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宇佐美貴史インタビュー(前編)選手権を戦う高校生へ「純粋にサッカーを楽しんでほしい」

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 今夏、G大阪からドイツの強豪バイエルンへ移籍したMF宇佐美貴史。決して出場機会に恵まれているわけではないが、普段の練習から各国代表選手とプレーすることで刺激を受け、一歩一歩、前進している。19歳で欧州のビッグクラブへ飛び込んでから半年。日本の至宝が今、何を思っているのか。ゲキサカが直撃インタビュー――。

―早くから海外に挑戦することのメリットはどこにあると思いますか?
「世界のレベルだったり、世界の環境だったり、世界のトップリーグの選手がどういうサッカーをやっているのかということを若いうちに経験することは、絶対にその先のサッカー人生につながると思います。若いうちのほうが、より多くのものを吸収できると思いますし、メリットしかないと思いますね」

―実際にドイツに渡ってみて、日本との違いという部分で一番感じたのはどのあたりですか?
「バイエルンの話になりますけど、周りは代表選手ばかりですし、レベルの高さというのはすごく感じます。ブンデスリーガの中でもスーパースターと呼ばれる選手がほとんどなので、そういう選手と一緒にやる中で、ちょっとしたミスも許されないというか、彼らの要求も厳しいですし、そういうのに付いていきながら練習でしっかり自分の力を出すことは難しいなとも感じています」

―12月7日のマンチェスター・C戦に途中出場し、日本人では10人目の欧州CLデビューとなりました。CLの雰囲気はどうでしたか?
「めちゃくちゃ楽しかったですね。『CLに出てるんや』とはなかなか思えないぐらいの気持ちの高ぶりがありました。いまだに生であのアンセムを聞くだけで興奮するので。うちはすでに突破が決まっているという状況でしたけど、それでも楽しかったので。もっとピリピリした状況で出て、しかも最初から90分出て……。そういうのを想像するだけでワクワクしますね」

―そういう舞台が間近にあるということがモチベーションにもなる?
「ベンチ外ですけど、壁を一つ越えればそこはもうトップなので。瀬戸際にいるわけですし、そこは欧州のメリットですね」

 若くして海外に挑戦したのは宇佐美だけではない。宮市亮は一足早く中京大中京高を卒業した今春にアーセナル(イングランド)に入団。半年間、フェイエノールト(オランダ)にレンタル移籍し、そこでの活躍が認められ、今夏にアーセナルに復帰した。高木善朗も宇佐美と同時期に東京Vからユトレヒト(オランダ)へ移籍した。クラブユース出身、高校出身。立場はそれぞれ異なるが、年代別の日本代表では一緒にプレーすることもある。両者に違いはあるのだろうか。

―宇佐美選手はクラブユース出身ですが、ユース代表では高校の選手とも一緒にプレーしていました。それぞれ良さがあると思いますが、クラブユースの良さはどこにあると思いますか?
「ユースは技術面の練習が多いですし、自分のプレースタイルをつくり出してくれたのは、ユースの下部組織にいたからだと思います。そういう部分ではユースから上がってきてよかったと思いますね」

―逆に高校の選手を見て、自分とは違うなと感じたところはありますか?
「気持ちの面ですね。ユースは中学生のころにうまかった選手が集まっている分、各々でプライドもあるので、団結力が欠けていたり、ここぞというときにまとまりが足りなかったり、そういう部分はあったと思います。高校の選手もプライドがないわけじゃないですけど、みんなでいろんな苦労をともにして、チームとして一つになるというところがあるので、気持ちの面がすごい強いですね。だから僕らもユースのチームには勝てても、高校のチームに負けるということもありました。そういう部分は高校のいいところだと思います」

 日本では全国高校選手権がいよいよ開幕した。高校ナンバー1を決める年末年始の風物詩。G大阪の下部組織で育った宇佐美が出場する機会は当然なかったが、決して縁のない、遠い存在の大会ではなかった。

―これまで高校選手権を見る機会はありましたか?
「いつも年末年始はオフだったので見てました。正月はずっと高校サッカーを見てましたね」

―どういう気持ちで見ていたんですか?
「小さいときは同世代の選手もいないですし、普通にサッカーを楽しむ感じで見ていましたけど、高校2年、3年になってからは同じ世代の選手や、試合で対戦したことのある選手がプレーしていたので、また違う楽しみ方が出てきましたね。純粋に高校サッカーにのめり込んでました」

―特定の高校や選手を応援することもありましたか?
「代表で一緒にやっていた選手がいるチームはやっぱり応援してしまいますね。あとは実家が京都なので、京都の代表校は応援していました。去年は(京都府代表の)久御山が決勝まで勝ち進んだのでうれしかったです」

―国立競技場まで見に行ったことはありますか?
「行きました、行きました。(柴崎)岳(青森山田高→鹿島)が高2のときだったかな。青森山田が決勝まで行って、大阪代表の関大一もベスト4まで残って。山梨学院が優勝したんですけど、そのときの決勝は国立まで見に行きました。(U-17日本代表などでチームメイトだった当時甲府ユースの)堀米(勇輝)が山梨学院の生徒だったので、全校応援に行くということで、一緒に国立で見ていました」

―ユースにはない盛り上がりを見て、うらやましいと思うことはありましたか?
「思いますね。ユースもすごく楽しかったですけど、また違う楽しさがあるというか。兄2人が高校でサッカーをやっていたので、身近で楽しさも苦しさも見てきました。そういうのも含めて、いいなと思うこともありました」

―同世代で意識する選手はいますか?
「高校サッカーでは、岳がズバ抜けていたと思いますし、宮市もだれも止められなかった。(小島)秀仁(前橋育英高→浦和)もすごくいいプレーをしていたと思います。高校サッカーを見ながら『負けたくないな』とは思わなかったですけど、みんながすごいプレーをしていたので、純粋に応援していたという感じですね」

―選手権を戦う現役高校生にメッセージをいただけますか?
「試合を見ている人、楽しみにしている人たちがいっぱいいる大会ですし、あれだけ注目される大会というのはユースにはありませんでした。テレビで毎日、放送してもらえて、決勝にもたくさんのお客さんが入って。そういう中で純粋にサッカーを楽しんでほしい、それだけですね。自分たちのサッカーをする。それが一番大事だと思います」

―自分がユースでプレーしていたときもプロにはない楽しさがありましたか?
「プロでは、全員、同い年の選手がフィールドに立っているということはあり得ないですし、プロでは味わえない楽しさがありました。団結した仲間同士のサッカーというのは高校時代にしか味わえないものだと思います」

 12月25~27日に行われたU-22日本代表候補合宿。ブンデスリーガがウィンターブレイクに入り、一時帰国した宇佐美は約8か月ぶりに追加招集され、ミーティングにのみ参加した。2012年夏に迫ったロンドン五輪。2009年のU-17W杯では3戦全敗に終わり、2010年に行われたAFC U-19選手権では準々決勝で敗退し、U-20W杯への出場権を逃した。年代別代表では最後の世界大会となるロンドン五輪へ、宇佐美は強い決意を胸に秘めている。

―宇佐美選手にとって、ロンドン五輪はどんな大会ですか?
「めちゃくちゃ出たい大会の一つですし、その先のサッカー人生に大きな影響を与えてくれる大会だと思います。自分自身がさらに成長するために絶対に必要な大会なので、是非出たいですね」

―同世代の世界のライバルと戦う五輪を勝ち抜く自信はありますか?
「いけると思いますよ。今、アジア予選で勝っているのは力があるからだと思いますし、いい選手もたくさんいます。日本人の技術は絶対に世界で通用すると思うので、それをしっかり出せれば、絶対勝っていけると思います」

―出るからにはメダル、さらには優勝を狙いますか?
「もちろんですね。ベスト16を目指して出るのはおかしいと思います」

―U-17W杯、AFC U-19選手権の悔しさもあるからこそ五輪に懸けている?
「もちろん、そうです。U-17での悔しさをU-19で晴らせすことができず、悔しさが重なりました。それを2つまとめて世界で返したいという気持ちは今も持っていますし、忘れていません」

(取材・文 西山紘平)

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