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個人、チームで躍動!大会初参加の「NIKE FC選抜チーム」が初陣で強豪追い詰める

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[3.24 2012春季交流戦波崎 NIKE FC2-3常盤大高]

 NIKE FC選抜チームが初の大会出場で強豪を追い詰める――。ユース世代のフットボールプレーヤーをサポートするナイキジャパンが「上手くなりたい」「プロになりたい」などと願う育成年代に向けて行っている特別強化プログラム、「NIKE FC」。24日からは1、2月に行われたセレクションを勝ち抜いて選出されたNIKE FC選抜メンバー24名が初参加となる大会「2012春季交流戦 波崎」に出場し、その初戦で昨年度の茨城県大会で2度の8強進出を果たしている強豪、常盤大高と戦った。前半に2点を先取されながらも後半1分、4分にMF松川哲朗(都・豊島高)が連続ゴールを決めて一時同点。後半24分の失点によって2-3で敗れたものの、最後まで勝負にこだわり、個人、チームとしても初試合とは思えない戦いぶりを示した。

 無名校・無名チームの選手でも力を磨き、次のステージへの可能性を広げるチャンスは、ある。NIKE FCは所属チームの練習に加えて、さらにサッカーに対して貪欲に取り組む中高生選手たちをサポート。海外での指導経験豊富なコーチングスタッフの下、月1回、Jクラブの練習場でパスやシュートといったトピックを集中的に練習する[FIELD PROGRAMME]や、コーチに1対1で直接アドバイスを受ける[PLAYER'S LOUNGE]などのプログラムを通してその成長を手助けしてきた。今回の試合はチームの中で個がどう機能していくかを磨いていくためのプログラムで、茨城県新人戦で2連覇したウィザス高、常盤大高、狭山ヶ丘高(埼玉)というレベルの高いチームたちと戦う総当りのリーグ戦を通して、大会でしか得ることのできない経験をつかもうとしている。

 この日午前に東京都のNIKE原宿からバスで茨城県の神栖市波崎へ移動した選手たちは到着後、雨の中で早速約2時間のトレーニング。英国3つのプロチームのトップコーチを務めた経歴を持つリー・マンソンヘッドコーチから「こういう大きいチャンスをつかんでいこう。シャイボーイにならず、このグループで誰がリーダーになるか見せてほしい」「一人ひとり、全員がゲームの流れを変えられる選手になってほしい」とアドバイスされた選手たちは、4対2+フリーマンのパス練習や8対8、GKを交えてビルドアップ練習、12対12などを行って試合への準備を進めていく。チームは24日午後の常盤大高戦と25日午前の狭山ヶ丘高戦へ向けて2チーム体制で戦力を均等に分割。そして、キャプテンに立候補したMF高田啓伍(神奈川大附高)中心に午後3時からのウォーミングアップを行った常盤大高戦メンバーが、記念すべき初の対外試合に挑戦した。

 4-3-3システムで試合に臨んだNIKE FCは前半、この日初めて組んだ守備陣が急造とは思えない堅い守りを披露する。くさびのパスを入れてくる常盤大高を、DF石田優輝(大東文化大一高)とDF相田雅仁(国立高)の両CBが絶妙なチャレンジ&カバーを見せて中に入り込ませない。また、ともに対人に強い右SB杉本有(国立高)と左SB木戸楓真(フットボール・トライアウト・アカデミー)がサイド攻撃を封鎖し、思うような攻撃をさせなかった。そしてボールを持てばドリブルで確実にDF1人を仕留めてパスを展開していた高田を中心に攻撃。ただ、前半22分にMF高橋郁海(拝島高)とMF橋本賢人(並木高)が揃って負傷交代すると、試合の流れは抜群のキープ力を持つMF岡田朋也、MF山本汐音、そしてポジショニング光るMF三村翼を起点に攻める常盤大高へ傾いた。31分にはスルーパスで中央突破した常盤大高FW平山拓哉が先制すると、35分にはPAでボールをつないで最後は岡田の右足コントロールショットがゴールネットを揺らした。

 0-2で前半終了。FW菊地謙(神奈川大附高)が「(ほとんどの選手の特長が分からず)周りのことを考えつつ、自分のやりたいことをやらないといけない難しさがありました」と話したように、特に攻撃面での連係不足が目立った。それでもNIKE FCをステップに将来を切り開こうとしている選手たちはあきらめない。「次の1点がキーになってくる」と後半開始から4-4-2へスイッチすると、前半22分から緊急出場していた松川とFW山口遼(白鴎高)が前線から果敢にプレスをかける。これが幸運を呼び、待望の1点が入った。後半18秒、ボールを持った相手GKとの距離を詰めた松川がそのキックをチャージ。右前方に転がったセカンドボールを右足でゴールへ流し込んで1点差とする。さらに4分、交代出場のMF増田侑也(国立高)の展開から杉本が右クロスを上げると、松川が決定的な右足ボレー。これはGKの正面を突いたがその直後、右サイド後方から杉本が出した縦パスで強引にDF間に入り込んだ松川が身体半分前に出ると、そのまま同点ゴールを押し込んだ。「0-2で負けている状況だった。自分が変わって勝ちたいなという気持ちがアシストにつながってよかった」という杉本の好パスと「決める自信はあった。FWで使ってもらえれば『結果を残す』という気持ちでやっていた」という松川の決定力によって試合を振り出しに戻した。

 互いが積極的に声を掛け合って自分の意思を伝えあうなど、前半に比べてそれぞれの良さを表現していたNIKE FC。右の福田翔太(森村学園高)と左の菊地の両ワイドがスピードと切り替えの速さを活かして決定機をつくり、再三危険な位置でボールを受ける松川が相手の脅威となった。チームは後半11分、前線にFW犬飼元氣(駒澤大学高)を加えてさらに活性化。ただ、勝ち越しのチャンスを活かせなかったNIKE FCに対して、チームとしての連係、精度で上回る常盤大高が決勝点を奪う。後半24分、相手GKにプレッシャーをかけて敵陣でインターセプトした常盤大高は中央から揺さぶり、最後はFW本郷潤が技ありの左足シュートをゴール左隅へ突き刺した。

 NIKE FCはこの後、ミスの名誉挽回に燃えるGK広保友樹(海城中)がビッグセーブを連発。31分には最後の交代カードとしてMF森将太郎(大東文化大一高)を投入するが、試合終了間際に左CKのこぼれ球からファーサイドの木戸がが放った渾身の一撃も相手GKとDFのスーパークリアによって阻まれ、得点することができず。リー・ヘッドコーチが「ネガティブなことよりもいい発見の方が多かった。最後の最後まで戦えたのは良かったと思う。(特に)良かったことは3、4人の選手が次のレベルでできるかなという確信を得たということです。もうひとつは0-2で負けている状態からの反応、モチベーションの上げ方も良かったと思います。そこから2-2に追いついて、実際に勝つために必要なチャンスを数多くつくれていたと思います。(きょう)プレーヤーのみんなに理解してもらったことは今、みんなは“滑走路”にいるということ。これからいろいろな人に気づいてもらうチャンスだと思う。プレーするときには自分が何を持っているのか見せてみよう。技術だけでなく、サッカーの知識やサッカーの情熱だとか彼らが見せてくれたことが、ああいう内容になったと思う」と讃える戦いぶりを見せたNIKE FCだったが、初陣を白星で飾ることはできなかった。

 所属チームがトップレベルにいなくても、自分の意識・武器とチームとしての連係が高まれば上のレベルのチームと渡り合うことができる。それぞれのこだわり次第では、さらなる成長を遂げることができそうだ。試合後、午後8時から常盤大高と合同で行った講義では選手たちに良いチームに必要な要素を考えさせ、社会性と同時にチーム内での競争が必要であることを説いたNIKE FC。リー・ヘッドコーチはプレミアリーグでブレイク中のFW宮市亮(ボルトン)の名前を出して「宮市は2年前はみんなと同じように高校生だった。今はプレミアのトップで毎日プロの選手と戦っている。『勝負』というものをチームに持って帰ってほしい。それだけで練習のレベルは上がっていく」とアドバイスを送った。今回の合宿はあと1日。キャプテンの高田は最終日へ向けて「チャンスメークとゲームメイクを自分がNIKE FCを支配するという気持ちでやりたいと思います」。この日出場しなかった選手中心の狭山ヶ丘高戦、そして現時点でのベストメンバーで臨む予定のウィザス高戦ではチームの勝利と同時にチームの中での競争を制することを目指して、2試合を戦う。

(取材・文 吉田太郎)
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