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延長死闘の天皇杯準決勝、サドンデスPK戦を制したのは片野坂大分!! クラブ史上初のファイナルへ

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[12.12 天皇杯準決勝 川崎F 1-1(PK4-5) 大分 等々力]

 天皇杯は12日、準決勝を行い、前回王者の川崎フロンターレ大分トリニータと対戦した。試合は0-0のまま延長戦にもつれ込むと、後半8分に途中出場のFW小林悠が劇的な先制ゴールを挙げて川崎Fが先制するも、大分も後半アディショナルタイムにパワープレーから同点ゴール。PK戦もサドンデスに突入したが、7人目で大分が勝利し、史上初の決勝進出を果たした。

 川崎FはAC長野パルセイロ(長野/J3)、ジェフユナイテッド千葉(J2)、清水エスパルス(J1)、鹿島アントラーズ(J1)を倒しての4強入り。対する大分はホンダロックSC(宮崎/JFL)、福井ユナイテッドFC(福井/北信越)、ザスパクサツ群馬(J2)、ジュビロ磐田(J2)と下部カテゴリ勢を破り、クラブ史上初のベスト4進出を果たした。

 圧倒的な強さでJ1リーグ2連覇を成し遂げた川崎Fと、来季のJ2降格が決まった大分という対照的な構図。それでも序盤の主導権を握ったのは大分だった。今季初めてとなる4-3-1-2のシステムを採用し、川崎Fのビルドアップに対して前からのプレッシングを敢行。中央を締めながら布陣を上げることで、高い位置でのボール奪取が何度も見られた。

 しかし、川崎Fも各選手が立ち位置を変えながら大分の陣形に対応し、サイドチェンジを有効活用しながら局面を打開。前半15分過ぎからは一方的に試合を支配し始めた。最初の決定機は同18分、FWレアンドロ・ダミアンの右足シュートはGK高木駿の正面。同19分にはL・ダミアンが自陣からロングシュートを狙ったが、大きく枠を外れた。

 前半26分には中央での崩しからMF脇坂泰斗、同27分にはMF大島僚太のミドルシュートが大分ゴールを襲うも、いずれも高木がファインセーブ。38分、44分と左からのクロスボールにL・ダミアンが飛び込んだが、ゴールを割るには至らない。アディショナルタイム2分のFW旗手怜央のシュートも高木のスーパーセーブに阻まれ、スコアレスでハーフタイムを迎えた。

 後半も川崎Fの一方的な優位は変わらず、セットプレーやクロスによる攻勢を大分のDFエンリケ・トレヴィザン、DFペレイラが耐え抜く展開。大分はトップ下起用で古巣対戦のMF下田北斗を起点にカウンターを試みるが、川崎Fの強度高い守備陣を破れず、シュート0のまま時間が過ぎていく。

 川崎Fは後半20分、最初の交代カードを切って大島に代わりFWマルシーニョを投入。旗手をインサイドハーフに下げた。大分は同23分、左サイドで獲得したFKを下田がゴール前に送り込み、これが右サイドに流れると、MF町田也真人のクロスから混戦を創出。空中戦で競り勝ったFW伊佐耕平が倒れ込みながら右足で狙い、ようやくファーストシュートを記録した。

 飲水タイム明けの後半27分、大分は伊佐とMF小林成豪に代わってMF松本怜とMF井上健太を投入。インサイドハーフ起用のFW渡邉新太が前線に移り、松本は中盤起用となった。なおも攻める川崎Fは同28分、マルシーニョがカットインシュート。同30分にはL・ダミアンが豪快なバイシクルシュートを放ったが、いずれも高木にセーブされた。

 後半32分には大分にビッグチャンス。前線からプレッシングをかけた井上がGKチョン・ソンリョンの縦パスを奪い、バックパスから下田が左足を振り抜いた。しかし、無人のゴールを捉えることができず、千載一遇の決定機を逃した。川崎Fは同35分、右サイドから華麗に崩し、F・ダミアン、家長とつないでマルシーニョがフリーで反応したが、高木の決死のブロックに阻まれた。

 川崎Fは後半37分、L・ダミアンと旗手に代わってFW小林悠とFW知念慶を投入。その後もサイドを広く使って一方的に攻め込むが、大分の守備陣もなかなか集中力が途切れない。大分は同44分、井上の裏抜けからDF谷口彰悟のクリアを誘い、右コーナーキックを獲得。だが、下田のキックに合わせたエンリケのヘッドは枠を外れた。そのまま前後半が終了。勝負の行方は延長戦に委ねられた。

 延長前半6分、大分は右サイドでのスローインを素早く始め、渡邉が強烈なボレーシュートを左足で狙うも、絶妙なコースを突いたボールはチョン・ソンリョンがファインセーブ。同7分、下田のCKにペレイラが頭で合わせたが、チョン・ソンリョンの正面に飛んだ。川崎Fは直後、カウンターから知念が抜け出すが、クロスは小林に合わず、なおもスコアレスの状況が続く。

 川崎Fは延長前半10分、DF山根視来の縦パスに小林が抜け出し、なんとか残したボールを脇坂につなぐも、左足シュートは高木がスーパーセーブ。直後のCKではMF家長昭博のヘッドが枠内に飛んだが、これも高木に押さえられた。大分はここでペレイラが負傷。DF坂圭祐がピッチに送り込まれた。

 川崎Fは延長前半15分、この試合最大のビッグチャンス。右サイドからカットインした家長のパスを小林がフリーで受け、シュートモーションに入った。だが、飛び出した高木を避けたシュートはゴールマウスの右へ。交代した守備陣の乱れを突かれた大分にとっては命拾いとなった。同アディショナルタイムには知念が左足で狙ったが、これもわずかに右に外れた。

 大分は延長後半開始時、渡邉に代わってFW長沢駿を投入。最後の勝負に出た。対する川崎Fも同5分、家長、脇坂、MF橘田健人を一気に下げてMF遠野大弥、MF小塚和季、MF塚川孝輝を入れ、交代枠を使い切った。直後、川崎Fはマルシーニョを中心に波状攻撃を浴びせるも、大分のゴール前には高木が立ちはだかる。

 それでも延長後半8分、川崎Fがついにこじ開けた。アタッキングサードでのパス回しからペナルティエリア右を小塚が攻め上がると、ゴール前にグラウンダーのクロスを供給。これに飛び込んだ小林が右足で流し込んだ。

 ところが、ドラマはここで終わらなかった。失点直後にDF羽田健人を入れてパワープレー攻勢に出た大分は延長終了間際、右サイドに開いた下田がゴール前にクロスボールを送り込むと、ニアに入りながら反応したエンリケがフリーでヘディングシュート。これがゴール右隅に突き刺さり、試合は再び同点となった。

 勝負の行方はPK戦へ。川崎Fは遠野、大分は井上が負傷したため、PK戦も10人でのまさに死闘となった。先攻は大分。1人目の下田がポストに当てながらゴールに沈めると、川崎Fの知念も成功。大分は2人目の長沢が左ポストに当てて失敗した。だが、川崎F山村のキックは高木がセーブ。ここでも再び同点となった。

 3人目は大分の松本、川崎Fの小塚ともに成功。4人目は大分のエンリケが成功したが、川崎Fは塚川がポストに当て、大分が王手をかけた。ところが5人目、大分の小林のキックはチョン・ソンリョンがセーブ。川崎Fも小林が落ち着いて決め、サドンデスに持ち込まれた。勝負が決まったのは7人目。大分は町田が成功すると、最後は山根のキックを高木がセーブ。守護神の大活躍で、片野坂知宏監督ラストイヤーの大分が史上初の決勝切符を掴んだ。

(取材・文 竹内達也)
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