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柏からレンタル移籍のMF兵働「レギュラー争いして活躍したい」

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 この男もファンの期待を一身に受けた。昨年J1を制した柏レイソルからレンタルで移籍してきたMF兵働昭弘だ。G大阪から加入したDF山口智と共に経験豊富で、千葉のJ1昇格へ貢献が期待できそうな司令塔。今年で30歳となるレフティーだが、この日行われた新体制会見では、早くもサポーターのハートをつかんだ。

 会見も一通り終わり、写真撮影を残すのみとなったステージ上。まずは椅子に座って集合写真を撮影したが、最後はステージ前に整列して写真撮影を行うことに。「若手は前に」というカメラマンの誘導のもと、2列になって整列しようとするが、なかなか整列できない。そんな中、今季30歳を迎えるベテランが颯爽と前列の若手と肩を組み笑顔を見せた。会場からはドッと笑いが起きた。

 まさに風格、余裕を感じさせる行動だった。しかし実際、兵動は悲壮な覚悟で移籍を決意し、今シーズンを迎えている。兵働は昨季は柏に所属し、チームとしてはJ1優勝という最高の成績を残したが、個人としては挫折にも近い苦労を味わった。会見後に行われた取材では表情を引き締め、「レギュラー争いをして活躍したい」と胸に秘めた決意を口にした。

 昨年オフに清水から柏に移籍した兵働。清水ではレギュラーとして活躍し、日本代表入りの声さえ囁かれたMFが、昨年はリーグ戦16試合の出場、うち先発は6試合にとどまった。昨年末、柏が4強入りし話題を集めたクラブW杯でも、自身は準決勝サントス戦(●1-3)に後半35分から10分間出場したのみで不完全燃焼に終わっていた。やはり不本意だったようで、「試合に出たい」と今回の移籍を決断した。

 柏から千葉と、同じ県内のライバルチームへの移籍--。入団するにあたりまず理由に挙げたのが、木山隆之新監督の就任だ。木山監督は03年~04年に筑波大の監督を務めており、当時筑波大に所属していた兵働とは師弟関係にあたる。兵働は「移籍する一つの要因になった。大学でやっているので、監督の目指すサッカーを体現したい」と信頼関係を口にしている。木山監督も「中盤のポジションはどこでも出来る。キックの精度、運動量もそうだが、精神的に苦しいときに力を発揮できる選手」と全幅の信頼を置いており、兵働が中心のチームになる可能性もうかがわせた。

 千葉への加入は、ある“縁”もある。大学時代にはオシム監督率いる千葉の練習に参加したことがある。当時千葉はJ1で上位争いを繰り広げるなどチームに勢いがあった。「当時とは監督も選手も変わってますし、違うチームになっていて比べようがないです」と語っているが、地元千葉が誇るクラブということもあり「ジェフをJ1に導きたい」とJ1復帰を自らの手で手繰り寄せる気概を示した。

「J2はタフなリーグだと思う」

 30歳を目の前にして迎える自身初となるJ2だが、油断は一切ない。昨年J1優勝を目の当たりにしてのJ2挑戦となるが、気持ちも切り替わっている。「J1昇格という目標があるので」と言い切った。チームでの自身の役割についても「攻守のバランスを取りながらチームの勝利に貢献していきたい」と冷静に分析した。試合出場に飢えた司令塔が、なみなみならぬ闘志を燃やしている。

(取材・文 児玉幸洋)


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