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[MOM554]中京大中京FW宮市剛(1年)_アーセナルの兄を1年で“越える”2発

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 中京大中京3-2済美 駒沢]

 兄に並び、兄を越えた。中京大中京(愛知)のFW宮市剛(1年)が全国選手権初ゴールを含む2得点を挙げ、チームを初のベスト8へ導いた。

「全国大会で点を決められて最高でした。自分的にもきれいに決まったかなと。初戦より緊張することなくプレーできた」

 前半39分、左SB河合弾(2年)のクロスからMF荒木傑大(2年)がワンタッチでつないだボールをPA内正面で受けた宮市が冷静に左足でゴール右下へ流し込む。前半終了間際の先制点に続き、後半開始2分にもMF熊谷知紀(3年)のスルーパスに抜け出し、追加点を奪った。

 4-2-3-1の1トップに入った宮市はハイボールに果敢に競り合い、足元でもボールを受け、前線で起点をつくる。アーセナルに所属する兄のFW宮市亮のような爆発的なスピードはないものの、185cmの恵まれた体格を生かした空中戦の強さとポストプレー、身体能力の高さは、兄にはないポテンシャルも秘めている。

 50m走は6秒5というが、長いストライドを生かした瞬発力と加速はその数字以上の速さを感じさせた。実際、対峙した済美のDF久保飛翔主将(3年)は「体がデカいので、背負われたときに反転されたり、結構スピードもあった。裏に抜け出すタイミングも嫌だった。まだ1年生だし、3年になったら脅威ですね」と、その潜在能力に舌を巻いた。

 岡山哲也監督は「もともとポテンシャルがある選手。今日のゴールが自信につながると思うし、もう一つ上にいけると思う」と、期待の1年生ストライカーの2発を手放しで喜んだ。当初は2トップの一角で起用し、「足元がもたつくところがあって不安もあった。1トップにしてからもなかなかボールがおさまらなかったけど、我慢して使い続けた」と、将来性を見込んで実戦を通じて成長を促してきた。

「予選途中からボールもおさまるようになって、本人も自信を付けることができた。そこからは短期間で一気にうちのエースとして安定感が出てきた」。伸び盛りの16歳。元Jリーガーの指揮官が驚くほど、急激な成長曲線を描いている。

 地道な努力の賜物だった。ポストプレー、足元のテクニックを伸ばすため、連日、居残りで課題克服に励んだという宮市は「同い年の選手に練習が終わってからボールを蹴ってもらったり、ディフェンスをしてもらったりして、背負いながらのトラップの練習をしていた」と胸を張る。準々決勝で対戦する四日市中央工(三重)には9月19日のプリンスリーグ東海で2-11の大敗を喫しているが、「フィジカルも個々の力も付いてきている。今、戦えば互角にやれると思う」とリベンジに自信を見せた。

 兄・亮は中京大中京高2、3年時に全国高校選手権に出場したが、いずれも初戦敗退。ゴールも前回大会の1回戦・久御山戦(2-4)の1点だけだった。2戦1発の兄を越える2戦2発。試合当日の朝、「今日も絶対勝ってこい」とメールを送ってくれた兄に試合後さっそく「2点取ったぜ」と返したという。

「今日みたいにどんどん点を取っていきたい。あと一つ勝てば国立に行けるので、絶対にあと一つ勝ちたい」。兄が果たせなかった全国選手権1勝を成し遂げ、今度は同校初のベスト8に導いた弟。偉大な兄に追いつき、追い抜いていくために、1年生エースがさらなるゴール量産で中京大中京の歴史を塗り替えていく。

(取材・文 西山紘平)

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