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リーグ戦初白星を喜ぶ興梠「ロッカーで泣いている選手もいた」

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[4.14 J1第6節 F東京1-2鹿島 味スタ]

 過去7度のリーグタイトルを獲得した鹿島アントラーズが、これほど苦しんだことはなかった。開幕から5試合を終えて1分け4敗。開幕から4試合無得点はJリーグワースト記録に並んだ。順位表でも、5節を終えてまさかの最下位に沈んでいた王者が、第6節にしてようやく今季初勝利を挙げた。試合を終えて、先制点を挙げたFW興梠慎三は「勝てて良かった。ロッカールームで泣いている選手もいたくらい。あらためて勝ち点3の大きさを感じた」と初勝利に安堵の表情を見せた。

 自分たちのやろうとすることが、ピタリとはまった。アイルトンコーチは、「これまでの試合でもチャンスはつくれていた。失点しなければ勝てる。自分たちのやることを一からしっかりとやろう」と守備を強調した。FW大迫勇也も「とにかく失点しないように、守備をしてから、そこから出て行こうと。僕と(興梠)慎三くんでボランチを消すように指示をされていました。我慢が続きましたが、そこからのカウンターという狙い通りになった」と胸を張る。実際に鹿島の2トップはF東京のボランチにボールが渡ると、しっかりと体を寄せて守備をし、パスコースを限定していった。

 ボールを回すF東京の最終ラインが高かったことも、鹿島に有利に働いた。多くの場面でパスの出し手となったMF遠藤康は「うちの2トップはスピードがありますから」と言えば、パスの受け手である大迫も「高いラインの裏を狙えていた」と話す。鹿島は遠藤を起点に、最終ラインの裏を狙い続けた。そこに興梠、大迫が走り込み、多くのチャンスをつくり出す。前半23分に興梠とGK権田修一が交錯し、権田が負傷した場面でも、先にボールに触れていたのは興梠だった。その直後にも興梠は遠藤のパスからGK塩田仁史と1対1のチャンスを迎えている。後半21分の先制点も遠藤のパスから抜け出した大迫の折り返しをゴール前に詰めた興梠が決めたものだ。

 初勝利を挙げた中でも、満足している選手が少ないのも、鹿島らしいところだ。ルーキーのDF山村和也が「守備から入った試合で1失点してしまった。流れの中からの失点ではないが、気を引き締めないといけない」と振り返る。興梠も「自分のプレーも内容は悪かった。ボールを何度も失ってキープできなかったし、もっと冷静にならないと」と課題を口にする。

 勝ち点3を獲得しながら課題を見つめ、修正し、次の試合につなげていく。苦しみながら、ようやく手にした初勝利を機に、鹿島は本来の姿を取り戻した。

(取材・文 河合 拓)

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