beacon

あこがれの11番、愛媛から復帰の横浜FM・齋藤「まずJ1で1点」

このエントリーをはてなブックマークに追加

 サポーターの期待を一身に背負う。15日に横浜市内で行われた横浜F・マリノスの新体制発表会。愛媛への期限付き移籍から2年ぶりに復帰したU-23日本代表候補FW齋藤学の名前がMCから読み上げられると、サポーター480人が詰めかけた会場からは割れんばかりの拍手が起こった。

「2年前、ここでサッカーをしていたときは全然力になれなかった。去年、J2ですけど、少し自信を持つことができた。その自信を自分のプレーに変えて、マリノスの勝利に貢献していきたい」

 小学校時代から横浜FMの下部組織で育った齋藤だが、昨季は愛媛に期限付き移籍。「13年間ずっとマリノスにいて、外に出るのも初めてで、イメージも全然できなかった。そこでダメだったら(サッカー選手として)よくない終わり方になる。ガムシャラに1日1日やってきた」。横浜FMでは08年が7試合、09年は11試合、10年は5試合に出場したが、J1での得点はゼロ。“背水”の覚悟で臨んだ昨シーズンはJ2で36試合に出場し、得点ランキング3位タイの14得点を記録。ひと回りもふた回りも大きくなって帰ってきた。

 165cmの小柄なアタッカーは“愛媛のメッシ”と呼ばれ、愛媛サポーターからも愛されてきた。「1年間だけだけど、何年もいるように扱ってくれて、愛媛のおかげで代表にも入ったし、マリノスに戻ってくることもできた」。そう感謝する齋藤は「マリノスではすべて環境が整っていたけど、愛媛では洗濯も自分でしていたし、食事も自分で考えないといけない。すべての面で自分で意識しないとダメだった」と、決して恵まれてはいない環境で日々の生活、サッカーへの取り組み方から変わっていった。

 J2で才能を開花させた若手のホープに樋口靖洋新監督も「直接、生で見ることはできなかったが、全試合、テレビでチェックしていた。14点取ったのはポテンシャルを発揮したと思うし、それを是非このチームに還元してほしい」と期待を寄せる。

 クラブの期待の大きさは背番号にも表れている。FW大黒将志が9番に変更され、齋藤の背番号は「11」に決定。横浜FMではFW坂田大輔(福岡)が04年から10年まで背負ってきた番号に「自分が育成にいたころからずっと坂田くんが付けていて、あこがれというか、遠い存在の選手だった。責任はあるけど、パワーに変えて、11番に恥じないようなプレーを見せたい。『11番は齋藤の番号だ』と思ってもらえるようにがんばりたい」と強い決意を口にした。

 目標については「まだJ1で点を取っていないので、まずは1点。そこから積み重ねていければ」と謙虚に語る。新体制発表会後はU-23日本代表候補合宿のためグアムに向けて出発したが、「五輪のことはあまり考えていない。選ばれるのは光栄だし、自信になるけど、まずJリーグでがんばりたい」と強調する。

 愛媛時代に普段、食事の面でお世話になっていた定食屋の「まるとく」に移籍の報告をした際は「もう戻ってくるなよ」と笑顔で送り出されたという齋藤。「去年、マリノスの試合を見ていて、仕掛けとか、ゴールに向かうスピードがもっとあってもいいのにと思っていた。そういうのを自分が出していけば、今のチームのプラスアルファになると思う」。2年ぶりのJ1の舞台で、自分が成長したことを証明するつもりだ。

(取材・文 西山紘平)

▼関連リンク
2012年Jリーグ移籍情報

TOP