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「走り負けない」東海大浦安が延長戦制す:千葉新人戦Eブロック

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[2.4 千葉県高校新人大会Bブロック決勝 東海大浦安1-0(延長)若松 八幡球]

 平成23年度 千葉県高等学校新人サッカー大会Eブロック決勝は、昨年に続く優勝を目指した東海大浦安が延長前半7分にMF三浦昇太(2年)の決めた決勝ゴールによって若松に1-0で勝ち、2連覇を達成した。

 チームメート同士が激しく叱咤し合う東海大浦安と、チームメートを励ます声を切らさない若松との決勝。ともに最後までよく声の出ていた好チーム同士の決戦は東海大浦安が制した。0-0で突入した延長戦の前半7分、東海大浦安は体調不良の影響で交代出場だった10番MF三浦竜太郎(2年)の右クロスをファーサイドでフリーの三浦昇が右足でゴールへと流し込む。「(走ることができたのは)多分あと1回。いいボールが来たんで決められた」と殊勲の背番号7。後半終了間際から足を攣らせて何度もピッチに倒れ込んでいた三浦昇だったが、鈴木浩正監督やチームメートの声で立ち上がり、走り続け、渾身の一振りで熱戦に決着をつけた。

 東海大浦安はこの日、DF宍戸海太主将(2年)ら主力数人を欠いていたが、抜群のキープ力を誇るゲームメーカーMF鈴木大輝(2年)を起点に自陣から徹底したポゼッションを展開。プレッシャーを苦にせず攻撃を組み立てる鈴木やMF高橋虎太郎(1年)、三浦昇が相手のマークを外してチャンスにつなげた。

 対する若松はスピードのある攻撃から突破力の高い1トップのFW山下将大や右SB五十嵐悠輔(ともに2年)が相手ディフェンス陣を豪快に切り裂いていく。若松はMF増子未知とMF砂森潤(ともに2年)のダブルボランチや最終ラインから飛び出してくるCB三山海(2年)らの献身的な動きもあり、チャンスの数を増やすと前半14分、五十嵐の右クロスのこぼれから山下将が右足シュート。27分にはCB小野拓弥(2年)の左足FKにMF高石祐也(2年)が決定的な形で飛び込むなど相手ゴールへ迫った。

 東海大浦安は中盤で相手の網にかかる回数が増え、守備の連係が乱れるシーンも。ミスを容赦なく指摘する厳しい声が何度も選手間から飛び交い、逆にムードが崩れたようにも映った。ただ、選手たちによると「いつものことです」とのことでこの厳しい指摘によって集中力は保たれ、ゴール前の局面でCB若槻芳之介(2年)らが味方のミスをカバーしあうなど、ピンチはあっても決して得点を許さない。そして試合後に鈴木監督が「走り負けるのは東海大浦安のサッカーじゃないよ」と選手たちに問いかけていたように、運動量が持ち味の東海大浦安は後半半ばごろからギアが上がり、セカンドボールの攻防戦など局面で優位に立つ。33分にはドリブルでディフェンスラインを突破した三浦昇がGKをかわすなどビッグチャンスをつくった。

 ただ0-0で突入した延長戦で先に決定機を迎えたのは若松。前半1分に左クロスのこぼれ球をゴール正面の高石が右足で叩くが、これは東海大浦安GK昼野真之介(2年)がファインセーブ。若松は直後の左CKでもGKのミスから決定的な場面を迎えたものの、連続シュートが身体を投げ出してゴールを守る相手の好守に阻まれてしまった。逆に東海大浦安は3分、カウンターから飛び出したFW栗栖魁人(1年)の右足シュートがGKの横を抜けてゴールへ転がるが、これはポスト直撃。互いに天を仰ぐ場面が続いたものの、東海大浦安は延長前半7分、ジョーカーとして試合の流れを変えていた三浦竜のラストパスから三浦昇が決勝点を奪った。

 東海大浦安の鈴木監督は「内容は良くなかったですけど、自分たちで何かやろうという姿勢が見えたのは良かった」。東海大の系列校がまとう黄色と黒の縦じまのユニフォームは100分間、最後まで走り抜いて勝利をもぎ取った。昨年12月30日には全国高校選手権開幕戦を戦った東海大五(福岡)の応援のために国立へ。三浦昇が「全国が身近に感じた」と語り、鈴木も「全国に出るチームに比べるとまだまだ」とそれぞれが刺激を受けて戻ってきた。実は東海大浦安は昨夏、東海大五や東海大翔洋(静岡)といった東海大傘下の14校によって争われた学園オリンピックで優勝。それだけに国立で戦う東海大五の姿を悔しい思いももって見ていた。

 チームにとって伝統の縦じまのユニフォームは公式戦でしか使用できない貴重なもの。指揮官はタイガージャージを着用してピッチに立つことについて「もっと誇りを持ってほしい」と期待している。この日の新人戦優勝はあくまで通過点で、決勝翌日の5日に渋谷幕張、翌週にも東京学館浦安と練習試合を行うなど関東大会、全国総体予選のトーナメント戦を見据えたチーム作り。個は昨年に比べて劣るというが、声と走りを切らさないタイガー軍団が今年、激戦区・千葉で旋風を巻き起こす。

[写真]延長前半7分、三浦昇太(左端)の決勝ゴールを喜ぶ東海大浦安イレブン
(取材・文 吉田太郎)

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