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J1神戸・西野朗新監督、就任会見(全文掲載)

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 19日、J1のヴィッセル神戸は、西野朗新監督の就任を発表し、都内のホテルで就任記者会見を行った。ACL出場権の獲得を目指して今シーズンを迎えた神戸だが、12節を終えて、5勝7敗で11位と苦しんでいる。4月30日には和田昌裕監督を解任し、安達亮ヘッドコーチが指揮を執っていた。

以下、就任記者会見の全文

三木谷浩史・代表取締役会長
「ヴィッセル神戸の新監督に西野朗監督を迎えることになりました。私どもがヴィッセル神戸の経営を引き受けて9年目になりました。アジアチャンピオンズリーグ(ACL)の出場、優勝を目指していろいろなところを強化してまいりました。選手の強化、ユース、ジュニアユースの強化ということで、少しずつクラブを強化してまいりました。今年はACL出場を目指してやっております。当初、和田(昌裕)監督に1年やっていただこうということでシーズンを開始しましたが、残念ながらなかなか結果が出ないというなかで、西野監督と話をしまして、われわれのクラブのビジョンを評価していただき、引き受けていただけたと思います。クラブとしては西野監督を全面的にバックアップして、今季のリーグを戦うとともに、将来のステージにつなげていきたいと思っております」

西野朗・新監督
「みなさま、こんばんは。ご無沙汰しております。このたび、シーズンの途中ではありますけど、ヴィッセル神戸からオファーをいただきまして、自分自身も昨シーズンまで現場にいました。今年に入って、シーズンも3分の1が終わろうとしていますけど、そういう中で自分自身も現場への復帰の希望が強くて、そういう中で正式にオファーをいただけたのはヴィッセル神戸だけでした。いろいろな話をさせてもらっているなかで、神戸の将来的なビジョン、自分のやりがい、チャレンジしていく環境をしっかり持たせてもらえるなという感じを強く持ちました。そういう部分と自分の強い気持ちが合致した中で、オファーを受けさせていただきました。

 実際には、今日もJリーグがありましたし、来週から指揮を執ることになりますが、こういう形でチームを引き受けることは、おそらく非常に難しいと思います。自分自身、チームを、選手を、一変させるような魔法を持っているわけではありません。サッカー自体もそう簡単に変化させられるわけではないと思いますし、不安や難しさも当然あると思いますが、何とかヴィッセル神戸というクラブ、チームをグレードを上げて、魅力のあるクラブにしていきたいなという強い気持ちを今、持っています。スタッフ、選手とともに、どういう形のサッカーができるか楽しみです。自分自身が経験した指導力をしっかり発揮して、とにかく魅力のある、みなさまに愛されるチーム、クラブにしていきたいなと今、思っています。

 今日は敗戦して、テレビもJリーグの試合も最近はヴィッセルの試合しか見ていません。そういう中で、選手は非常にアグレッシブにやっていますし、たくさん良いところはあります。なかなか結果には結びついていませんが、間違ったサッカーはしていない。あまり時間のない中で、Jリーグも早々に迫っていますし、今やれているチームの良い所、選手それぞれのポジティブな部分を引き出して、次の鹿島戦(5/26)に向けて、良い準備をして持って行きたいなと思います。また神戸でお世話になりますが、よろしくお願いいたします」

以下、西野監督の質疑応答
―クラブに共感されたこととは?
「いろいろな環境面などですね。現状のクラブ力、チーム力ではなく、若年層の下部組織の充実や、将来的にACL、あるいはCWCというような、アジアやインターナショナルなスタンダード(目標)を持ちながら、チームを成長させている。そういう段階だと思いますし、そういう中で、これから自分がチームの監督として、トップチームを強化していくことが最善だと思います。環境がしっかり整いつつあるなと感じますし、そういうクラブビジョンに、非常にやりがいを感じています」

―神戸の強みと弱点は?
「テレビ映像でしか見ていませんし、全体をフォーカスして見ていませんので、局面的な見方だけなので、実際にスタジアムに行って見ているわけではないので、正直、ストロングポイントやウィークポイントがどこにあるか、正確には分析できません。ただ、アグレッシブさやいろいろな局面でのハードワークを全員でしていく、そのベースとなるようなものは、どの映像からも見られます。

 やはり伝統的なクラブのイメージとすれば、堅守速攻型というのがクラブのスタイルにあるのかと思います。その中にそういう戦い方にマッチしたスピーディーな選手が補強されて、そういうスタイルを構築しているんだなとは思います。そういう強さはあると思いますが、一方でアタッキングサードでのクオリティや、自陣でのDFゾーンでのウィークポイントがDFにあるというところも感じます。そこは紙一重のところで失っているところがありますし、紙一重のところで(得点を)ゲットできないところも感じます。勝負のところでは、全員が(勝利に)執着して取り組んでいるスピリットは強く感じています」

―どのような形でボトムアップをはかる?
「これは現場に行って、実際に選手とスタッフとピッチに立って指揮をしない限り、正確には把握できないと思います。今、試合に出ているレギュラーメンバーやキャリアや背番号で、選手を判断したくはないですし、フラットな見方をして、選手を明日から見てみたいなと思います。自分自身は、初めてJで指揮をするわけではないですし、14年間やってきた経験。それが生きる部分と、全くそれをフラットにして自分自身も神戸を見ないといけないところはあるでしょう。

 理想のスタイルや理想のサッカーを求めることと、現実をしっかり見て行く中でチームをつくっていく部分が必要だと思います。ただ、守るだけのサッカーは自分の本意ではないです。やはり攻撃的なスタイルは、自分の志向の中にはありますし、ここ10年やったクラブの中では、そのポゼッションサッカーやパスサッカーをベースにチームづくりをしてきましたし、それが神戸に適応するかは別だと思います。選手たちのプレースタイルも違うわけですから、選手たちのプレースタイルを尊重していく中で、また新しいスタイル、戦い方を含めて(構築していく)。そういうチャレンジをしていきたいなと思います」

―浦和のオファーを受けずに今回は受けた。心境の変化は?
「心境ですか? 自由がこんなに苦しいとは思わなかったですね。プレッシャーがない自分の体が、毎日のフィット感がない。芝生の上にいる自分が、一番フィットしているのかなと感じました。確かに昨年、あのタイミングで新しいオファーをいただきましたが、それはタイミング的に、(G大阪の監督を)退任するかしないかという段階で受けたオファーでした。それは決断する(時間的)猶予もありませんでしたし、受け入れられる状況ではない自分がいました。

 ただ、シーズンが終わっても、やはり自分がグラウンドにいないと落ち着かないというか、やはり現場人だなと。昨年の暮れくらいから(現場へ)復帰の希望は持っていましたし、いろいろな形でそういう気持ちを発信してきました。それによって、いろいろとリサーチされた部分はありました。国内だけでなく、海外からもそういうものを受けましたが、正式に強い要請を受けたのはヴィッセル神戸から一つだけだったので。そういう中でも自分の気持ちを考えていただいて、非常に光栄なお話を頂けたので。心境の変化はすぐ、昨シーズンが終わってから、現場への気持ちはあったので、ガラッと心境が変わったわけではありませんね」

―アジアナンバーワンをどう考えるのか?
「08年にガンバ大阪でアジアを獲りました。私が就任してから、かなりのシーズンを費やした中で、そういうアジアチャンピオンに到達することができました。これは並大抵な目標ではないと思います。おそらくJリーグの、どのチームも掲げている目標だと思いますし、その挑戦をクラブを挙げて、取りかかっていると思います。ヴィッセルも、その途中にあると思います。今、イメージを、ピクチャーを自分自身も取りたいところですが、はっきり描けるところにはなっていません。ヴィッセルも目標に対する途中だと思いますし、それをクラブが着実にクラブ力を上げて取り組んでいることは実感できますし、僕もその中で経験した者として、その力になっていきたいなと。もう一度アジアの頂点に立ちたいなと。それを実現できるクラブだと思うので、自分自身も着実にやっていきたいと思います。日本人の監督で、誰よりもそういう(ACLの舞台で)経験をさせてもらってきたので、それをすべてヴィッセル神戸にぶつけていきたいなと思います」

―半年、Jを離れて感じたことは?
「キャンプから各チームがどういう準備をして、どういうシーズンの入り方をしたのかというところは、もちろん把握できています。その準備によって、3分の1が終わって、良いスタートを切ったチームもありますし、「えっ?」と思うような状況にあるチームもいますし、様々なんだなと思いましたし、見ているのはつまらないなというような感じだけですね。

 今年も拮抗している18チームだなというのは序盤から思っていました。各国のトップリーグの順位は大体、A、B、Cランクで、それぞれの目標設定が、ボトムのチームが優勝を狙うことは先進国ではありえない。でも、J1は18チーム、どのチームにも優勝の可能性がありますし、すべてのチームが優勝を目標にしていると言ってもおかしくないリーグだと思います。これは怖いと思います。1ポイント(勝ち点1)で順位自体もガラッと変わるところもありますし。今年は特にそういう状況にあるなという気がしています。やっぱり突出したチームというか、なかなか安定してやれているチームはいない。そういう中では、同時にチャンスだなと思います。いろいろなやり方がありますが、やり方によっては、高い目標設定を立てても達成できることになるのではないかな、という気がしています。サッカー自体は、また新しい監督さんがやられていて、また違うスタイルや戦い方で面白いなと思います。自分の戦力を十分に発揮されているゲームが多いな、と思います」

―具体的な目標は?
「現場に行ってから、しっかり戦力や自分のスタッフたちとの関係や、いろいろなものを構築していく中で、正確に高い目標設定を立てたいなと思います」

―ACL出場権獲得の自信は?
「それも今の質問にありましたように、現場に行って感じて、その上で正確に(目標を)立てたいと思います。現実的に考えないといけないところがたくさんありますし、(チーム状況を)把握してから、目標は立てていきたいなと思います」

―安達亮ヘッドコーチの処遇は?
「コーチングスタッフについても、タイミングはズレて入りますが、長年一緒にやってきたブローロ(フィジカルコーチ)を招へいして、現状のコーチングスタッフに2人(西野監督とブローロコーチ)が入ります。役割分担については、それぞれの配分をまだ把握していないので、これも現場に行ってから判断します」

―現時点でクラブにお願いしたいことは?
「ある程度の環境ですとか、遠征に関しては、現状、高いレベルで整っていると思うので、これも現場に行ってからだと思います。やりながら、というか。早い段階で足りないもの、補給したいものは素直に伝えたいと思います。補強の必要があれば、そういう形でタイミングを見て伝えたいと思います。本当に、すべて選手に会ってから、スタッフに会ってからというところの判断。それを正確にしないといけないと思っていますし、必要であれば積極的に、遠慮なく(三木谷会長に)要求していきたいなと思います」

(取材・文 河合 拓)

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