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[大学選手権]過去最多・約1万4千人の観客!!陰には運営に奔走した学連スタッフの姿

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[1.5 全日本大学選手権・決勝 専修大3-0明治大 国立]

 冬の大学日本一決定戦である第60回全日本大学選手権の決勝戦が5日に東京・国立競技場で行われた。第60回記念大会ということで、全日本大学サッカー連盟は「インカレ3万人動員プロジェクト」を実施。試合会場には昨年度大会決勝戦の5519人を大きく上回る、1万4134人の観客が入った。これは12月30日に同じく国立競技場で行われた、高校選手権・開幕戦の1万3780人も上回る数字となった。

 かねてから高校選手権・準々決勝と同日開催となることに加え、平日開催となるため、観客の動員数は伸びず。報道陣も少なくなり、メディアの露出も少なかった。そのため、今大会では年内に大会を終えるスケジュールを組むことも提案された。しかし、より過密日程になることから、選手のコンディションを配慮し、例年通りの5日開催となった。また、決勝戦を"聖地"・国立競技場で開催するためには、5日開催にするしかなかったという。どのような大会を行うときも、まず会場確保が困難な大学サッカーにおいて、大会スケジュールの変更は大きすぎる変革。簡単に日程変更することはできない。

 この状況で観客の動員数を増やすため、知恵を絞ったのが大学サッカー連盟の学生たち(学連)だった。「大学サッカーを多くの人に知ってもらおう」「大学サッカーを通じて、東北に元気を届けよう」という2本の柱で全131人の学連スタッフが奔走した。国士舘大の福島佑馬(4年)さんを中心として行ったのが「大卒Jリーガー・サイン入りユニフォーム抽選会」。500円以上を募金してくれた人にユニフォーム抽選券を渡すという新たな試みだった。このイベントは大盛況。多くの人がイベントブースに集まった。また、コンコースを回る募金スタッフを一般公募。約40人のボランティアの力を借り、1日で60万194円の義援金が集まった。これらは東北大学サッカー連盟を通じて、小中高大のサッカー支援を目的に活用されるという。そのほかにも写真展やJ内定選手のサイン会など、多くのイベントを実施。より多くの人に会場へ足を運んでもらおうと、様々な趣向を凝らした。

 学連スタッフは「大学サッカーを多くの人に広めたい」一心で仕事に励んでいる。関東大学リーグ所属の全24校の学生で成り立っているが、所属先の選手やマネージャーとしても活動している人が多くいる。10年度の幹事長である筑波大の遠山大貴さん(4年)もその一人。選手として大学サッカーをやろうと、筑波大蹴球部に入部。その後、大学サッカーを伝える立場に興味を持ち、学連の仕事をするに至った。当初は「こんなに練習に行けなくなっちゃうんだ」と思ったというが「少しでも大学サッカーの環境を変えたい」という思いで学連の仕事に励んできた。

 もちろん自身の大学を応援する気持ちを抱えながらも、運営側としては中立な立場でいなければならない。だからこそ、自チームの試合を目の前で見ながらも「泣けたくて泣けない。応援したくても、本気で声を出して応援できない」というもどかしい気持ちでいっぱいになることもある。それでも、「全体のため、これがチームのためになる」と自身を言い聞かした。学連の仕事がない日は、チームの練習に参加する日々。もちろん学校の授業に加え、学連の仕事。そしてチームの練習と「何もしない日はない」という多忙な生活。そして、トップチームを目標に入部したはずが、関東リーグではなく、Iリーグ出場が目標に変わった。それでも「僕はずっと筑波大の一番下のチームでやってきましたけど、最後はIリーグで試合に出ることができて、自分なりに最後は良かったと後悔はしていません」と話した。大学サッカーに関わる選手たち全員が国立決勝の舞台をゴールにしているわけではない。それぞれが精一杯、目の前のことに取り組めば、手にするものはある。

 学連スタッフとして全日本大学選抜の主務を務めた桐蔭横浜大の川村洋一郎さん(4年)は「休む期間は本当になかった。それでもとにかく楽しくて、やって良かった。ユニバの準備などは本当に大変ですが、やりがいがあったし、他ではできない経験ができました」と笑顔。福島さんは「人とのつながりができた。上の3つの学年、下の3つの学年、7学年の人たちと知り合うことができた。学連で良かった」と話した。選手としてだけでなく、学連スタッフとして活動するなかで、手にしたものは数えきれない。

 多くの学生の努力があり、過去最多となる1万4134人の観客が入った。決勝戦のピッチに立った専修大MF庄司悦大(4年=清水商)主将は「まさか、こんなに人が入っているとは思わなかった。入場して驚きました。大学サッカーの知名度を少しでも上げられれば」と話していた。4年間努力を重ねてきた選手たちにとって、最後の晴れ舞台。過去最多の観客の前でプレーした選手たちの陰には、運営に奔走した幹事たちの姿があった。

(取材・文 片岡涼)
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