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「監督に話に行こうか悩んだ」…今季限りで浦和去る宇賀神、「12年間で初」というサポーターから届けられた“プレゼント”

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浦和レッズDF宇賀神友弥

[12.12 天皇杯準決勝 浦和 2-0 C大阪 埼玉]

 ピッチ上での役割は終わったのかもしれない。そう考える日もあったと振り返り、ピッチに立つかどうか悩んだという。しかし、浦和レッズDF宇賀神友弥は埼玉スタジアムのピッチに立った。「ピッチに立つことが、浦和レッズの人間としてやれる最大のパフォーマンスだと思って」――。

 浦和の下部組織で育ち、流通経済大を経て10年に浦和に加入した。プロ入り後は浦和一筋。数々のタイトル獲得に貢献し、今季は在籍12年目を迎えていたが、11月18日に今季限りでの契約満了が発表される。J1リーグ最終節となった名古屋戦では後半あたまから投入され、45分間を戦い抜いた。ここで一つの思いがあったという。

「正直なところ、名古屋戦で自分のピッチの上での役割は終わったんじゃないかと」

 しかし、天皇杯準決勝・C大阪戦に向けて練習を重ねる中で、「自分がスタメンで出ることがあるんじゃないか」との思いも生まれ、「気持ちを切り替えるのが難しい時間が何日かあった」。名古屋戦終了後に「終わったんじゃないか」と気持ちが切れかけただけでなく、天皇杯の舞台は「浦和に残る選手にとって非常に貴重な経験」だとも考え、「(リカルド・ロドリゲス)監督に『僕じゃないのでは』と話をしにいこうと悩んだ日もあった」ようだ。だが、ファン・サポーターの存在が背中を後押しした。

「やっぱり、最後に頭に浮かんでくるのは、浦和レッズの人間として、支えてくれたサポーターに自分を見てもらう、自分を覚えていてもらうチャンスがあるなら、『役割は終わり』と思った気持ちを奮い立たせ、埼スタのピッチに立つことが、プロサッカー選手としてやれる最大のパフォーマンスだと思った」

 そして、「悪い言い方になってしまうが、契約満了という決断をした人たちを、このピッチで見返してやるんだぞ」という強い気持ちを持ち、浦和の選手として最後となる埼スタでの一戦で輝きを放つ。前半29分、右サイドからMF関根貴大が送ったクロスがファーサイドまで流れると、MF明本考浩がバックパス。そこに走り込んだのが宇賀神だった。「打った瞬間、足にボールが当たった瞬間に入った軌道が見えていた」。右足で合わせた弾道の低いボールはネットに突き刺さり、貴重な先制点が生まれた。得点直後には「酒井(宏樹)選手から『ウガさん、会場をあおって、雰囲気を作って下さい』と言われた」こともあり、スタンドをあおり、ファン・サポーターを熱狂の渦に巻き込んだ。

 後半16分にベンチに下がる際には大きな拍手が鳴り響く。「まだまだ自分も見せられるぞという感覚もあったので、正直悔しい気持ちもあった。こんなに拍手されながら僕がピッチを去るなんて、12年間で初めてなんじゃないかなと思いながら去りました」。苦笑しつつも、ファン・サポーターから届けられた“プレゼント”に喜びを表した。

 2-0の勝利を収めたチームは3大会ぶりの決勝へとたどり着いた。試合後、バックスタンドを見て感じたのは「改めてピッチに立って良かった」ということ。悩んだ日もあったが、ピッチに立って勝利に貢献し、ファン・サポーターと喜びを分かち合う。最高の瞬間だ。だからこそ、改めて芽生えた感情がある。「この人たち(ファン・サポーター)と一緒に最後タイトルを取り、最高の形で若い選手にバトンタッチしたい」。浦和最後の舞台となる天皇杯で頂点に立ち、これまで支えてくれた人たちとともに笑顔になる。天皇杯決勝まで一週間。浦和の選手として最後の最後まで走り抜く。

(取材・文 折戸岳彦)
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