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[MOM397]神奈川大MF河村英侑(3年)_チーム救う先制ヘッド!!未来につながる成功体験

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[8.20 神奈川県選手権・天皇杯 神奈川県代表決定戦・決勝 横浜猛蹴1-3神奈川大 ニッパツ]

 冷静なヘディングシュートがゴールネットを揺らした。押し込まれる苦しい時間が続く中、神奈川大は数少ないチャンスをものにして先制に成功。終わってみれば3-1と2点差での勝利だったが、前半の1点がなければ、どちらに転んでもおかしくない試合だった。チームを救ったのはMF河村英侑(3年=川崎F U-18)の得点だ。

 河村の決めた先制点。何気ない1点に見えるが、今季の神奈川大が追求している形、そのものだった。長谷川大監督は主導権を握りながらも、得点につなげなかった昨季の反省から「今年はより深い位置をえぐったところから、一番シリアスなゾーンにどう入っていくかを突き詰めたいとやってきた」と明かす。

 この日の先制点は前半37分、FW吉田蓮(2年=新庄東高)のパスからDF南祥巧(4年=横浜FCユース)が右サイドへ深く抜ける。マイナスのクロスにニアサイドへ飛び込んだのは河村。「間接視野でゴールが見えていたので、そのままコースに流し込むという感じ。意外と冷静でした」というヘディングシュートはネットを揺らした。

 自身にとって「久しぶり」という頭で決めた先制弾。殊勲のMFは「苦しい時間帯だったので、あそこで決められたのはかなり大きかったかな。なかなか頭で(点を)取ることはないので、久々に決めたという感じで嬉しかったです」と微笑んだ。

 “深い位置をえぐり、一番シリアスなゾーンにどう入っていくか”。まさに今季のテーマを体現して、奪ったゴール。指揮官は「クロスのスピードや入るタイミングが準決勝、決勝といい形でゴールに結びついたので、そういう場面をこれからも増やしたいなと思う」と手応えを口にする。

 決勝点を挙げた河村は、昨季まではSBを務めていたが、今季からは一列前のSHでプレー。指揮官の「ひとつのポジションしかできないというスペシャリティーよりも、2つ、3つできるユーティリティーななかで、スペシャルなのにユーティリティーもあるというのはすごく求めるところ。コンバートというよりも、どちらも高いレベルでできるようにならないと、上にいったときに厳しい」という意図の下、新たな挑戦の日々を送っている。この日の決勝も、左SHの位置で幾度も仕掛けていく姿が印象的だった。

 長谷川監督は「河村英はずっとSBだったけれど、ポジションをひとつ前に上げたときに、より攻撃的な彼の良さが活きるし、彼がアクシデントであってSBに下がったとしても、それは彼の居場所なので問題ない。さらに彼は左も右もやらせているので、3つも4つもポジションができるということ。チームのなかにそういう選手がたくさんいれば、柔軟性が生まれますよね」とその狙いを明かした。

 自身の売りは“攻撃力”と理解している3年生MFは「自分の強みは突破力や点を取れるところだと思うので、そういうところをアピールしていきたい」と貪欲に口にする。一列前へ出たことにより、「前に行く回数が増えていいです」とSHでのプレーを楽しんでいるようだ。

 「ああいう形で点数を取るのは、すごく嬉しかったと思う」と河村の活躍に目を細めた指揮官は「新しいポジションをやる選手が、新しいポジションに対する意欲を持つためには、成功体験を与えるしかないと思う。そういう意味では彼があの感触を持って、次に進めるというのはすごく大きい経験をしたんじゃないかなと思う」と思いやった。

 大舞台で大きな成功体験を手にしたMF。次は神奈川県代表として天皇杯1回戦へ挑む。相手はJ2のFC町田ゼルビア。「格上で強いJのクラブなので、自分たちとしてはやれるかな……というところもあると思うんですけど。今はチームの雰囲気もいいですし、チームとしてコンディション良くいければ、自分たちのサッカーができれば、いい試合ができると思います」と意気込んだ。

 天皇杯本選出場のかかった大一番で、劣勢のチームを救ったMF。さらなる大舞台で“成功体験”を手にすれば、一回りも二回りも選手として成長できるはず。高みを目指し、河村の挑戦は続く。

(取材・文 片岡涼)

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