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「あいつが降りてきた」、肉離れを押して出場の安永が芸術ゴールを松田さんに捧げる

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[1.22 松田直樹メモリアルゲーム Naoki Friends 0-1 横浜F・マリノス・OB 日産ス]

 故・松田直樹さんへ思いを届けた。肉離れしている左足は踏ん張りが効かなかった。それでも、自然と体は動いた。「松田直樹メモリアルゲーム」の大会実行委員長も務める安永聡太郎が芸術的なダイレクトボレーで決勝点を決めた。

「完全にあいつが降りてきた。あんなの打ったことないもん」。吉田孝行からの浮き球のパスを城彰二がヒールで落とすと、PA外右45度から安永が右足をダイレクトで振り抜いた。右アウトサイドで合わせたボレーシュートはループ気味にGKの頭上を越え、ゴールネットを揺らす。起き上がった安永はソックスから松田さんのトレードマークでもあるヘッドバンドを取り出し、頭に巻いた。左足を引きずりながらベンチ前に駆け寄り、選手全員で右腕を天に突き上げる。どこかで見ているはずの親友にゴールを捧げた。

「足が万全だったら、あのシュートも力が入って、決まってなかったと思う」。安永はそう笑って、左太腿を肉離れしていたことを明かした。「1か月前から坂道ダッシュをしていて、練習試合もやったら調子に乗って肉離れした」。松本山雅FCとの第1試合は7分間の出場。この試合も得点直後にベンチへ下がった。試合終盤の後半43分から再出場したが、出場時間はわずか28分間。痛みをこらえ、プレーした結果のゴールに「これも松田直樹のイタズラかな。シュートのときも、立ち足はフワフワしてた」と白い歯をこぼした。

 第1試合は0-1で敗れたが、第2試合は自らの決勝点で1-0勝利。試合前の円陣で「勝利にこだわろう」とチームメイトに声をかけ、メモリアルゲームであっても勝負にこだわったのは、やはり亡き友の信念からだった。

「あいつは負けず嫌いだから。あいつはサッカーを楽しんでいたけど、勝つことを楽しんでいた。勝つための一つの手段として、あの熱さがあって、それに共感してみんながあいつを愛した。もちろんケガをしない範囲で、全力を尽くして、勝利を目指しましょうという話をさせてもらった」

 4万475人の観衆を盛り上げ、熱狂に包んだのは選手たちが純粋にサッカーを楽しみ、勝利を目指したからだった。「現役の選手にとっては難しい時期で、OBの方も時間を調整して参加していただいて、仲間って素晴らしいなって、松田直樹ってすげえなってあらためて感じました」。そう感慨に浸った安永は次の夢も口にする。

「できればだけど、8月に、あいつが倒れた日の近くに、松本山雅で試合ができたらと思っています」。気温8.1度の横浜から真夏の松本へ。松田さんの思いは日本全国のサッカーファンの心へ脈々と受け継がれていく。

(取材・文 西山紘平)

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