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京都は“大木流”が浸透し快進撃、工藤「勝つことが自信につながっている」

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[12.24 天皇杯準々決勝 湘南0-1京都 等々力]
 快進撃が止まらない。京都サンガF.C.が優勝した2002年度の第82回大会以来、9大会ぶりの4強入りを果たした。前半40分の右CKのチャンスで、MFチョン・ウヨンのキックをDF秋本倫孝が頭で落とし、これをFWドゥトラが決めた。この1点を守り抜いて1-0勝利をつかんだ。
 ドゥトラはゴール後、チョン・ウヨンとともに、インテルの日本代表DF長友佑都のような“おじぎパフォーマンス”を披露。「秋本が競り勝ち、自分なりに考えて飛び込んだからボールが来た。決められてよかった。おじぎパフォーマンス? これはサムライ・パフォーマンスだ。これで3回目のパフォーマンスだけど、うまくいったね。次もサムライがグラウンドに現れるかもしれないよ」と笑顔で振り返った。
 4回戦で前年王者の鹿島を撃破し、勢いに乗っていた京都。この日も前線からの積極的な守備とショートパスで主導権を握った。湘南とはリーグ戦で2勝していただけに、心理的に優位だったかもしれない。ちなみにこの2勝はいずれも1-0。これで今季はすべて1-0で対3連勝をつかんだ。
 大木武監督は「3試合ともいつ(点を)取られてもおかしくなかった。1試合目はオウンゴール、2試合目は宮吉がギリギリのところで取った。でも2試合ともいいゲームだった。逆にセットプレーで取られてしまうんじゃないかという状況だったがうまく取れて、もう1点なんとか欲しかった」と安堵の表情を浮かべた。後半は湘南が1トップの長身・田原豊と、サイド攻撃をうまく活かして攻め込んだ。GK水谷雄一のファインセーブで何とか守り切った形だった。
 快進撃はなぜ、起きているのか。今季のリーグ戦を振り返ると、京都は前半は波に乗れず、中位に低迷。最終順位も7位と、昨季J1だったチームとしては悔しい成績に終わった。しかし、終盤は確実に違った。10月-11月にはリーグ戦6連勝をつかむなど、9月からの公式戦20試合(天皇杯4試合を含む)で14勝2分4敗と好結果を残している。
 MF工藤浩平は「負けている時もブレずにやってきた。トレーニングの質も上がり、結果にも繋がってきた。いまは自信を持ってプレーできているし、最後まで集中を切らさずボールに行けている。勝つことが自信に繋がっている」と明かす。チョン・ウヨンも「大木さんの表現したいサッカーを自分たちがグラウンドで表現できるようになった」と口にする。
 前日本代表コーチの大木武監督は今季から就任。甲府を率いていたときからそうだったように、高度な戦術を用いるため、チーム作りには時間がかかる。序盤は選手たちが“大木流”を会得できなかったが、夏場以降一気に浸透。終盤になって機能し始めたというわけだ。この日も前からの攻撃的な守備、またショートパスなど良さが随所に見られた。GK水谷は「選手がやっと出来るようになってきた」と説明した。
 大木監督は、結果が残せている理由について「練習です。いくら机上でやっても、作戦ボードでやって負ける人はいない。絶対負けない。それをグラウンドでどうやるのか。今、負けてないから言っているわけではなく、ゲームになったら違う。磁石では動かせないような動きがある。それをピッチの中でできるように練習するということ」と明かした。日頃の練習から自身のやりたいサッカーを選手が理解して実践、さらにピッチ上でも表現できるようになってきたというわけだ。
 次戦29日の準決勝はJ1の名門・横浜FMと対戦する。指揮官は「次はマリノスに決まったようですが、ぜひマリノスに勝てるようにしっかり準備したい」と言い切った。強敵だが、鹿島を倒しているだけに、横浜FMも倒せない相手ではない。優勝した2002年度以来となる元日の決勝のピッチへ。“大木流”で再び、ジャイアントキリングを成功させる。
(取材・文 近藤安弘)

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