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1トップで奮闘の大津、それでも五輪本大会出場は不透明

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[3.14 五輪アジア最終予選 日本2-0バーレーン 国立]

 慣れないポジションでも自分を犠牲にし、チームをロンドンへ導いた。FW大津祐樹(ボルシアMG)は4-2-3-1の1トップで先発。「あんまりやったことはなかったけど、前線でつぶれ役になろうと。点は取れなかったけど、勝ててよかった」。本職のサイドではなく、最もプレッシャーの厳しい最前線でのプレー。「サイドの方が持ち味は出るけど、その中でも勝てたことが一番よかった」と胸を張った。

 前半2分には後方からのロングボールに競り合い、体を張って落とすと、MF東慶悟のミドルシュートを引き出した。同7分、右サイドを突破したDF酒井宏樹の折り返しは痛恨のトラップミスでシュートを打ちきれなかったが、同33分にはDF比嘉祐介の左クロスからヘディングシュートを狙う。前線で起点になりながら流動的に動いてチャンスメイクからフィニッシュにまで顔を出した。

 無得点で前半を折り返したが、「ボールを走らすことで向こうの選手も取りに来ざるを得ない。焦れないで日本のサッカーを続けようと思っていた。後半は予想どおりスペースが空いてきた。焦りはまったくなかった」と振り返る。後半10分にMF扇原貴宏のゴールで先制。後半14分には東が左サイドから折り返したボールに大津がニアサイドに走り込む。DF2人を引き付け、文字どおりつぶれ役になると、逆サイドまで流れたボールをMF清武弘嗣が蹴り込み、ロンドンへの切符をもぎ取った。

「ここでホッとしたというか、一段落できる。向こう(ドイツ)のサッカーに集中できるし、しっかり向こうでプレーしてアピールできるようにしたい」

 大津はロンドン五輪本大会での躍進を誓うが、欧州組が参加できるかどうかは不透明な状況だ。男子のサッカー競技は7月26日に開幕し、決勝は8月11日。欧州リーグの来季開幕直前にあたり、クラブ側が参加を認めるかどうかは分からない。

 大津に限らず、FW宇佐美貴史、FW宮市亮、FW指宿洋史、DF酒井高徳、さらに言えばMF香川真司もロンドン世代になるが、いずれも今後の交渉次第となる。最終予選でも、招集できた欧州組は大津に限られ、それも3試合のみの参戦。2月22日のマレーシア戦では一度は追加招集が発表されながら、直前のリーグ戦でチームに故障者が出たために急きょ不参加となる経緯もあった。

 原博実技術委員長は「これだけ海外に行くとは想像がつかなかった」と、五輪世代の相次ぐ海外移籍に驚きながらも「五輪は(選手招集に)拘束力がない。まだ来季の細かい日程は決まっていないが、6月にEUROがあって、クラブによっては(五輪の開催時期に)シーズンが始まってしまうところもあるかもしれない。もし夏に移籍すれば、新しいクラブにほとんど行けないという可能性もある」と、交渉の難航を示唆する。

 U-23日本代表は5月下旬からトゥーロン国際大会に参加する。同時期は欧州リーグはオフシーズンになるが、「トゥーロンだけ認められても、五輪の本大会がダメなら意味がない。トゥーロンの時期はW杯アジア最終予選ともかかわってくる。最優先はW杯予選。A代表に招集されれば、トゥーロンには参加しない」と原委員長。ロンドンへの切符は手にしたが、本番でどんなメンバーを組めるか分からないまま、チームを熟成させる時間も圧倒的に限られている。

(取材・文 西山紘平)

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