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[選手権]ロスタイム同点劇の四日市中央工、PK戦不敗の1年生GKビッグセーブで8強進出!

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[1.3 全国高校選手権3回戦 四日市中央工1-1(PK4-2)立命館宇治 市原]

 第90回全国高校サッカー選手権は3日、各地で3回戦を行い、市原臨海競技場(千葉)の第1試合では29回目出場の四日市中央工(三重)と2回目出場の立命館宇治(京都)が8強進出を懸けて激突。0-1の後半ロスタイムにFW浅野拓磨(2年)のゴールによって追いついた四日市中央工が1-1からのPK戦を4-2で制して3年ぶりとなる準々決勝(1月5日、対中京大中京)へ駒を進めた。

「負ける気がしなかった」。1点ビハインドの後半ロスタイム、四中工は左CKを得るとMF田村大樹が(2年)がゴール前へ正確なボールを入れる。複数の白いユニフォームが飛び込むと、その中のひとりに当たったボールはゆっくりとゴール右隅へ。得点者として場内コールされた浅野は「ボールかDFの足か何か分からなかったけれど、何かが足に当たった。みんな喜んでいたので誰が入れたのか分からない。金平さんが前で潰れて後ろにこぼれて、詰めるだけで良かった。リードされていたけれど、負ける気がしなかった」。土壇場で追いついた名門は四中工はPK戦で4人目の田村大のキックがGKにストップされながらも蹴り直しの判定に救われるなど4人全員が成功。逆に「小5でGK始めて以来PK戦無敗」という1年生守護神、中村研吾が相手の3人目と4人目を連続セーブして8強切符を手繰り寄せた。

 前半20分までは今大会2試合で9ゴールをたたき出している四中工の一方的な展開だった。エース・浅野、2回戦ハットトリックのFW田村翔太(3年)、MF寺尾俊祐(2年)、田村大の身長160cm台カルテットがドリブルで次々と立命館宇治を振り回して決定機を連発。相手に攻撃らしい攻撃をさせずにボールを支配すると、4人が間髪いれずに縦へ切れ込んで守備網に穴を開けるなど、怒涛の攻撃を繰り広げた。4分には右サイドからDF2人をかわした田村翔がGKと1対1となり左足シュート。8分にはMF松尾和樹(3年)のスルーパスに浅野が反応する。さらに11分には浅野のシュートがゴール左ポストをたたき、14分にはカウンターからフリーでパスを受けた田村翔が決定的な左足シュート。だが立命館宇治はGK泉谷寛治(3年)が好守を連発するなどゴールを割らせない。

 この後、徐々にクロスやショートパスが雑になった四中工に対して立命館宇治はMF小中優樹(3年)らがインターセプトする回数を増やす。そして左のMF永井健人(2年)、右のMF北岡慧悟(3年)の両翼を起点としたサイド攻撃とカウンターで押し返していった。34分には小中の右ロングスローのこぼれ球から決定的な場面をつくり、37分にはゴールエリアでのこぼれ球を北岡がゴール至近距離から右足シュート。これは四中工のCB西脇崇司(3年)にゴールライン上でクリアされたものの、流れを引き寄せたまま前半を終えた。

 そして後半開始直後、立命館宇治が先制する。左サイドで小中からのパスを受けた永井が仕掛けて右足シュート。このこぼれ球を拾ったFW谷口純基(3年)が左足を振りぬくと、DFの死角から飛んできたシュートに中村の反応が遅れ、シュートはゴール右隅へ吸い込まれた。

 反撃したい四中工だが焦りの色が明らか。ミスも多く、風上の利点を活かせない。立命館宇治のFW樋口尚紀(3年)らにサイドを有効に使われると、プレッシャーを正確なワンツーなどでかわされて決定機をつくられた。ただ14分にMF下川拓朗(3年)、27分には谷口が決定機を迎えるなど突き放すチャンスがありながら得点できなかった立命館宇治は、ロスタイムの失点とPK戦によって涙を呑んだ。

 右SB川本将太郎(2年)のオーバーラップと高さのあるFW金平将輝(3年)とギャップを突くMF川島裕介(3年)の投入であきらめずに追撃し続けた四中工の執念のゴールと勝利。優勝した91年度以来となる4強へ王手を懸けた四中工の樋口士郎監督は「焦ってしまって思うようなサッカーができなかったが、全体の一体感で勝った。優勝した時はPKが2回あった。上位に行くためにはPKは欠かせない」。大勝した後の難しい試合をものにした名門が奇跡的な勝利で勢いづいた。

(取材・文 吉田太郎)

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