているという見方もできる。

「チームを強くするためにいろんなことをやらないといけない。練習でも試合でも、普段の生活の中でもやらないといけないことはある」。意識改革の必要性を訴える岩政は「若い選手、中堅の選手、これからの鹿島を背負う選手には、技術や身体能力を持っている選手はそろっていると思う。ただ、サッカーがうまいかというと、今の段階ではそうでもない。ゴールデンエイジが強かったのは技術があったから、才能があったからではなく、サッカーがうまかったから。サッカーがうまくなってほしい」と最後まで険しい表情を崩さなかった。

[写真]101日ぶりとなるカシマスタジアムでの試合に敗れ、肩を落とす鹿島の選手たち

(取材・文 西山紘平)

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