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「2番がピッチで躍動する姿が見たかった」塚本の思い、大宮新加入の「同級生」菊地が受け継ぐ

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 3シーズンぶりにNACKスタジアム大宮のピッチをオレンジの背番号2が駆け抜ける。10年シーズン開幕前の2月に右大腿骨骨肉腫(骨にできるガン)という診断を受け、同年3月に手術をしてから2シーズンに渡って長いリハビリに励んでいるDF塚本泰史。塚本は昨年11月に大宮からの契約満了が発表されたが、彼が背負っていた背番号2を浦和東高、駒澤大で同級生だった新加入のDF菊地光将(前・川崎F)が受け継ぐことになった。

 塚本は現在も現役復帰を目指して日々大宮の練習場でトレーニングを積んでいる。それだけにクラブと塚本から背番号2を打診された菊地は当初「最初は泰史のために空けておいた方がいいと思った」。だが仲間からの思いを告げられて背負うことを決めた。「背番号2をつけることがアイツのモチベーションになると思った。つけて欲しいという思いが伝わってきたし、悩んで悩んで決断した。泰史の前には奥野(誠一郎)さんがつけていたし、自分なりの2番をつくっていければと思う」。J屈指のエアバトラーでもある菊地は強い意志を持って大宮1年目のシーズンを戦う。

 この日、大宮からクラブの公式行事への参加、ホームタウン活動、クラブの広報活動などを行うアンバサダー就任が発表された塚本はクラブの厚意に「うれしかった。凄く感謝している」と感謝。塚本が2番を背負ってピッチを走り回る夢はまだ叶っていないが、今年は学生時代にともに戦ってきた菊地が背番号2を背負い、大宮のために戦う。「2番がピッチで躍動する姿が見たかった。(背番号2を背負うのは)彼しかいなかった」と喜んだ塚本。いつか塚本が復帰するまでの“期間限定”で2番を背負うことを了承した菊地自身も「フロンターレの時からずっと一緒にプレーしたいと思っていた」という塚本のために戦うつもりだ。菊地にとっては新天地で移籍1年目だが、プレッシャーを感じずにプレーに専念するだけ。「上手いプレーとかはできないけれど、しっかりと身体を張る。攻撃を跳ね返すとか、セットプレー。メンバーを見ても残留争いするチームじゃない。大宮と一緒に成長したいと思う」と誓った。

 塚本は昨年3月に骨腫瘍広範切除を行い、人工関節に換える手術を実施。その後抗がん治療で完治した。リハビリを開始した当初は膝も曲がらなかったというが「徐々に今までできなかったことがひとつずつできるようになってきた。はじめは膝も曲がらなかった。室内でバイクをこぎ始めて、歩き始めて、そして走れるようになって。今はボールを蹴れるようになった。パス交換も、リフティングもできるようになった。(ひとつひとつを)かみ締めながらやっている」。Jのピッチへ復帰することはかなり難しい状況であることに変わりないが、それでもあきらめずに「このまま終わりたくない。自分ができるんだというところを見せたかった。同じ病気の人にできるんだというところを見せたい。正直しんどいし無謀だと言われているけれど、絶対に走り通す」と東京マラソン2012参加も決意した。厳しい状況の中、復帰へ向けて決してあきらめない塚本の意志を胸に、新たなDFの柱として期待される菊地は、ピッチで存分に力を発揮するつもりだ。

(取材・文 吉田太郎)
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