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賞金総額1500万円はクラブへ…モバイル「eJリーグ」が創るサポーターとクラブの新たな関係

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FC東京を代表して戦った3選手

 2日間にかけて行われたeスポーツ大会『eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン』は清水エスパルスの優勝で幕を閉じた。オンライン予選の応募総数は20万人以上。スマートフォンで行うモバイルゲーム『ウイニングイレブン 2019』(以下、ウイイレ)だからこそ敷居は低く、多くのユーザーが気軽に腕試しをすることができた。

 大会のコンセプトは「初心者から上級者まで幅広く参加できる」。幅広い世代に参加してもらうためにカテゴリーを「15歳以下(U15)」、「18歳以下(U18)」、「全年齢(フル)」の年齢別に分け、J1、J2の全40クラブの代表3選手を6月に選出。7月14、15日の本大会では3選手1チームで同カテゴリー同士が対戦を行い、2勝したクラブが次に駒を進めた。

 賞金総額は1500万円と高額だ。さらにこの賞金は試合に挑んだプレーヤーに与えられず、クラブ側の資金になる。清水の優勝賞金500万円を始め、準優勝のFC東京には200万円、3位の東京ヴェルディと川崎フロンターレには100万円、ベスト8に勝ち残った4チームには50万円、ベスト16の8チームには20万円、予選敗退の24チームにも10万円が振り分けられた。

 それぞれのクラブはすでに使用用途を発表しており、たとえば清水は「アカデミー活動の充実」、FC東京は「多くの人が新しくファン・サポーターになってもらえるような大型イベント開催」に動くという。

 幅広く参加できるが、報酬はあくまでクラブのため。プレーヤーはどういう心境で戦い抜いたのか。実際に準優勝で200万円を獲得したFC東京の3選手、田崎雅幸(フル)、源怜維(U-18)、佐渡航(U-15)に話を聞いた。

FC東京の田崎雅幸(フル/左)、佐渡航(U-15/中央)、源怜維(U-18)

 大会はFC東京が大きく盛り上げた。準決勝では前夜のJリーグと同カードになる川崎Fとの“多摩川クラシコ”。前夜は0-3と完敗となったが、この試合では佐渡(U-15)が第3戦で延長戦を制し、2-1で雪辱を果たした。清水との決勝はまたしても接戦に。第1戦は田崎(フル)が勝利を収めたが、佐渡(U-15)、源(U-18)と打ち合いの末に敗れ、準優勝に終わった。

 大会後、3人の表情は明るかった。初めて会ったのは6月2日の代表選考会後。しかし、たった1か月半でも絆は深く、田崎は「負けた悔しさっていうのはなくて。この2人とチームメートとして一緒に戦えたっていうのが楽しかった」と語る。源も「3人で協力して、より仲も深まったと思いますし、準優勝だった悔しさはもちろんあるんですけど、それ以上に楽しかったなっていう気持ちが大きいです」と笑顔。佐渡は「短い間だったけどすごく長く感じたし、終わっちゃってバラバラになるのが寂しい」とチームの終わりを憂いた。

大会を盛り上げたFC東京

 田崎は今大会について「こういう募集型の大会はめちゃくちゃ良いと思います」と冷静に分析する。

「今日のYouTubeの配信とか見てもらったら、携帯で手軽にできるこのゲームをやろうと思う人が出てくると思いますし、FC東京を代表してやったのでJリーグのチームにも愛着が湧くと思うんですよね。本当にJリーグにしてもコナミにしても良い大会だったと思いますし、僕らも楽しかった」

 3選手ともに大会経験はないという。源は「オンラインもなくて本当にこれが初めてです」と明かし、従来の大会とモバイル「eJリーグ」との違いを説いた。

「プロゲーマーの大会は自分たちとは離れた世界のように感じるじゃないですか。でもこの大会って自分たちも出られるかもしれないって思えるんで、やっぱりハードルが低いというか、見ていて楽しめるじゃないですか。しかも何が起こるかわからないし、愛するクラブを応援できるっていうのがすごく良い企画だなと思いました」

 佐渡はPlayStation4ではなくスマートフォンの大会だったから出場を決意した。「プロでよくやっているのはPS4の大会が多くて、モバイル版ならやってみようかなと感じで出て。ほかの人の試合を観ていると自分もやりたくなってきて、ウイイレがもっと楽しくなりました」。

 生粋のFC東京ファンだという3人。クラブへの賞金も「今すぐにはわからないけど、ちょっとでもクラブに貢献できるっていうのは本当にサポーターの一人としては嬉しいことだなって思います」と理解を示す。欲しい気持ちはなかったか尋ねると、「みんなありますよ(笑)。ちょっとは思っていますけど…でもそれ以上に楽しめたので良かったんです」と素直に胸中を明かした。

準優勝のFC東京は200万円を獲得

 大会後の囲み取材で、村井満チェアマンは大会の意義をこう語っている。

「(清水の)賞金500万円っていうのは極めて大きな賞金。エスパルスがその獲得資金で育成してデビューする人が出てくれば、eJリーグのプレーヤーがダイレクトにクラブに貢献するということになります。今度はクラブ側がeJリーグのプレーヤーをサポートしたり、支援したり。その相互の関係性が築ければいいなと思います」

 サポーターがクラブとともに戦うだけでなく、クラブのために戦う。モバイル「eJリーグ」はクラブとの新たなつながり方になるかもしれない。

(取材・文 石川祐介)

●eJリーグウイニングイレブン(ウイイレ)2019シーズン特集ページ

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