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ハットトリックのF東京・渡邉「今日は持っていた」

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[5.20 J1第12節 F東京3-2鳥栖 味スタ]

 抜群の『嗅覚』を見せつけた。後半9分にピッチに送り出されたFC東京のFW渡邉千真は、後半の途中に出場すると、ハットトリックを達成。今季、1試合で3失点を喫したことのなかったサガン鳥栖から、わずか13分の間に3ゴールを挙げ、チームを3-2の逆転勝利に導いた。

 胸の中に微かな悔しさが、あった。第12節の札幌戦(1-0)では途中出場しながらも、試合終了間際にランコ・ポポヴィッチ監督から交代を言い渡されていた。その後、16日のACL蔚山現代戦(0-1)の前日に指揮官から「プレーは悪くなかったが、フレッシュな選手を入れたかった」と交代の意図を説明され、納得できたというが、「やっぱり悔しかった」と振り返る。それだけに、この試合に賭ける思いは強かった。

「0-2にされても『絶対にこのままでは終わらない』とみんなで言っていた。サポーターの前とか、自分たちのホームで情けない試合はできない。あきらめなかった」と言う渡邉は、後半30分にMF石川直宏の折り返しを右足のボレーで鮮やかに決めて、1点目を返す。試合直後のヒーローインタビューでは「頭が真っ白になっていた」と話したが、ミックスゾーンでは、「思い出しました」と言い、整然と得点場面を振り返った。

「相手の裏に斜めに走って、直さん(石川)が良いボールをくれた。そこでトラップしてから打たずに、流れの中で打ったことがうまくいったと思う」。

 この1点でチームの反撃ムードは高まった。そして、後半36分にはFWルーカスがPA内で逆サイドに浮き球を蹴ると、そのボールをDF徳永悠平が折り返す。その先に、渡邉がいた。同点ゴールから、さらに7分後、石川のFKがゴール前のDFとMF長谷川アーリアジャスールに当たった先にも、渡邉がいた。

 ゴール前で抜群の嗅覚を見せたストライカーは、「2点目はどこに当たったか分からないんですよね。肩か、お腹か、太腿か…」と明かす。この場面、徳永からの折り返しに咄嗟に反応して太腿でゴールを決めている。さらに3点目に至っては、自身がゴールしたかも分かっていなかったという。「正直に? ゴールを決めたのは分からなかった(笑)。でも、持っていたでしょ、今日は。2点目も変なところに当たったけど。でも、そこにいることが大事だから」と、時折、鼻をさすりながら、「ラッキーだった、本当に。痛くないですよ。入ればいいでしょ。痛みとかいいでしょ」と笑った。

 高い得点力を示しているが、チームで絶対的なポジションを勝ち取れた自覚はない。それもそのはず、ACLではスタメン出場を続けているが、リーグ戦では途中出場が多いのだ。「連戦でも関係なく、試合に出たいと思っています。体力的にも問題はありません。ただ、メンバーは監督が決めることで競争があるので、しっかりと勝ちたい。今日は結果を残せましたが、また来週も試合があるので、アピールを続けていかないといけない」と、スタメン出場へのこだわりを口にし、さらなる活躍を誓った。

(取材・文 河合 拓)

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