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[選手権予選]“白崎頼み”脱却を証明!「信じる」山梨学院が萱沼ロスタイムV弾で全国切符獲得!:山梨

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[11.5 第90回全国高校選手権山梨県大会決勝 山梨学院2-1帝京三 山銀スタ]

 第90回全国高校サッカー選手権山梨県大会決勝が5日、山梨中銀スタジアムで行われ、09年度日本一の山梨学院と5年ぶりの全国を狙った帝京三が激突。山梨学院が後半ロスタイムにMF萱沼優聖(3年)の決めた劇的な決勝ゴールによって2-1で勝ち、3年連続3回目となる全国大会出場権をもぎ取った。

 優勝決定弾が帝京三ゴールへ突き刺さったのは、ロスタイム表示の2分が過ぎた後半43分だった。誰もの脳裏に延長戦突入がよぎる中、「信じる」山梨学院が決勝ゴールを奪う。カウンターから交代出場のMF早瀬庄馬(3年)が粘って前線まで運ぶと、後方から猛スピードで駆け上がってきたSB山口聖矢(3年)へパス。後半ロスタイムという時間帯を感じさせないパワーでギアチェンジした山口が、一気に右サイドをえぐってクロスボールを放り込むと、抜群の強さを誇っていた帝京三CBの頭上を越えたボールにファーサイドから萱沼が飛び込んだ。「きょうは何もやっていなかった。最後点を取りたいと思っていた」という背番号7が頭で合わせたシュートが王者を3年連続の全国へと導いた。

 山梨学院にとってはとても苦しい試合だった。帝京三は湘南ベルマーレ加入内定のCB亀川諒史主将(3年)とCB原大河(3年)が空中戦で強さを発揮し、またコンパクトに組まれた中盤が次々とセカンドボールを拾って相手にリズムをつかませない。ボールを拾うことができない山梨学院はMF木下伶耶(3年)らのサイド攻撃からクロスまで持ち込むものの、やや攻撃が単調で、また股関節痛による長期離脱から復帰して間もないエースFW白崎凌兵主将(3年、清水エスパルス加入内定)もコンディションがまだ万全ではなく、相手を軽くいなすような彼特有の“凄み”が感じられない。ゴールハンターとしてもパサーとしても、ドリブラーとしてもトップレベルにある白崎は今大会2試合連続ゴールを決めているものの、この日はほとんど目立たぬ存在。相手DFを引き付けてシンプルにボールをはたき、時折ボールを持ってプレッシャーをかけるなど攻撃の起点としての役割を務めていたものの、ぶっつけ本番で今大会に臨んでいるエースは「練習からタッチが上手くいかない。サッカーをやってて苦しいという思いが一番強い」という言葉通りのプレーでなかなかチャンスをつくることができなかった。

 サイドまではボールを運ぶものの、決定機をつくることのできない山梨学院に対して、帝京三が先制点を奪う。前半23分、右サイドから仕掛けたFW翁長聖(2年)がMF福田涼(3年)へと預けると、こぼれ球をタイミングよく拾った翁長が右サイドを抜け出す。このラストパスをファーサイドから詰めたMF板垣将史(3年)がゴール中央へ押し込み、先制に成功した。帝京三は負傷で長期離脱していたエース格のFW柴崎航(3年)が決勝で今大会初先発。切り札が前線で奮闘した帝京三は集中力も高く、自分たちの流れで試合を進めていた。

 白崎が万全でない山梨学院は最大のストロングポイントを活かせない展開。ただ昨年度からのメンバーであるMF荒木克仁(3年)が「凌兵のチームみたいに言われてみんな悔しいと思っていると思う。(その中で)きょう周りが点取ったのは自分たちの成長だと思う」と喜んだように、現在の山梨学院は“白崎頼み”ではないことを証明する。先制された直後の26分、山口の右FKを足元で収めたFW柳澤駿静(3年)がドリブルから右足シュートをゴール左隅へねじ込む。この後も前半35分に柳澤の折り返しからFW名嘉真朝季(2年)が決定的な左足シュートを放ち、後半9分にはカウンターからSB金井彰太(3年)が出した右クロスから絶妙の胸トラップで抜け出した白崎が決定的な右足シュート。29分には左サイドの角度のない位置から強引に仕掛けた白崎がそのまま強烈な右足シュートを放った。これらが得点に結びつかず、逆に後半6分に帝京三・柴崎の強引な突破に抜け出される場面などもあったが、U-18日本代表候補GK山田修平(3年)やディフェンスリーダーのCB藤原光晴(3年)、そして負傷のCB新潟谷勇人(3年)に代わり最終ラインで奮闘するCB浅川博仁(3年)らが2点目を許さない。そしてオープンな打ち合いとなってきた試合終盤、最後に上回ったのは山梨学院だった。

 吉永一明監督は「白崎が抑えられたらどうしようもないチームではないことを証明したかった。この試合の前に選手たちに言ったのは『信じる』ということ。ボクも信じていたし、選手も自分自身のことや仲間のことを信じてプレーしてほしい。迷いなくプレーしてほしかった」と振り返っていたが、決勝点の場面では山口の思い切ったオーバーラップ、そしてリスクを負いながらも仲間を信じてアンカーのポジションから攻撃参加した萱沼らの「信じる」思いが劇的なゴールへとつながった。
 
 3回戦で敗退した全国高校総体ではまだまだ白崎頼みのチームだった。だが、エース不在の戦いを続ける中で確実に変わった山梨学院。荒木は「昨年より絶対にいいチームだと思う。みんなを国立へ連れていきたい」。そして白崎は「全国まで行けばベストになると思っていたけど、きょうは仲間に助けてもらわないと厳しいと思っていた。決定機を外したときは申し訳なかったけれど、勝ったことがデカイ。全国へチームをもう一回引っ張って優勝を狙いたい」。“怪物候補”のエースと、力強さを増した山梨学院イレブン。まだ中盤や守備面に課題を残すが、全国大会では優勝候補として日本一奪還へ挑む。

(取材・文 吉田太郎)

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