beacon

決勝点の鹿島・遠藤「この勝利は普通の1勝じゃない」

このエントリーをはてなブックマークに追加
[4.14 J1第6節 F東京1-2鹿島 味スタ]

 残り6分というところで、鹿島アントラーズは同点に追いつかれた。開幕から未勝利が続く中で、それでも最後のチャンスをあきらめなかった。ロスタイムも4分にさしかかったときだ。一度、F東京のDFチャン・ヒョンスにカットされたボールを、DF山村和也が突き返す。前方でボールを受けたのは、途中出場したFWジュニーニョだ。

 ジュニーニョがドリブルを仕掛けた瞬間、センターサークル内にいたMF遠藤康は、前線に一気に加速した。「ジュニはスピードがあるから、絶対にシュートまで持って行くと思っていました。ゴール前に居れば、何かが起こると思った」とその時の心境を振り返る。

 左サイドを突破し、DFをかわしたジュニーニョは、予想通りシュートに持ち込んだ。そしてGK塩田仁史が弾いたボールは、あきらめずにゴール前に詰めていた遠藤の前に転がった。確実にゴールにボールを蹴り込む。「ゴールした瞬間のことは、覚えていないんです。ただ、サポーターのところに行こうと思った」と、声援を送り続けた12番目の選手の下へ駆けて行った。

 決勝点だけではない。この試合、前半から動きは際立っていた。前線に人数をかけて攻めてくるF東京に対し、鹿島は守備を固めて速攻を狙っていた。その速攻の起点に、なり続けていた。「うちの2トップ(興梠と大迫)は、足が速いから。裏を通せば、あの2人は追いついてくれる」。その言葉どおり、前半23分を皮切りに、同31分、33分と2トップにロングボールを送り、チャンスを演出した。

 後半21分の先制点の起点となったのも、遠藤だった。DF太田宏介のパスをカットすると、前線へドリブルでボールを運び、CB森重真人を引き付ける。森重が前に出て生じたスペースに、FW大迫勇也が走り込んだのを見ると、スッとパスを差し出した。その大迫からの折り返しをゴール前でFW興梠慎三が決めた。

 F東京のMF石川直宏も「ボールキープができるし、ボールの持ち方が良いからパスもドリブルもできる。攻撃のリズムを変えていた。以前は(小笠原)満男さんがやっていたが、ボランチより高い位置でああいうプレーをされて、嫌な存在でした」と、脅威になっていたことを認めた。

「全員で守って、守ってからの攻めという、鹿島らしいゴールが挙げられたと思う。決勝点は僕が決めましたが、みんなのゴールだったと思います。この勝利は自信になる。普通の1勝じゃない。今後、苦しい時期が来ても乗り越えられるんじゃないかな」と遠藤は、自身の決勝点でつかんだ勝利を噛みしめた。

(取材・文 河合 拓)

TOP